巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと

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美味しいものが食べたい

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この世界の食べ物は、決して質は悪くない。だが種類が極めて少なく、調理方法も限られていてバリエーションが極端に少ないのだ。味は悪くないものの、大体がぼそぼそしたパンと野菜スープ、肉というメニュー。スープの野菜も人参と玉ねぎのみ、味付けも塩程度。
そして不思議なことに、スイーツのバリエーションは意外にあるのだ。とはいえ焼き菓子と果物に生クリーム程度だが。どうやら小麦粉と砂糖(もしくはそれに類する甘味料)はかなり潤沢らしい。
焼き菓子も発酵するタイプのものは見なかったので、そのやり方が知られていないらしい。だがバターや生クリーム、砂糖があるならパンだって発酵生地のふんわりしたものが作れるだろう。
野菜も人参や玉ねぎ、芋類等根菜しか出されないが、葉野菜や実野菜があれば食卓はぐっと豊かになるに違いない。
紗江が熱く語るのに、マリウスや他の魔法使い達も目を丸くしていた。彼等にとって質素で代わり映えしない食事はそういうものであり、それが当たり前である故にそれ以外、もしくはそれ以上のこと等考えてみたこともなかったらしい。
「なので、畑とか使わせてもらえたら有難いです。あと台所」
言いながら思い出してみれば、女神様は色々チート能力を与えてくれたのだ。元の世界の作物やそれ等の利用法等、こちらに根付けば素晴らしいことになるだろう。元々、少ない種類の食糧は質が良いのか味自体は美味しいのだから。

食糧事情について話を聞くなら、魔法使い達より料理人が良いだろうと紹介されたのは王城の調理師コックだった。大人の男の年齢等紗江にはわからないが、そこそこ年は重ねているように見える。
「どうも。……何のご用で?」
無愛想な男だった。何と言うか陰気臭い目付きで伺うように人を見るが、本人はずいぶんいい体格をして、肉体労働向きに見える。
「えぇと、サエ、彼は王城の調理人だが……元は冒険者だった」
「怪我をしまして、冒険者が続けられなくなりましたので」
 ぼそぼそ語る様子も鬱屈している。
言いにくそうにマリウスが説明するのによれば、この世界では料理人の地位はあまり高くないらしい。裏を返せば食べること自体が重要視されていない。あの、決まりきった食事は歴史的に伝統あるもの、というか他のメニューが全く作られることがなく、時代を重ねてきたのだという。
「えぇー?……それって何か、理由があるんでしょうか?」
「いや……そういう訳ではないと思うけどね」
紗江の疑問にマリウスは苦笑し、調理師の男も微妙な顔をした。
食べる、という行為もこの世界では必要なことではあるが、あまり興味を持たれない……何だかむしろ忌避されているようで、紗江には釈然としない。
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