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カブトピン
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ヴィオラの前世の記憶が甦ったのと同時に、リリィも同じことが起きたらしい。ただし彼女の場合は更に、『この世界は前世のゲーム世界で、私が主人公』と確信した。
以来、リリィは両親を篭絡して自分の容姿を向上させ保つことに熱中し、ヴィオラは放置された。
リリィのその『愛され体質』はどうやら好意のある相手を思うままに服従させる能力のようで、彼女と距離のある使用人達がヴィオラの面倒を見てくれたのだが、元々裕福でもない子爵家だ。早いうちにその資産は底を尽き、使用人達も殆ど解雇された。残ったのは先代から仕えていた老齢の執事とその妻であるメイド兼料理人のみで、この二人の元でヴィオラは働いて糧を得た。
更に数年後、どういう伝があったのか、それなりに裕福な商会の融資を受けることになったものの、この老夫婦は馘首にされた。
その際、老妻はヴィオラの身を案じた。商会が慈善事業で融資するとは思えない、相手は百戦錬磨の商売人だ。何らかの利益を想定していたら、子爵夫妻が溺愛するリリィよりヴィオラに責務を負わされる可能性が高い。その意見には夫の執事も当のヴィオラ自身も賛成だった。
貴族子女は全員貴族の戸籍とも言うべき帳簿に登録されている。庶子や養子を引き取った場合も必ず記載が必要だ。娘が二人いることはすぐ調べられる。
ならば子爵夫妻が溺愛しているリリィではなく、存在さえ忘れているヴィオラを自分達の手駒にしようとするのではないか、と。
「ヴィオラお嬢様、私どもを信じてくださるのなら。この家を出てお逃げなさい」
「……そうするしかないでしょう。どこかで雇ってもらえるかしら」
当時ヴィオラはまだ7歳。家事仕事を身につけてはいても、身元が保証されない子どもがまともな雇い主を見つけられるとは思えない。
「雇われ仕事より、弟子入りの方が見込みはあるかと」
「『弟子入り』?誰の弟子になるの?」
きょとんと首を傾げたヴィオラに、殆ど彼女の母代わりだったメイド長兼料理人はゆっくり頷く。
「少しばかり伝手がありましたので……知り合いの魔女に依頼しました。返事はまだですが、もうそれを待つ猶予はないでしょう」
ヴィオラは幼いながらに、スキルの発動があった。おそらく錬金術だろうとは執事の見立て。それほど珍しいスキルではないが、使い途によっては十分身を立てられる。もちろん魔女にとっても使い勝手はいいはず。
彼等老夫妻を解雇する際にヴィオラとも絶縁する旨の書類にサインさせ、屋敷を出るのと共に彼女を連れ出した。その後、魔女の住む森近くで二人とはぐれたヴィオラは自分でその住処へ何とか辿り着いた。
以来、リリィは両親を篭絡して自分の容姿を向上させ保つことに熱中し、ヴィオラは放置された。
リリィのその『愛され体質』はどうやら好意のある相手を思うままに服従させる能力のようで、彼女と距離のある使用人達がヴィオラの面倒を見てくれたのだが、元々裕福でもない子爵家だ。早いうちにその資産は底を尽き、使用人達も殆ど解雇された。残ったのは先代から仕えていた老齢の執事とその妻であるメイド兼料理人のみで、この二人の元でヴィオラは働いて糧を得た。
更に数年後、どういう伝があったのか、それなりに裕福な商会の融資を受けることになったものの、この老夫婦は馘首にされた。
その際、老妻はヴィオラの身を案じた。商会が慈善事業で融資するとは思えない、相手は百戦錬磨の商売人だ。何らかの利益を想定していたら、子爵夫妻が溺愛するリリィよりヴィオラに責務を負わされる可能性が高い。その意見には夫の執事も当のヴィオラ自身も賛成だった。
貴族子女は全員貴族の戸籍とも言うべき帳簿に登録されている。庶子や養子を引き取った場合も必ず記載が必要だ。娘が二人いることはすぐ調べられる。
ならば子爵夫妻が溺愛しているリリィではなく、存在さえ忘れているヴィオラを自分達の手駒にしようとするのではないか、と。
「ヴィオラお嬢様、私どもを信じてくださるのなら。この家を出てお逃げなさい」
「……そうするしかないでしょう。どこかで雇ってもらえるかしら」
当時ヴィオラはまだ7歳。家事仕事を身につけてはいても、身元が保証されない子どもがまともな雇い主を見つけられるとは思えない。
「雇われ仕事より、弟子入りの方が見込みはあるかと」
「『弟子入り』?誰の弟子になるの?」
きょとんと首を傾げたヴィオラに、殆ど彼女の母代わりだったメイド長兼料理人はゆっくり頷く。
「少しばかり伝手がありましたので……知り合いの魔女に依頼しました。返事はまだですが、もうそれを待つ猶予はないでしょう」
ヴィオラは幼いながらに、スキルの発動があった。おそらく錬金術だろうとは執事の見立て。それほど珍しいスキルではないが、使い途によっては十分身を立てられる。もちろん魔女にとっても使い勝手はいいはず。
彼等老夫妻を解雇する際にヴィオラとも絶縁する旨の書類にサインさせ、屋敷を出るのと共に彼女を連れ出した。その後、魔女の住む森近くで二人とはぐれたヴィオラは自分でその住処へ何とか辿り着いた。
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