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学園編
こんなに押し付けないでくださいよ
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王子に脅され、結局仕事を押し付けられてしまった。
最初はちょっとしたおつかい、書類をどこどこに届けるとかだけだったのに、何を考えたのか王子は、他領地からよこされる税収の改革や他領地で相談されている森林の伐採問題、河の反乱を抑えるための灌漑、ダム工事の着工や予算決済、他国との外交(書類上で)などの仕事をさせてくる。
そういえば、予算決済のために届いた灌漑工事の設計図がなんか物凄く壊れやすい設計だったので、新しく図面を書いてはみた。まあ、なんかムズムズしたから書いてみただけだけど。
なんとなく、犯罪の臭いがするなあ。
王子もまあまあ忙しいけど、なんで私はこんな量の仕事を押し付けられているのかな?
黙々と押し付けられてくる仕事を片付け続けていると、一日と半日が経っていた。
家にいないとリークスから薬草を貰えないと、少し危機感を持った矢先、深夜だというのにノックがされた。
ここは王宮の端のほうにある少し小さめの部屋、私のような小娘が仕事をしているのを誰にも見られないように王子が用意した部屋で、ごく限られた人しかこない部屋。
だから、彼がいるのはおかしいはずなんだけど。
「やー、お嬢も大変っすねえ」
そういう言葉と共に、彼リークスが部屋に入ってくる。
その後ろには、リークス以上にいてはいけない人物が入ってきた。
「やあ。リア、久しぶりだね?」
髪の色がおかしいけど、数年間は見てきた顔、わからないはずがない。
なぜか、ヒオウギ国第三王子で私にとっては鬼門と言ってもいい、トウヤ王子がそこにいた。
ぽかんとした顔になり、数瞬後には相手が王子だということも忘れてつい言ってしまう。
驚き過ぎて椅子から転げ落ちる勢いで立ち上がった。
「なな、なんでここにいるんですか!? 」
「本当はスターズ国の学園の教師で来る予定だったんだけどねぇ。君のほうからアプローチがあったからさ。こっちのほうが面白そうだし」
「いやいやいや、全く意味がわからないんですけど。リークス、これどういうこと?」
「んー、俺も流石に、権力なら逆らってもいいけどこれは無理っす」
「うん、だからわかんない。私にもわかるように説明してほしいんだけど」
「ふふ、混乱する君を見るのは新鮮だね。いいよ、僕が教えてあげる」
なぜか私を今一番混乱させてる元凶が、我が物顔で部屋に備え付けられている一人掛け用のソファに(いつの間に)優雅に腰かけて説明を買って出る。
「実はね、リークスは見張られていたんだよ。ついでにこの国に限らないけど、どの国にも多かれ少なかれいろんな国の密偵がいるでしょ?で、僕が雇ってる密偵とリークスにつけてた密偵の情報で君が作った毒消しから派生した毒の解毒剤を作るための薬草を集めてるってわかってね。僕も力になりたいなあって、リークスに接触したんだよ」
「えっと、ちょっと情報が多すぎて処理が追い付かないんですけど、つまりトウヤ王子は私のために薬草を集めるのを手伝ってくれたってことですか?」
何か聞き捨てならないことを言われた気がするけど、脳の処理が真面目に追い付かないので、今必要な情報のみに注力する。
「うん、そうだね。だから君が思ってたよりも早かったでしょ?」
「まあはい、早いとは思います」
「とりあえず、君が欲しがってた薬草はこのかばんに入ってるよ」
トウヤ王子がわきに置いていたかばんを指し示すので、私は受け取ろうと、近寄る。
「えっと、この度はありがとうございます」
お礼を言ってかばんを取ろうと手を伸ばすのだけど、王子はかばんを左手で取ってしまう。
「その前に、お礼の言葉もいいんだけどね、僕は別のお礼が欲しいんだ」
めちゃくちゃにこにこして、不吉としか思えない顔でそんなことを言ってくる。
「あ、あの、お、お金でしたら相場の数倍出しますので」
「いーや、僕が欲しいのはお金じゃないんだ、とりあえずこっち来てくれない?」
「はい?どちらですか」
「僕の前にだよ、ほらここ」
自分が腰かけているソファの前を示すので、そちらに行くと、あろうことか王子は私の手を右手で自分のほうに引いてくる。
いきなり引っ張られて踏ん張りがきかない私は王子の上に落ちてしまうのだが、いつの間に自由になっていた左手て私のあごをつかんでいて、そのまま私の口は王子の口でふさがれてしまう。
王子は開いた私の口に舌をねじ込み、上顎から下顎、歯列を丁寧に舌で舐めとる。
今世での私のファーストキスは、こうして王子に奪われたのだった。
最初はちょっとしたおつかい、書類をどこどこに届けるとかだけだったのに、何を考えたのか王子は、他領地からよこされる税収の改革や他領地で相談されている森林の伐採問題、河の反乱を抑えるための灌漑、ダム工事の着工や予算決済、他国との外交(書類上で)などの仕事をさせてくる。
そういえば、予算決済のために届いた灌漑工事の設計図がなんか物凄く壊れやすい設計だったので、新しく図面を書いてはみた。まあ、なんかムズムズしたから書いてみただけだけど。
なんとなく、犯罪の臭いがするなあ。
王子もまあまあ忙しいけど、なんで私はこんな量の仕事を押し付けられているのかな?
黙々と押し付けられてくる仕事を片付け続けていると、一日と半日が経っていた。
家にいないとリークスから薬草を貰えないと、少し危機感を持った矢先、深夜だというのにノックがされた。
ここは王宮の端のほうにある少し小さめの部屋、私のような小娘が仕事をしているのを誰にも見られないように王子が用意した部屋で、ごく限られた人しかこない部屋。
だから、彼がいるのはおかしいはずなんだけど。
「やー、お嬢も大変っすねえ」
そういう言葉と共に、彼リークスが部屋に入ってくる。
その後ろには、リークス以上にいてはいけない人物が入ってきた。
「やあ。リア、久しぶりだね?」
髪の色がおかしいけど、数年間は見てきた顔、わからないはずがない。
なぜか、ヒオウギ国第三王子で私にとっては鬼門と言ってもいい、トウヤ王子がそこにいた。
ぽかんとした顔になり、数瞬後には相手が王子だということも忘れてつい言ってしまう。
驚き過ぎて椅子から転げ落ちる勢いで立ち上がった。
「なな、なんでここにいるんですか!? 」
「本当はスターズ国の学園の教師で来る予定だったんだけどねぇ。君のほうからアプローチがあったからさ。こっちのほうが面白そうだし」
「いやいやいや、全く意味がわからないんですけど。リークス、これどういうこと?」
「んー、俺も流石に、権力なら逆らってもいいけどこれは無理っす」
「うん、だからわかんない。私にもわかるように説明してほしいんだけど」
「ふふ、混乱する君を見るのは新鮮だね。いいよ、僕が教えてあげる」
なぜか私を今一番混乱させてる元凶が、我が物顔で部屋に備え付けられている一人掛け用のソファに(いつの間に)優雅に腰かけて説明を買って出る。
「実はね、リークスは見張られていたんだよ。ついでにこの国に限らないけど、どの国にも多かれ少なかれいろんな国の密偵がいるでしょ?で、僕が雇ってる密偵とリークスにつけてた密偵の情報で君が作った毒消しから派生した毒の解毒剤を作るための薬草を集めてるってわかってね。僕も力になりたいなあって、リークスに接触したんだよ」
「えっと、ちょっと情報が多すぎて処理が追い付かないんですけど、つまりトウヤ王子は私のために薬草を集めるのを手伝ってくれたってことですか?」
何か聞き捨てならないことを言われた気がするけど、脳の処理が真面目に追い付かないので、今必要な情報のみに注力する。
「うん、そうだね。だから君が思ってたよりも早かったでしょ?」
「まあはい、早いとは思います」
「とりあえず、君が欲しがってた薬草はこのかばんに入ってるよ」
トウヤ王子がわきに置いていたかばんを指し示すので、私は受け取ろうと、近寄る。
「えっと、この度はありがとうございます」
お礼を言ってかばんを取ろうと手を伸ばすのだけど、王子はかばんを左手で取ってしまう。
「その前に、お礼の言葉もいいんだけどね、僕は別のお礼が欲しいんだ」
めちゃくちゃにこにこして、不吉としか思えない顔でそんなことを言ってくる。
「あ、あの、お、お金でしたら相場の数倍出しますので」
「いーや、僕が欲しいのはお金じゃないんだ、とりあえずこっち来てくれない?」
「はい?どちらですか」
「僕の前にだよ、ほらここ」
自分が腰かけているソファの前を示すので、そちらに行くと、あろうことか王子は私の手を右手で自分のほうに引いてくる。
いきなり引っ張られて踏ん張りがきかない私は王子の上に落ちてしまうのだが、いつの間に自由になっていた左手て私のあごをつかんでいて、そのまま私の口は王子の口でふさがれてしまう。
王子は開いた私の口に舌をねじ込み、上顎から下顎、歯列を丁寧に舌で舐めとる。
今世での私のファーストキスは、こうして王子に奪われたのだった。
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