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うまいもんとうまいもんまぜときゃ多分うまい
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「目覚めなさい……」
(……何だ?)
耳朶を打つ柔らかな女性の声に、一人の男の意識がおぼろげながら覚醒する。
「さあ、目覚めなさい……予期せぬ死を迎えた哀れなる魂、カミシロ=イサム……」
(――っ!)
さらに己の名を呼ばれて眠っていた男、神代勇の意識が朧気ながら覚醒する。
(……俺は、気を失っていたのか……?それに予期せぬ死って……)
勇は意識を失う前のことを思い出そうとする。
「不幸な貴方に、異世界へ転生し新たなる生を謳歌する機会を与えましょう……さあ、目覚めなさい……」
(!?……もしやこれは……異世界転生ッ!?まさか俺にその機会が!?これはチートで無双でウハウハで、俺にもウキウキワクワクハーレムが!?うおおおおおおお!!)
しかし、声が語る内容に衝撃を受けた勇は思い出し作業を中断されてしまう。勇は目を見開き、そして勢いよく跳び起きる。
「はいはいはいはいはいっ!目覚めました起きました立ち上がりましたーっ!これ異世界転生ですよね!俺めちゃくちゃチートなスキルもらって異世界救い……」
だが、跳び起きた勢いのまままくし立てられていた勇の言葉が突如として止まる。
「…………」
その理由は上がったテンションに身を任せて話していた勇が、視界に映るものを認識し、理解をし始めたことにある。まず、最初に勇が認識したのはまるで宇宙のような得体のしれない空間に自身がいること、そしてその空間の中で、自身が巨人に見下ろされているということであった。自身を見下ろしている巨人の顔は、2つ目があり、1つ口があるというところまでは人間と同じであった。しかし、顔面を構成するその目と口は人間とはかけはなれた構造をしていた。目は顔面から隆起し、発光している。また、口も可動するようには見えず、発話や食事のための機能があるようには思えない、形だけのものに見受けられた。だが、これらの要素が並んだ顔面は、まるで仏像のようにどこか神々しさを感じさせるものとなっており、外宇宙から飛来してきた某正義のヒーローを彷彿とさせる。
そんな勇の脳内認識が奇声となって口から思わず飛び出した。
「ツブラヤッ!?」
「うわっ、びっくりした!」
そんな勇の奇声に反応する声があった。声は先ほど目覚めるように呼び掛けてきた声と同じものと思われたが、今の声にはその時あった神々しさが感じられない。とりあえず、反応の声に驚いた勇は、その発生源と思われる位置に視線を向ける。そこには神秘的な白い着衣を纏った、いかにも女神……といった風情の女性が佇んでいた。勇の視線に気づいた女性は、勇に微笑みかけると手をひらひらと振る。
「目覚められましたか、カミシロ=イサムさん?色々まくし立てながら跳び起きたと思ったら急にフリーズして、そこから変な奇声を上げるものだから驚いてしまいました」
「あはは……その、すみません」
自身の醜態について美女に丁寧に解説をされてしまい、勇は乾いた笑いを漏らす。
「ところであの……えーと、あなたは?」
目の前の女性がどういった存在かはなんとなく見当はついているが、確認の意味も込めて勇は問いかける。問いかけられた女性は上品なしぐさで口元に手をあてて「まぁ」と漏らすと、頭を下げる。
「ご挨拶がまだでしたね、ごめんなさい。私はルティシア……数多の世界を管理する、貴方たちの世界で言うところの異世界の女神です」
(……やっぱり!)
自身の予想が的中し、勇は思わず拳を握る。
「じゃあ、やっぱり俺に異世界転生の機会を……?しかももしかして……なんかすごい能力付きで?」
「はい、そういうことです。理解が早くて助かります」
ルティシアは微笑み、頷く。
(うおおおおおお!やっぱりぃぃぃぃ!)
現代人としては一度は夢を見る異世界転生無双、その機会に恵まれたという事実に勇の胸は高鳴った……。
「……」
(うっ……)
のだが、先ほどから視界に入る巨人という無視をするにはあまりにも大きすぎるノイズのせいで、高鳴った鼓動が平常値を通り越しもはや低速になっていく。巨人は先ほどから特に言葉を発することもなく佇んではいるが、自分に対して強い意思の籠った視線を送り続けていることは勇も先ほどから感じていた。
「……ところで、あの……こちらの大きなお方は一体……?」
視線の圧に屈し、この巨大な存在をスルーし、異世界転生をすることは許されないと感じた勇は恐る恐るそう切り出し、目線を巨人の方へと向ける。そんな思いで発せられた勇の言葉にルティシアはまたしても「まぁ」と漏らす。
「いけませんね、こちらのご紹介もまだでしたね。こちらは超次元平和維持エージェントのエクスさんです」
「ちょうじげんへいわいじえーじぇんと」
なんとなく想定していた類の返答に、思わず間抜けな声を漏らしてしまう。
「私は……超次元平和維持エージェントのエクス。勇……君の力を貸して欲しい。ルティシアの管理する世界は今、危機に晒されている」
「あんたやっぱ喋れたんかい」
それまで沈黙を保っていたエクスからの一声に、勇は思わず正直な感想を漏らしてしまう。だが、そんな勇にかまうことなく、エクスは話を続ける。
「現在、宇宙の果てからやってきた邪悪生命体ドゥーマが、ルティシアが管理する異世界へ浸食しようとしている。奴は本能の赴くままに知的生命体を虐殺しようとする危険な存在だ……。だが、そんな危険な生命体がルティシアの管理する並行世界へと侵入してしまった……。私は遍く並行宇宙の安寧を守る超宇宙平和維持エージェントとして、そのような事態を見過ごすわけにはいかない。どうか、君には奴を止めるために私と一緒に戦って欲しい……」
「私からもお願いします、イサムさん。あのような危険な外来生命体を野放しにすることは、私の管理している多くの世界の民を苦しめることになります。どうか、エクスさんと協力してドゥーマを滅してはいただけないでしょうか?」
エクスとルティシアの二人から協力を請われ、勇は思わず頭を抱える。それを見たルティシアは困惑しながらも声をかける。
「あの……イサムさん……?」
「……な……」
声をかけられた勇は頭を抱えながら、なにやらぶつくさとつぶやいている。そのことに気づいたルティシアはさらに困惑し、再び勇に声をかける。
「あのー……」
「……るな……」
先ほども不審な挙動はしていたが、今度は一体何なのだろうか?そう思い不振がりつつもルティシアは勇へ歩み寄った――その瞬間。
「混ぜるなっ!」
勇は顔を上げ、唐突に叫ぶ。
「うわっ、びっくりしたぁ!?」
その声量と勢い、そして予想外の事態に驚き、ルティシアが反射的に後ずさる。しかし、そんなルティシアの様子を意に介することもなく勇は勢いよくまくし立てる。
「ええい、どっかで見たような設定2つを安易に混ぜ合わせおってからに!なんか単純に転生展開安易にやってたら受けないみたいなこと気にしてんのか!?そんな転生する当事者からしたらありきたりとかそういうのどうでも良いんだよ!俺はクソッタレな人生ととっととおさらばして、ハッピー無双ライフで適当に美女にモテまくってハーレムウフフとかしたいの!そんなちょっと趣向を凝らしましたー、みたいな感じにして本来の異世界転生もの風味を特撮要素でぶち壊しちゃうような展開はノーサンキューなんだよ!あたりまえをあたりまえにやって無難に終わらせようよ!読者見たいな存在がいる世界なのかどうか知らないけど、そいつらに目に留まらなくてもいいよこの際!俺はノーマルに行って欲しいの、ノーマルに!そもそもウ……」
勇の激流のようなトークにルティシアは気圧される。しかし、勇が正気を失っているように見受けられ、なおかつ言っている内容の理解も出来ないため、このままでは話が進まないと感じた彼女は直後に思い切った行動へ出る。
「えーいっ!」
ルティシアは気の抜けたような掛け声とともに腰の入ったキレの良いアッパーカットを勇の顎に叩き込む。
「りんかけっ!?」
叩き込まれたアッパーの威力に、勇は奇声を発しながらきりもみ回転をしつつ吹っ飛び、目視することが出来ない空間内の床に勢いよく叩きつけられる。
「ううぅ……」
強烈な痛みに、勇は度の過ぎた興奮が沈静化されていく。勇が正気に戻ったことを察したルティシアは改めて勇に声をかける。
「あの……イサムさん?」
「あぁ、はい、すみません……。ちょっといきなりキャパを超えた事態に興奮して醜態をさらしてしまいました」
勇は深々と頭を下げる。
「いえいえ。こちらこそ手荒な真似をしてしまいすみません。ところで……」
ルティシアは謝罪もそこそこに本題を切り出そうとする。そのことを察した勇が先回りした質問を投げかける。
「さっき言ってたドゥーマってやつのことです?」
ルティシアは勇の言葉に頷く。
「あなたの管理する異世界がそいつのせいでヤバいことになろうとしているから、転生したうえでそこにいるエクスさんと協力して撃退しろってことですよね?」
そうですそうですと言わんばかりにルティシアはすごい勢いで首を縦に何度も振る。
「……だとすると……、1つ分からないのですが、なんで俺なんです?あんたは……俺なんかで良いんですか?」
勇は正直な疑問を口にしながらエクスの方へ視線を向ける。エクスは、勇の視線を受けて深く頷く。
「私は、君と共に戦いたいのだ」
エクスから発せられた明確な意思に勇は困惑する。
「なんでまたそんな……」
「エクスさんは貴方の最期の行動に感銘を受けたのです。覚えていませんか?」
「……最期の行動……?」
ルティシアからの説明を受けて、勇は我に返る。そういえば、自身の死の直前の記憶がほとんどない。一体、自分は何をしていて、それに対してエクスがどのような感想を抱いたというのだろうか。
「思い出してください。貴方の死の直前、何が起こったのか?そして貴方は何をしたのか?」
そう言われて勇は、先ほどは中断されてしまった自身の死の直前の状況を思い出すという行為を再開すべく、腕を組み、首を傾げる。そして、記憶の糸をたどり始めた。
(……何だ?)
耳朶を打つ柔らかな女性の声に、一人の男の意識がおぼろげながら覚醒する。
「さあ、目覚めなさい……予期せぬ死を迎えた哀れなる魂、カミシロ=イサム……」
(――っ!)
さらに己の名を呼ばれて眠っていた男、神代勇の意識が朧気ながら覚醒する。
(……俺は、気を失っていたのか……?それに予期せぬ死って……)
勇は意識を失う前のことを思い出そうとする。
「不幸な貴方に、異世界へ転生し新たなる生を謳歌する機会を与えましょう……さあ、目覚めなさい……」
(!?……もしやこれは……異世界転生ッ!?まさか俺にその機会が!?これはチートで無双でウハウハで、俺にもウキウキワクワクハーレムが!?うおおおおおおお!!)
しかし、声が語る内容に衝撃を受けた勇は思い出し作業を中断されてしまう。勇は目を見開き、そして勢いよく跳び起きる。
「はいはいはいはいはいっ!目覚めました起きました立ち上がりましたーっ!これ異世界転生ですよね!俺めちゃくちゃチートなスキルもらって異世界救い……」
だが、跳び起きた勢いのまままくし立てられていた勇の言葉が突如として止まる。
「…………」
その理由は上がったテンションに身を任せて話していた勇が、視界に映るものを認識し、理解をし始めたことにある。まず、最初に勇が認識したのはまるで宇宙のような得体のしれない空間に自身がいること、そしてその空間の中で、自身が巨人に見下ろされているということであった。自身を見下ろしている巨人の顔は、2つ目があり、1つ口があるというところまでは人間と同じであった。しかし、顔面を構成するその目と口は人間とはかけはなれた構造をしていた。目は顔面から隆起し、発光している。また、口も可動するようには見えず、発話や食事のための機能があるようには思えない、形だけのものに見受けられた。だが、これらの要素が並んだ顔面は、まるで仏像のようにどこか神々しさを感じさせるものとなっており、外宇宙から飛来してきた某正義のヒーローを彷彿とさせる。
そんな勇の脳内認識が奇声となって口から思わず飛び出した。
「ツブラヤッ!?」
「うわっ、びっくりした!」
そんな勇の奇声に反応する声があった。声は先ほど目覚めるように呼び掛けてきた声と同じものと思われたが、今の声にはその時あった神々しさが感じられない。とりあえず、反応の声に驚いた勇は、その発生源と思われる位置に視線を向ける。そこには神秘的な白い着衣を纏った、いかにも女神……といった風情の女性が佇んでいた。勇の視線に気づいた女性は、勇に微笑みかけると手をひらひらと振る。
「目覚められましたか、カミシロ=イサムさん?色々まくし立てながら跳び起きたと思ったら急にフリーズして、そこから変な奇声を上げるものだから驚いてしまいました」
「あはは……その、すみません」
自身の醜態について美女に丁寧に解説をされてしまい、勇は乾いた笑いを漏らす。
「ところであの……えーと、あなたは?」
目の前の女性がどういった存在かはなんとなく見当はついているが、確認の意味も込めて勇は問いかける。問いかけられた女性は上品なしぐさで口元に手をあてて「まぁ」と漏らすと、頭を下げる。
「ご挨拶がまだでしたね、ごめんなさい。私はルティシア……数多の世界を管理する、貴方たちの世界で言うところの異世界の女神です」
(……やっぱり!)
自身の予想が的中し、勇は思わず拳を握る。
「じゃあ、やっぱり俺に異世界転生の機会を……?しかももしかして……なんかすごい能力付きで?」
「はい、そういうことです。理解が早くて助かります」
ルティシアは微笑み、頷く。
(うおおおおおお!やっぱりぃぃぃぃ!)
現代人としては一度は夢を見る異世界転生無双、その機会に恵まれたという事実に勇の胸は高鳴った……。
「……」
(うっ……)
のだが、先ほどから視界に入る巨人という無視をするにはあまりにも大きすぎるノイズのせいで、高鳴った鼓動が平常値を通り越しもはや低速になっていく。巨人は先ほどから特に言葉を発することもなく佇んではいるが、自分に対して強い意思の籠った視線を送り続けていることは勇も先ほどから感じていた。
「……ところで、あの……こちらの大きなお方は一体……?」
視線の圧に屈し、この巨大な存在をスルーし、異世界転生をすることは許されないと感じた勇は恐る恐るそう切り出し、目線を巨人の方へと向ける。そんな思いで発せられた勇の言葉にルティシアはまたしても「まぁ」と漏らす。
「いけませんね、こちらのご紹介もまだでしたね。こちらは超次元平和維持エージェントのエクスさんです」
「ちょうじげんへいわいじえーじぇんと」
なんとなく想定していた類の返答に、思わず間抜けな声を漏らしてしまう。
「私は……超次元平和維持エージェントのエクス。勇……君の力を貸して欲しい。ルティシアの管理する世界は今、危機に晒されている」
「あんたやっぱ喋れたんかい」
それまで沈黙を保っていたエクスからの一声に、勇は思わず正直な感想を漏らしてしまう。だが、そんな勇にかまうことなく、エクスは話を続ける。
「現在、宇宙の果てからやってきた邪悪生命体ドゥーマが、ルティシアが管理する異世界へ浸食しようとしている。奴は本能の赴くままに知的生命体を虐殺しようとする危険な存在だ……。だが、そんな危険な生命体がルティシアの管理する並行世界へと侵入してしまった……。私は遍く並行宇宙の安寧を守る超宇宙平和維持エージェントとして、そのような事態を見過ごすわけにはいかない。どうか、君には奴を止めるために私と一緒に戦って欲しい……」
「私からもお願いします、イサムさん。あのような危険な外来生命体を野放しにすることは、私の管理している多くの世界の民を苦しめることになります。どうか、エクスさんと協力してドゥーマを滅してはいただけないでしょうか?」
エクスとルティシアの二人から協力を請われ、勇は思わず頭を抱える。それを見たルティシアは困惑しながらも声をかける。
「あの……イサムさん……?」
「……な……」
声をかけられた勇は頭を抱えながら、なにやらぶつくさとつぶやいている。そのことに気づいたルティシアはさらに困惑し、再び勇に声をかける。
「あのー……」
「……るな……」
先ほども不審な挙動はしていたが、今度は一体何なのだろうか?そう思い不振がりつつもルティシアは勇へ歩み寄った――その瞬間。
「混ぜるなっ!」
勇は顔を上げ、唐突に叫ぶ。
「うわっ、びっくりしたぁ!?」
その声量と勢い、そして予想外の事態に驚き、ルティシアが反射的に後ずさる。しかし、そんなルティシアの様子を意に介することもなく勇は勢いよくまくし立てる。
「ええい、どっかで見たような設定2つを安易に混ぜ合わせおってからに!なんか単純に転生展開安易にやってたら受けないみたいなこと気にしてんのか!?そんな転生する当事者からしたらありきたりとかそういうのどうでも良いんだよ!俺はクソッタレな人生ととっととおさらばして、ハッピー無双ライフで適当に美女にモテまくってハーレムウフフとかしたいの!そんなちょっと趣向を凝らしましたー、みたいな感じにして本来の異世界転生もの風味を特撮要素でぶち壊しちゃうような展開はノーサンキューなんだよ!あたりまえをあたりまえにやって無難に終わらせようよ!読者見たいな存在がいる世界なのかどうか知らないけど、そいつらに目に留まらなくてもいいよこの際!俺はノーマルに行って欲しいの、ノーマルに!そもそもウ……」
勇の激流のようなトークにルティシアは気圧される。しかし、勇が正気を失っているように見受けられ、なおかつ言っている内容の理解も出来ないため、このままでは話が進まないと感じた彼女は直後に思い切った行動へ出る。
「えーいっ!」
ルティシアは気の抜けたような掛け声とともに腰の入ったキレの良いアッパーカットを勇の顎に叩き込む。
「りんかけっ!?」
叩き込まれたアッパーの威力に、勇は奇声を発しながらきりもみ回転をしつつ吹っ飛び、目視することが出来ない空間内の床に勢いよく叩きつけられる。
「ううぅ……」
強烈な痛みに、勇は度の過ぎた興奮が沈静化されていく。勇が正気に戻ったことを察したルティシアは改めて勇に声をかける。
「あの……イサムさん?」
「あぁ、はい、すみません……。ちょっといきなりキャパを超えた事態に興奮して醜態をさらしてしまいました」
勇は深々と頭を下げる。
「いえいえ。こちらこそ手荒な真似をしてしまいすみません。ところで……」
ルティシアは謝罪もそこそこに本題を切り出そうとする。そのことを察した勇が先回りした質問を投げかける。
「さっき言ってたドゥーマってやつのことです?」
ルティシアは勇の言葉に頷く。
「あなたの管理する異世界がそいつのせいでヤバいことになろうとしているから、転生したうえでそこにいるエクスさんと協力して撃退しろってことですよね?」
そうですそうですと言わんばかりにルティシアはすごい勢いで首を縦に何度も振る。
「……だとすると……、1つ分からないのですが、なんで俺なんです?あんたは……俺なんかで良いんですか?」
勇は正直な疑問を口にしながらエクスの方へ視線を向ける。エクスは、勇の視線を受けて深く頷く。
「私は、君と共に戦いたいのだ」
エクスから発せられた明確な意思に勇は困惑する。
「なんでまたそんな……」
「エクスさんは貴方の最期の行動に感銘を受けたのです。覚えていませんか?」
「……最期の行動……?」
ルティシアからの説明を受けて、勇は我に返る。そういえば、自身の死の直前の記憶がほとんどない。一体、自分は何をしていて、それに対してエクスがどのような感想を抱いたというのだろうか。
「思い出してください。貴方の死の直前、何が起こったのか?そして貴方は何をしたのか?」
そう言われて勇は、先ほどは中断されてしまった自身の死の直前の状況を思い出すという行為を再開すべく、腕を組み、首を傾げる。そして、記憶の糸をたどり始めた。
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