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第9話 騎士選定

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 聖堂の扉を開くと数人の聖女達が既にいる。

 私達も祭壇に近くの席にすわる。
 シスターカスリーンの取り巻きの3人がやってきて空いてる席に座る。

 私は選ばれる筈もないから緊張などはせずにリラックスをして周囲を伺う。ここに居るのは十数人程度ぐらい、中庭に見に来ていた人は数十人はいたと思う。

 まあ中庭でのあの二人のやり取りを見たら、それもしょうがない。今回はみんなノーチャンスだと思ってるんだろう。

 でもメアリーさんの余裕の表情も気になる。なにか自信でもあるのかしら……

 それから少し遅れてシスターカスリーンがやってきて一礼をして周囲を伺うと、余裕の表情で私達の前にやって来る。
「シスターメアリー隣、よろしくて?」

 私が選ばれるのを側で見てなさいと言わんばかりの表情のシスターカスリーン。

 メアリーさんは余裕の表情で「どうぞ」と言う。
「ありがとう」
 わざとらしく嫌味な感じでシスターカスリーンは礼を言ってメアリーさんの隣に座る。

 それから5分程して院長と一緒に金髪のロングヘアーをなびかせた、騎士アンドリューが聖堂に現れる。そして院長と一緒に祭壇の前に立つ。

 その端正に整った顔と吸い込まれそうな青い瞳に胸がドキンとする感じを覚えて、目を逸らす。

 ……なんで緊張しちゃってるの私……男を見て緊張しちゃ駄目でしょ……

 院長が手に持ったハンドベルをカランコロンと鳴らすと修道院の鐘がゴーン、ゴーンと鳴り響くそして院長が大きな声で話し始める。

「それではこれより騎士選定を始める。聖女達は起立」

 院長の合図で私達は起立をする。院長は続ける。

「サーアンドリューそなたに随伴する聖女をこの中から選んでくだされ」
「わかりました」
 イケボが聖堂の中に響く。

 シスターカスリーンは相変わらず、自信に溢れたというような顔をしている。

 カチャリカチャリと甲冑の音が聖堂内に響く。騎士アンドリューは聖堂の端に立つ聖女の前に立って数秒聖女を眺めては次の聖女へと移動を始める。

 騎士は聖女の徳を見ることができる……メアリーさんから聞いたのだけど、形式的に心に決めた聖女がいてもこの選定では全員の徳を見る事になっている。それがこの場に来た聖女達に対する礼儀ということらしい。

 しかしそれによって心変わりをする騎士もいるという……

 1人づつゆっくりと眺めていく騎士アンドリュー、そして私達の前に来る。まずは私……その吸い込まれそうな青い瞳で見つめられると……なにかとんでもないものに目覚めそうなので瞬間的に目を逸らす……

 しかし、他の聖女達は数秒は眺めていたのに、私だけは一瞬見ただけで通り過ぎる。

 まだ始めて3時間だし……徳なんて殆ど溜まってないし……選ばれるはずもないと、頭では分かっていてもなんか悔しい。

 次はメアリーさんだ。

 メアリーさんの前に立ち止まると、ジッとメアリーさんのことを眺めている。メアリーさんの小柄な体型なので、見上げるような形となって二人見つめ合う。

 10数秒は見つめ合っただろうか? するとちょっと赤面をしたアンドリューが視線を逸らす。

 もしかしてメアリーさんに脈があったりするのかしら?

 シスターカスリーンの前に立つアンドリュー、するとシスターカスリーンは上目遣いでその瞳を潤ませながら女の武器を最大限にしようしながらポツリと話しかける。
「アンドリュー様お慕い申してます……」

 アンドリューは頷きもせず、次の聖女の元に向かう。そうしてこの場にいる聖女全員の徳をみたアンドリューは院長のもとに戻ると院長が口を開く。

「随伴する聖女が決まったようです。それではサーアンドリュー、随伴する聖女の元にいって跪きなさい」

「はい……」
 アンドリューはそう言うと私達の方をチラリ
 カチャリカチャリと甲冑を鳴らして一直線に私達3人のところにやってくるアンドリュー。それを見たシスターカスリーンはちらっとメアリーさんの方を見る。


 そしてアンドリューは跪いて口を開く。


「メアリー殿、私と一緒に国を救って下さい」


 唖然とし狼狽するシスターカスリーン。
「何故ですの!! 私を選んでくださるとおっしゃったではないですか! アンドリュー様!! 徳は私とメアリーの差はないはずです!」

 アンドリューはシスターカスリーンを一瞥もせずに話す。

「もちろん徳ではない二人の徳に差は殆どない」
「ならなんですの!!」

 アンドリューは言いにくそうにモジモジとしながら話す。

「……外見だ……私はちっちゃいのが好きなのだ……その身長に、ぺったんこな胸……メアリー殿はまさに私の理想の聖女……ずっとずっと憧れて見ていた……話しかけることすらおこがましいほどに……」

 ま、まさかのロリ好き……そんなことで決まるとは……

 シスターカスリーンは膝から崩れ落ちる。
「そ、そんな……」
「私に親しくしてくれたことはありがたい……が……やはり救国は理想の聖女と行いたい……これが私の思い……」

「それじゃ……私は私はただのピエロじゃない!!」
 シスターカスリーンはそう言って泣きながら、走り去っていく。そして「カスリーン様!!」と取り巻きの連中が追いかけていった。

 対照的にメアリーさんは勝ち誇ったような顔をしている。

 院長が「それでは選定を終了する」と言ってハンドベルを鳴らすと、ゴーン、ゴーンと修道院の鐘が鳴った。
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