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二章
4:トロール・上級ダンジョン動画配信3
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四月二十八日、朔斗らはダンジョンに入ってから四日目を迎えていた。
敵として出てきても、まともに相手とならないモンスターに、啓介はなんとなく憐憫の情を抱く。
彼は汗をかかずに戦闘をしている朔斗を見ながら思う。
(今回の生配信は二日目以降は口コミでなのか、チャンネル登録者が結構増えたな。うーん、<EAS>には可能な限り僕の配信に出演してほしいけど、どうなるか……僕だけじゃなく、新島さんからも猛プッシュしてもらうしかない)
今までも期待の新人や、ある程度有名になっていたパーティーをゲストに迎え、生配信を行っていた啓介だったが、今回の生配信によってそのどれもを上回る勢いで増加していくチャンネル登録者。
今後の予定は未定とはいえ、朔斗らと縁を切りたくないと啓介は考えていた。
(特別企画として、以前数回だけ特級ダンジョンに行ったことはあるけど、それは固定パーティーではなく、さまざまなパーティーから実力が高い探索者をピックアップし、そしてスポット参戦してもらっていたに過ぎない。複数パーティーのスケジュールを合わせるのは大変だから、それだとどうしても予定を組みにくくて、継続性がないんだよなぁ。それに比べると<EAS>はひとつのパーティーで完結しているのがいい)
内心今後のことを含めて考えていた啓介だったが、売れっ子Dチューバーとしての腕は確かであり、見栄えの良いカメラワークを心掛けながら、朔斗の戦闘を映像に収めていた。
「いつものことやけど、ウチはほぼほぼついていくばっかりになってて、申し訳なくなっちゃうなぁ」
気を緩めずもそう言うサリアに対して、横で彼女の言葉を聞いていた恵梨香が口を開く。
「それを言うなら私のほうが……サリアさんは今まで結構ダンジョンの経験があるし、スキルだって持ってるでしょ?」
「まあなぁ」
「サリアさんに比べて、私はまだまだ駆け出しの探索者でしかないよ。あとは戦闘中に使えるスキルもないし……」
「スキルは別として……わかってると思うけど、普通のパーティーだとこんなにサクサクいかんし、もっと疲れるから。あはは」
乾いた笑いを上げるサリア。
恵梨香も中学校で探索者について習っている。
特に戦闘学では、学校の先生が推奨するダンジョン内の様子を映した動画を多く見てきていた。
もちろん学生に見せるといった点を考慮し、死人が出るような動画ではないが、それでもモンスターを相手に苦戦を強いられている様子も収められていたし、それを視聴させることで、覚悟もなく安易に探索者の道を選択しようとする学生をふるいにかけていたのだ。
しかし、そんな覚悟も最初から朔斗と一緒にダンジョンへと来ている恵梨香には、現状無駄になってしまっている。
それに自分の役立たず具合が今回は生配信されてしまっていることが辛い。
仕方ないことだと納得していたとはいえ、若干憂鬱気味な恵梨香。
当然サリアもその気持ちがある。
一緒に行動していても、彼らの思考は三者三様。
危なげない戦闘を繰り返し、地図を用いて最短距離を歩んできた朔斗らは、夕方にボス部屋の前へとたどり着く。
最下層の端に目立つようにして存在している重厚感溢れる扉は両開き。
足を止めた朔斗が言う。
「今回は早かったな。少しだけ休憩したら行こう」
恵梨香とサリアの顔を見て朔斗がそう言い、それに対して彼女らが答える。
「うん」
「おっけーや」
もう少しで外に出られるとあって気が緩みそうになるが、そうならないように大きく息を吐いてから、朔斗は自身の頬を軽く叩く。
気合を入れ直した彼が夕食について言及する。
「今日の夕食はダンジョンを出たあと、どこかに食べにいくか」
「うん! 私は焼肉が食べたいなぁ」
「賛成や!」
「打ち上げってことで僕も行っていいかい?」
恵梨香、サリアが順番に返事をし、最後に啓介も同行したい旨を伝えてきた。
爽やかな笑顔で朔斗が言う。
「もちろん。あとボスは問題なく倒せると思うが、一応気をつけてほしい」
「中に入ったらすぐに右方面にでもずれるから、後ろは気にしないで戦って」
「わかった」
十分程度の休息後、サリアにスキルを使用してもらってから朔斗を先頭にし、<EAS>の三人と啓介がボス部屋に入室していく。
啓介は当然ながら、転移石をすぐに使えるように用意するのも忘れない。
入ってすぐに全員が息を吞む。
かすれたような声で呟く啓介。
「ド、ドラゴンだ……」
「アイスドラゴン……ドラゴン系は特級以上のダンジョンのはずよ」
まさかの相手に呆然とした恵梨香が脳内から情報を絞り出した。
自身のテリトリーへとやって来た侵入者へ対し、射抜くような視線をぶつけてくるアイスドラゴン。
ずんぐりとした体形は力強さを想像でき、研ぎ澄まされた牙をカチカチと鳴らす様は、人間を食料としてしか見ていないことを連想させる。
色鮮やかな蒼色の鱗、手足には立派な爪。
アイスドラゴンの大きな翼が徐々に広がっていき、さらに口を大きく開けた。
「グルルルアアアアア!!」
雄叫びを上げたあと、飛翔を始めるアイスドラゴン。
自身を遥かに上回る強者と対峙した恵梨香、サリア、啓介の動きが止まる。
彼らは一瞬心臓さえ停止したかのような感覚に襲われていた。
宙に佇んだアイスドラゴンを見上げた朔斗が速攻で動く。
(まずは翼!)
そうして彼が【解体EX】を使用すると、アイスドラゴンの翼がぼんやりと光り、即座に胴体から切り離された。
それと同時にアイスドラゴンは絶叫を上げつつ落下していく。
何が起きたのか理解できないアイスドラゴンは混乱しかない。
(次は両手足!)
朔斗は再び【解体EX】を使ってアイスドラゴンへと攻撃を仕掛ける。
今回彼が使ったのは、一発で命を奪う方法ではなく、徐々に解体していくやり方だ。
地面に激突した龍の巨体が、ボス部屋内に大音量を轟かせる。
落下でくらったダメージは少ないとはいえ、もがれた四肢と翼のつけ根からは赤い血が勢い良く噴出されていた。
(次はすべての皮と鱗を剥がし、最後が首)
合計四回【解体EX】を使用されたことで力尽きるアイスドラゴン。
モンスターを倒したと確信した朔斗が急ぎ死体へと向かう。
そこへ到着後、【ディメンションボックス】の中から大きなタライをいくつか出し、流れ出ているアイスドラゴンの血を回収するべく設置していった。
ドラゴンのように全身が素材かつ強さもあるモンスターの場合、いち早く戦闘能力を奪いつつ、沢山の素材を回収できるようにしなければならない。
朔斗は一発の【解体EX】でアイスドラゴンを倒すことは可能だが、そうすると素材が多く取れるドラゴンから限られた物しか取れないかもしれないし、スキルを使用する際に念入りにイメージをしていると、敵から思いもよらない攻撃を受ける可能性も捨てきれないのだ。
そういったことを防ぐための方法として編み出したのが、段階的に【解体EX】を使う方法。
これを思いついたのは恵梨香であり、これまでも試してきていた。
もちろん敵によって注意しなければならない点はある。
モンスターがトロールなど再生能力を持っている場合、上半身と下半身を分断したくらいではすぐに死なないので、そういった特性を踏まえて注意を払う必要があった。
目の前で起きた圧勝劇に心沸き立つ啓介が、ボス部屋に入ってからのコメントを確認する。
名無しの視聴者:きたああああ
名無しの視聴者:出ちゃったあああああ
名無しの視聴者:おいおい
名無しの視聴者:ドラゴンじゃんw
名無しの視聴者:まじで
名無しの視聴者:レアボスううう
名無しの視聴者:ここで引き当てるとか神
名無しの視聴者:レアボスなの?
名無しの視聴者:知らない
名無しの視聴者:ドラゴンは上級ダンジョンじゃ出ないって言われてるよ
名無しの視聴者:ドラゴン系は特級ダンジョンからだよね
名無しの視聴者:アイスドラゴン怖い
名無しの視聴者:この敵も今までみたいにやられちゃうの?
名無しの視聴者:サポート系ジョブ四人がアイスドラゴンに挑む件
名無しの視聴者:それ実質ひとりじゃんwww
名無しの視聴者:そうとも言うw
名無しの視聴者:アイスドラゴンかっこいいいいい
名無しの視聴者:特級からドラゴンが出るっていっても、<<ランダム>>を選択しなきゃ出現しないよおおおお
名無しの視聴者:そうなんだ?
名無しの視聴者:私もそれ聞いたことある
名無しの視聴者:それで合ってる。ドラゴン系の敵を選択できるのは、超級ダンジョンからだね
名無しの視聴者:特級でランダムダンジョンに行った場合、低確率でボスがドラゴンになるってのが正解
名無しの視聴者:今回の上級ダンジョンは<<ランダム>>じゃないけど?
名無しの視聴者:レアボスはまた別だなー。特級のランダムダンジョン以外でもアイスドラゴン以上のドラゴンがレアボスとして出現するし
名無しの視聴者:まじか
名無しの視聴者:いえす
名無しの視聴者:ほうほう
名無しの視聴者:ところでボス魔石を考慮せず、ドラゴン素材って売ったらいくら?
名無しの視聴者:アイスドラゴンだとどれくらいかな
名無しの視聴者:死体の破損率にもよる
名無しの視聴者:めちゃくちゃ綺麗に討伐したら一億円は固いと思う
名無しの視聴者:そんなもん?
名無しの視聴者:まあドラゴンにもランクあるから
名無しの視聴者:たしかに
名無しの視聴者:素材の傷み具合で全然違うよね
名無しの視聴者:酷いときは二〇〇〇万円切ることもあるって聞くww
名無しの視聴者:うわ、咆哮やば
名無しの視聴者:耳いてええええ
名無しの視聴者:ぐううう
名無しの視聴者:うるせえええ
名無しの視聴者:痛い
名無しの視聴者:ヘッドホンしてた……
名無しの視聴者:耳が破壊された件
名無しの視聴者:鼓膜やばいっす
名無しの視聴者:これ動画だからまだいいけど、現場だと辛いんだろうな
名無しの視聴者:恵梨香さん、サリアさんが呆けてるw
名無しの視聴者:ケースケはどうなんだろ
名無しの視聴者:カメラマンだから映ってないし、わからないw
名無しの視聴者:ケースケの時も止まっていると予想
名無しの視聴者:同じく
名無しの視聴者:あれは止まっても仕方ない
名無しの視聴者:私は心臓止めれる自信があるよ
名無しの視聴者:俺も
名無しの視聴者:私だって
名無しの視聴者:私も
名無しの視聴者:なぜ張り合うw
名無しの視聴者:意味不明
名無しの視聴者:翼が消えたwww
名無しの視聴者:アイスドラゴン落下w
名無しの視聴者:まじか
名無しの視聴者:うわ
名無しの視聴者:飛べないドラゴンはただのトカゲ
名無しの視聴者:いや、ブレスあるw
名無しの視聴者:翼だけをまずは解体か
名無しの視聴者:もうまな板の鯉じゃんw
名無しの視聴者:次は四肢が……
名無しの視聴者:宙で解体されていくううう
名無しの視聴者:落ちて凄い音した
名無しの視聴者:アイスドラゴン可哀相……
名無しの視聴者:これは酷い
名無しの視聴者:てか、強すぎでしょ
名無しの視聴者:朔斗きゅん好き
名無しの視聴者:半端ない
名無しの視聴者:言葉が出ないね
名無しの視聴者:愛してます
名無しの視聴者:結婚してください
名無しの視聴者:あ、次は首と鱗とかが逝っちゃった
名無しの視聴者:南無
名無しの視聴者:アイスドラゴンさん、いいところなし
名無しの視聴者:ドラゴンの解体ショー
名無しの視聴者:本当に凄い
名無しの視聴者:衝撃的過ぎる
名無しの視聴者:朔斗きゅんに会いたい
名無しの視聴者:私も
名無しの視聴者:東京第三支部に行くしかないね
名無しの視聴者:次の出演いつだろう
名無しの視聴者:うーん、それは言及されていないから不明
名無しの視聴者:わからない
名無しの視聴者:早く次の見たい
名無しの視聴者:<EAS>がDチューバーとして、チャンネル立ち上げればいいのにいいい
名無しの視聴者:激しく同意
名無しの視聴者:ね
名無しの視聴者:そうなったら速攻登録する
名無しの視聴者:私も
名無しの視聴者:朔斗きゅんチャンネル開設してほしいいい
名無しの視聴者:サクトチャンネル
名無しの視聴者:うーん、今パーティーが三人だから可能性はあるかも?
名無しの視聴者:どうだろう、するならケースケチャンネルじゃなく、最初から自分のチャンネルを作ってたんじゃ?
名無しの視聴者:いや、ケースケチャンネルは登録者多いし、宣伝になるから一発目はここだったとか
名無しの視聴者:あー、その可能性もありそう
名無しの視聴者:上級ダンジョン攻略おめでとうー
名無しの視聴者:祝・レアボス撃破
名無しの視聴者:おめでとう
名無しの視聴者:おめー
名無しの視聴者:おめでと!
報酬箱を早く開けたかった朔斗らは、コメント欄を流し読みしている啓介に視線を集中させていたのだった。
敵として出てきても、まともに相手とならないモンスターに、啓介はなんとなく憐憫の情を抱く。
彼は汗をかかずに戦闘をしている朔斗を見ながら思う。
(今回の生配信は二日目以降は口コミでなのか、チャンネル登録者が結構増えたな。うーん、<EAS>には可能な限り僕の配信に出演してほしいけど、どうなるか……僕だけじゃなく、新島さんからも猛プッシュしてもらうしかない)
今までも期待の新人や、ある程度有名になっていたパーティーをゲストに迎え、生配信を行っていた啓介だったが、今回の生配信によってそのどれもを上回る勢いで増加していくチャンネル登録者。
今後の予定は未定とはいえ、朔斗らと縁を切りたくないと啓介は考えていた。
(特別企画として、以前数回だけ特級ダンジョンに行ったことはあるけど、それは固定パーティーではなく、さまざまなパーティーから実力が高い探索者をピックアップし、そしてスポット参戦してもらっていたに過ぎない。複数パーティーのスケジュールを合わせるのは大変だから、それだとどうしても予定を組みにくくて、継続性がないんだよなぁ。それに比べると<EAS>はひとつのパーティーで完結しているのがいい)
内心今後のことを含めて考えていた啓介だったが、売れっ子Dチューバーとしての腕は確かであり、見栄えの良いカメラワークを心掛けながら、朔斗の戦闘を映像に収めていた。
「いつものことやけど、ウチはほぼほぼついていくばっかりになってて、申し訳なくなっちゃうなぁ」
気を緩めずもそう言うサリアに対して、横で彼女の言葉を聞いていた恵梨香が口を開く。
「それを言うなら私のほうが……サリアさんは今まで結構ダンジョンの経験があるし、スキルだって持ってるでしょ?」
「まあなぁ」
「サリアさんに比べて、私はまだまだ駆け出しの探索者でしかないよ。あとは戦闘中に使えるスキルもないし……」
「スキルは別として……わかってると思うけど、普通のパーティーだとこんなにサクサクいかんし、もっと疲れるから。あはは」
乾いた笑いを上げるサリア。
恵梨香も中学校で探索者について習っている。
特に戦闘学では、学校の先生が推奨するダンジョン内の様子を映した動画を多く見てきていた。
もちろん学生に見せるといった点を考慮し、死人が出るような動画ではないが、それでもモンスターを相手に苦戦を強いられている様子も収められていたし、それを視聴させることで、覚悟もなく安易に探索者の道を選択しようとする学生をふるいにかけていたのだ。
しかし、そんな覚悟も最初から朔斗と一緒にダンジョンへと来ている恵梨香には、現状無駄になってしまっている。
それに自分の役立たず具合が今回は生配信されてしまっていることが辛い。
仕方ないことだと納得していたとはいえ、若干憂鬱気味な恵梨香。
当然サリアもその気持ちがある。
一緒に行動していても、彼らの思考は三者三様。
危なげない戦闘を繰り返し、地図を用いて最短距離を歩んできた朔斗らは、夕方にボス部屋の前へとたどり着く。
最下層の端に目立つようにして存在している重厚感溢れる扉は両開き。
足を止めた朔斗が言う。
「今回は早かったな。少しだけ休憩したら行こう」
恵梨香とサリアの顔を見て朔斗がそう言い、それに対して彼女らが答える。
「うん」
「おっけーや」
もう少しで外に出られるとあって気が緩みそうになるが、そうならないように大きく息を吐いてから、朔斗は自身の頬を軽く叩く。
気合を入れ直した彼が夕食について言及する。
「今日の夕食はダンジョンを出たあと、どこかに食べにいくか」
「うん! 私は焼肉が食べたいなぁ」
「賛成や!」
「打ち上げってことで僕も行っていいかい?」
恵梨香、サリアが順番に返事をし、最後に啓介も同行したい旨を伝えてきた。
爽やかな笑顔で朔斗が言う。
「もちろん。あとボスは問題なく倒せると思うが、一応気をつけてほしい」
「中に入ったらすぐに右方面にでもずれるから、後ろは気にしないで戦って」
「わかった」
十分程度の休息後、サリアにスキルを使用してもらってから朔斗を先頭にし、<EAS>の三人と啓介がボス部屋に入室していく。
啓介は当然ながら、転移石をすぐに使えるように用意するのも忘れない。
入ってすぐに全員が息を吞む。
かすれたような声で呟く啓介。
「ド、ドラゴンだ……」
「アイスドラゴン……ドラゴン系は特級以上のダンジョンのはずよ」
まさかの相手に呆然とした恵梨香が脳内から情報を絞り出した。
自身のテリトリーへとやって来た侵入者へ対し、射抜くような視線をぶつけてくるアイスドラゴン。
ずんぐりとした体形は力強さを想像でき、研ぎ澄まされた牙をカチカチと鳴らす様は、人間を食料としてしか見ていないことを連想させる。
色鮮やかな蒼色の鱗、手足には立派な爪。
アイスドラゴンの大きな翼が徐々に広がっていき、さらに口を大きく開けた。
「グルルルアアアアア!!」
雄叫びを上げたあと、飛翔を始めるアイスドラゴン。
自身を遥かに上回る強者と対峙した恵梨香、サリア、啓介の動きが止まる。
彼らは一瞬心臓さえ停止したかのような感覚に襲われていた。
宙に佇んだアイスドラゴンを見上げた朔斗が速攻で動く。
(まずは翼!)
そうして彼が【解体EX】を使用すると、アイスドラゴンの翼がぼんやりと光り、即座に胴体から切り離された。
それと同時にアイスドラゴンは絶叫を上げつつ落下していく。
何が起きたのか理解できないアイスドラゴンは混乱しかない。
(次は両手足!)
朔斗は再び【解体EX】を使ってアイスドラゴンへと攻撃を仕掛ける。
今回彼が使ったのは、一発で命を奪う方法ではなく、徐々に解体していくやり方だ。
地面に激突した龍の巨体が、ボス部屋内に大音量を轟かせる。
落下でくらったダメージは少ないとはいえ、もがれた四肢と翼のつけ根からは赤い血が勢い良く噴出されていた。
(次はすべての皮と鱗を剥がし、最後が首)
合計四回【解体EX】を使用されたことで力尽きるアイスドラゴン。
モンスターを倒したと確信した朔斗が急ぎ死体へと向かう。
そこへ到着後、【ディメンションボックス】の中から大きなタライをいくつか出し、流れ出ているアイスドラゴンの血を回収するべく設置していった。
ドラゴンのように全身が素材かつ強さもあるモンスターの場合、いち早く戦闘能力を奪いつつ、沢山の素材を回収できるようにしなければならない。
朔斗は一発の【解体EX】でアイスドラゴンを倒すことは可能だが、そうすると素材が多く取れるドラゴンから限られた物しか取れないかもしれないし、スキルを使用する際に念入りにイメージをしていると、敵から思いもよらない攻撃を受ける可能性も捨てきれないのだ。
そういったことを防ぐための方法として編み出したのが、段階的に【解体EX】を使う方法。
これを思いついたのは恵梨香であり、これまでも試してきていた。
もちろん敵によって注意しなければならない点はある。
モンスターがトロールなど再生能力を持っている場合、上半身と下半身を分断したくらいではすぐに死なないので、そういった特性を踏まえて注意を払う必要があった。
目の前で起きた圧勝劇に心沸き立つ啓介が、ボス部屋に入ってからのコメントを確認する。
名無しの視聴者:きたああああ
名無しの視聴者:出ちゃったあああああ
名無しの視聴者:おいおい
名無しの視聴者:ドラゴンじゃんw
名無しの視聴者:まじで
名無しの視聴者:レアボスううう
名無しの視聴者:ここで引き当てるとか神
名無しの視聴者:レアボスなの?
名無しの視聴者:知らない
名無しの視聴者:ドラゴンは上級ダンジョンじゃ出ないって言われてるよ
名無しの視聴者:ドラゴン系は特級ダンジョンからだよね
名無しの視聴者:アイスドラゴン怖い
名無しの視聴者:この敵も今までみたいにやられちゃうの?
名無しの視聴者:サポート系ジョブ四人がアイスドラゴンに挑む件
名無しの視聴者:それ実質ひとりじゃんwww
名無しの視聴者:そうとも言うw
名無しの視聴者:アイスドラゴンかっこいいいいい
名無しの視聴者:特級からドラゴンが出るっていっても、<<ランダム>>を選択しなきゃ出現しないよおおおお
名無しの視聴者:そうなんだ?
名無しの視聴者:私もそれ聞いたことある
名無しの視聴者:それで合ってる。ドラゴン系の敵を選択できるのは、超級ダンジョンからだね
名無しの視聴者:特級でランダムダンジョンに行った場合、低確率でボスがドラゴンになるってのが正解
名無しの視聴者:今回の上級ダンジョンは<<ランダム>>じゃないけど?
名無しの視聴者:レアボスはまた別だなー。特級のランダムダンジョン以外でもアイスドラゴン以上のドラゴンがレアボスとして出現するし
名無しの視聴者:まじか
名無しの視聴者:いえす
名無しの視聴者:ほうほう
名無しの視聴者:ところでボス魔石を考慮せず、ドラゴン素材って売ったらいくら?
名無しの視聴者:アイスドラゴンだとどれくらいかな
名無しの視聴者:死体の破損率にもよる
名無しの視聴者:めちゃくちゃ綺麗に討伐したら一億円は固いと思う
名無しの視聴者:そんなもん?
名無しの視聴者:まあドラゴンにもランクあるから
名無しの視聴者:たしかに
名無しの視聴者:素材の傷み具合で全然違うよね
名無しの視聴者:酷いときは二〇〇〇万円切ることもあるって聞くww
名無しの視聴者:うわ、咆哮やば
名無しの視聴者:耳いてええええ
名無しの視聴者:ぐううう
名無しの視聴者:うるせえええ
名無しの視聴者:痛い
名無しの視聴者:ヘッドホンしてた……
名無しの視聴者:耳が破壊された件
名無しの視聴者:鼓膜やばいっす
名無しの視聴者:これ動画だからまだいいけど、現場だと辛いんだろうな
名無しの視聴者:恵梨香さん、サリアさんが呆けてるw
名無しの視聴者:ケースケはどうなんだろ
名無しの視聴者:カメラマンだから映ってないし、わからないw
名無しの視聴者:ケースケの時も止まっていると予想
名無しの視聴者:同じく
名無しの視聴者:あれは止まっても仕方ない
名無しの視聴者:私は心臓止めれる自信があるよ
名無しの視聴者:俺も
名無しの視聴者:私だって
名無しの視聴者:私も
名無しの視聴者:なぜ張り合うw
名無しの視聴者:意味不明
名無しの視聴者:翼が消えたwww
名無しの視聴者:アイスドラゴン落下w
名無しの視聴者:まじか
名無しの視聴者:うわ
名無しの視聴者:飛べないドラゴンはただのトカゲ
名無しの視聴者:いや、ブレスあるw
名無しの視聴者:翼だけをまずは解体か
名無しの視聴者:もうまな板の鯉じゃんw
名無しの視聴者:次は四肢が……
名無しの視聴者:宙で解体されていくううう
名無しの視聴者:落ちて凄い音した
名無しの視聴者:アイスドラゴン可哀相……
名無しの視聴者:これは酷い
名無しの視聴者:てか、強すぎでしょ
名無しの視聴者:朔斗きゅん好き
名無しの視聴者:半端ない
名無しの視聴者:言葉が出ないね
名無しの視聴者:愛してます
名無しの視聴者:結婚してください
名無しの視聴者:あ、次は首と鱗とかが逝っちゃった
名無しの視聴者:南無
名無しの視聴者:アイスドラゴンさん、いいところなし
名無しの視聴者:ドラゴンの解体ショー
名無しの視聴者:本当に凄い
名無しの視聴者:衝撃的過ぎる
名無しの視聴者:朔斗きゅんに会いたい
名無しの視聴者:私も
名無しの視聴者:東京第三支部に行くしかないね
名無しの視聴者:次の出演いつだろう
名無しの視聴者:うーん、それは言及されていないから不明
名無しの視聴者:わからない
名無しの視聴者:早く次の見たい
名無しの視聴者:<EAS>がDチューバーとして、チャンネル立ち上げればいいのにいいい
名無しの視聴者:激しく同意
名無しの視聴者:ね
名無しの視聴者:そうなったら速攻登録する
名無しの視聴者:私も
名無しの視聴者:朔斗きゅんチャンネル開設してほしいいい
名無しの視聴者:サクトチャンネル
名無しの視聴者:うーん、今パーティーが三人だから可能性はあるかも?
名無しの視聴者:どうだろう、するならケースケチャンネルじゃなく、最初から自分のチャンネルを作ってたんじゃ?
名無しの視聴者:いや、ケースケチャンネルは登録者多いし、宣伝になるから一発目はここだったとか
名無しの視聴者:あー、その可能性もありそう
名無しの視聴者:上級ダンジョン攻略おめでとうー
名無しの視聴者:祝・レアボス撃破
名無しの視聴者:おめでとう
名無しの視聴者:おめー
名無しの視聴者:おめでと!
報酬箱を早く開けたかった朔斗らは、コメント欄を流し読みしている啓介に視線を集中させていたのだった。
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