54 / 92
3章
夜は六根清浄と上手くはいかない
しおりを挟む
そして1ヶ月間、夫人のスパルタと課題、ダンスの練習、夜会用の布への刺繍や宝飾品の選定をした。縫製は出来ないので、あくまで俺は刺繍部分だけだ。というかそこまでしたら時間が無くて死んでしまう。
無論、グウェンも仕事に忙殺されており、気づけば夜寝る時だけ顔を見合わせることが多くなっていた。お互い疲れていたし、夜の営みなんかもってのほかだった。
何とか礼節やダンスは合格点を貰ったのは、夜会が次の日に控えていた。
「ノア、ピシッとして行くのよ!大丈夫!ノアは綺麗なんだから!」
「……いや、めちゃくちゃ自信ないです……」
あんなに鬼のように怒られ続け、もともとネガティブな自分は更に自信を無くしていた。
夫人に背中をパシパシ叩かれながらも丸くなる背中。暗雲を背負ったまま、当日を迎えることとなった。
「……言葉を失くすとは、このことだな」
俺はアイリスとスイレンに手伝ってもらいながらなんとか準備を整えた。玄関ホールで待ち構えていたグウェンは目を見開いてこちらを見ていた。
「ど、どういうこと?ダメってこと?」
「いや…綺麗すぎて、言葉にならん」
「…グウェン疲れてるでしょ」
この1ヶ月で自信という自信を根こそぎ奪われた自分は煽てられても信じることが出来なくなっていた。
「疲れてるからといって自分の目は確かだ。……欠席しないか?」
「ひぃ!出すのも恥ずかしいってこと?!」
「旦那様、欠席して寝室へ行くのは許されません。」
「ノア様、悪い方に考えすぎです」
グウェンの格好は、質の良い黒いタキシードに華美にならない程度にシルバーの刺繍が施されている。襟の部分にはゴールドの糸で月を刺繍している。刺繍の部分は俺がやったが、元が良いとやはり刺繍も映えるものだと感心した。
アイリスとスイレンに窘められ、渋々2人で馬車に乗り込んだ。馬車が王城へ向かい始めると、対面で座っているグウェンが膝に人差し指をトントン、と何度かして口を開いた。
「……俺から離れないように」
「い、言われなくても離れないです!」
一体どのくらいの規模なのか。なぜみんな引きこもりをさせてくれないのか。恐らく俺の顔色は悪い。とにかく落ち着かなくてはと深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。
「……はぁ」
「ノア」
フッと影が出来たことに気づく。見上げるとグウェンが近寄っていた。いつの間に近くに来ていたのか。グウェンは隣に座ると、俺の腰に手を回した。
「え、え、ちょ」
「すまん。我慢しようと思ったんだが」
王城までの道はまだ確かに遠い。遠いが、そんな事をしている時間はない。それが分かっているはずなのに、この男はまさか。
腰に回された腕はグッと力を込められグウェンの方ににじり寄った。顎に手を当てられ、強制的に上を向けさせられる。
「こうすれば、緊張もなくなる」
「んっ!」
唇を重ねられる。化粧が落ちるかもとか考えるが、グウェンの舌が入って上顎を舌で撫でられると気持ちよさに身体を預け始めた。
「ん……ふっ、んん」
グウェンの首に手を回して、快感に身を委ねる。およそ1ヶ月ぶりに味わうグウェンでも快楽への道程は身体が覚えている。
口内を蹂躙してくる舌に、俺も絡ませるように動かす。いつになく積極的な俺に、グウェンは少しビクッと身体を動かすがすぐに口付けに意識を戻した。
どのくらいそうしていただろうか。馬車が舗装された道を通る音に混ざって、馬車内にそぐわないキスの水音が響く。何度も角度を変えてキスを繰り返す内に、俺はスイッチが入りかけた。
その矢先、馬車の動きが止まった。
「んっ!ぷぁ! ん……っや、やば……っ」
「俺が先に出る。落ち着いたら出てこい」
グウェンは涼しい顔をして、俺の頭頂部へキスをしてから馬車のドアを開けて外に出た。
「……ぐっ……だ、誰のせいだ……」
グウェンの悪ノリに、乗っかった自分が悪かったとは思いたくなかった。
なんとか顔の火照りが戻った所でドアを開けた。グウェンがエスコートして降ろしてくれる。御者の方をチラ、と見ると顔を赤く染めて目を逸らされた。もう二度と馬車であんなことはしないと心に誓った。
「…おい、その色気どうにかしてから出てきた方が」
「いっ……そんなのないよ、もう頬の色は戻ったんだから、行こう」
たとえ色気があったとしても誰のせいだと思っているのか。グウェンの腕に手を回して王城へ入る。ドアの前の使用人に招待状を渡して、ドアが開かれた。
「グウェン=ライオット様並びにノア=ライオット様のご入場です」
ひぇ、名前呼んで開けないでと注目されたくない俺は思っていると、やはり思った通り、先に到着していた招待客達はこちらを一様に見ていた。
「ひっ…」
グウェンにしか聞こえない小声で怯える。俺は恐らく微笑みを浮かべたまま顔色が悪いこと間違いない。
グウェンは大丈夫だ、と俺にしか聞こえない声で言ってくれる。しかし、馬車で緊張を解されたはずが、引きこもりの性なのかまたしても緊張が駆け巡ってくる。
「行くぞ」
「う、うん……」
兎にも角にも、陛下へのご挨拶が先だ。2人で陛下と王妃殿下の座る玉座へ向かった。
向かっている最中も、なんだか目線が痛い気がする。やっぱり男の配偶者が珍しいから?いや、でもこの世界は男の配偶者もチラホラいるから、そこまででもないはずなのに。ああ、早くレイの顔を見て安心したい。そう思いながら、挨拶の順番が回ってきた。礼をして陛下の言葉を待った。
「おお、グウェン。久しぶりだな」
陛下に声をかけられ、グウェンが顔を上げる。
「お久しぶりでございます。その節は陛下にお力添え頂きありがとうございました」
「いやいや!こちらが礼を言いたいほどだ。あれからすっかりソフィアも落ち着いたのだ」
「妻もソフィア殿下と懇意にして頂いているようで」
陛下は砕けて話されている。公爵家だからだろうか、前々からの知り合いのようにも取れる話し方だ。
「グウェンの奥方も、婚姻許可以来であるな。ソフィアの件では大変な迷惑をかけたようで…」
「お久しぶりでございます。いえ、ソフィア殿下には今とても良くして頂いております。」
微笑みながら顔を上げると、陛下の口がで、の形で止まっていた。王妃も目を軽く見開いていた。不思議に思ったが、どう声をかけていいかもわからず、グウェンを見るとぐっ、と変な声を出される。
「っゴホン、まぁ本日は楽しんでいってくれ」
「はい、失礼致します」
一体なんだったのか。礼儀がなっていなかったのか?いや、無難な挨拶だったはずだ。なぜ。頭に疑問符を浮かべながら陛下たちから離れた。
「……失敗した」
「え!な、なんかやらかした?!」
「…いや、失敗したのは俺だ……」
なにかよく分からない反省が始まったようだった。グウェンは顔に手を当てながら歩いていると、近くに薔薇の刺繍が施されたドレスをきた女性が寄ってきた。薔薇の刺繍は俺が手がけたものだが、この間のものとは違う薔薇だった。何着買ってくださっているのだろうか。顔を見ると、ソフィア殿下だった。
「ノア様、グウェン様、お久しぶりでございます。本日はお会いできて嬉しいですわ」
「殿下、お久しぶりです。先月は教室をお休みしてしまって申し訳ありませんでした」
「いえいえ、いいんですのよ。また次回からよろしくお願い致しますわ…それより」
ソフィア殿下はニコニコと気さくに話していたが、俺の足からてっぺんまで見始めた。
「やっぱり素晴らしいですわ!この刺繍は百合ですわね!紺黒のシルクの布に銀糸で施された百合に月が描かれてますわね!それにしてもこの服の形は見たことがありませんが、ノア様にとても良くお似合いですわ!」
俺が来ている服は、前世で見た事がある男性チャイナドレスだ。女性とは違い、男性はズボンを履いている。肩口には雲がかった月の刺繍を裾の辺りには百合の花を一面に刺繍されている。紺黒なのは漆黒だとあまり良くないと思い選んだ。黒にこだわったのはグウェンを表現したかった。スイレンが編み込んでくれた髪の飾りには三日月が揺れる簪を刺し、耳のピアスにはガラスビーズで作成した立体に丸くした黒と金を高さ違いにチェーンの金具を使って揺れるようにしている。
「けれどもノア様、いつもと雰囲気が違いますわ」
「服が違うからじゃないですか?」
「いえ、もっとこう……身の内から出てくるような……」
「そ、ソフィア殿下! 後ろの方々も挨拶したがっております!」
グウェンは慌てたように、後ろのソワソワしているご令嬢達へ誘導する。するとソフィア王女が気づいたようにあ、と声を上げる。
「グウェン様が我慢できなかったからですのね!」
俺たちの周りが一瞬ザワついた。俺は最初理解できなかったが、グウェンが焦っているので気づく。そして、頭から爆発音がなった。
「の、ノア、落ち着け、ここはパーティー会場だ!」
「~~~~~っ!!だ、誰のせいだと……!」
「っうぐ!」
なんとか俺は理性が働いて、顔を真っ赤にしながらグウェンの爪先をヒールで潰すだけに留めた。グウェンは少し涙目でしゃがんだ。騎士団長でも痛いものは痛いらしい。
ソフィア王女はホホホ、と笑いながら離れていった。
無論、グウェンも仕事に忙殺されており、気づけば夜寝る時だけ顔を見合わせることが多くなっていた。お互い疲れていたし、夜の営みなんかもってのほかだった。
何とか礼節やダンスは合格点を貰ったのは、夜会が次の日に控えていた。
「ノア、ピシッとして行くのよ!大丈夫!ノアは綺麗なんだから!」
「……いや、めちゃくちゃ自信ないです……」
あんなに鬼のように怒られ続け、もともとネガティブな自分は更に自信を無くしていた。
夫人に背中をパシパシ叩かれながらも丸くなる背中。暗雲を背負ったまま、当日を迎えることとなった。
「……言葉を失くすとは、このことだな」
俺はアイリスとスイレンに手伝ってもらいながらなんとか準備を整えた。玄関ホールで待ち構えていたグウェンは目を見開いてこちらを見ていた。
「ど、どういうこと?ダメってこと?」
「いや…綺麗すぎて、言葉にならん」
「…グウェン疲れてるでしょ」
この1ヶ月で自信という自信を根こそぎ奪われた自分は煽てられても信じることが出来なくなっていた。
「疲れてるからといって自分の目は確かだ。……欠席しないか?」
「ひぃ!出すのも恥ずかしいってこと?!」
「旦那様、欠席して寝室へ行くのは許されません。」
「ノア様、悪い方に考えすぎです」
グウェンの格好は、質の良い黒いタキシードに華美にならない程度にシルバーの刺繍が施されている。襟の部分にはゴールドの糸で月を刺繍している。刺繍の部分は俺がやったが、元が良いとやはり刺繍も映えるものだと感心した。
アイリスとスイレンに窘められ、渋々2人で馬車に乗り込んだ。馬車が王城へ向かい始めると、対面で座っているグウェンが膝に人差し指をトントン、と何度かして口を開いた。
「……俺から離れないように」
「い、言われなくても離れないです!」
一体どのくらいの規模なのか。なぜみんな引きこもりをさせてくれないのか。恐らく俺の顔色は悪い。とにかく落ち着かなくてはと深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。
「……はぁ」
「ノア」
フッと影が出来たことに気づく。見上げるとグウェンが近寄っていた。いつの間に近くに来ていたのか。グウェンは隣に座ると、俺の腰に手を回した。
「え、え、ちょ」
「すまん。我慢しようと思ったんだが」
王城までの道はまだ確かに遠い。遠いが、そんな事をしている時間はない。それが分かっているはずなのに、この男はまさか。
腰に回された腕はグッと力を込められグウェンの方ににじり寄った。顎に手を当てられ、強制的に上を向けさせられる。
「こうすれば、緊張もなくなる」
「んっ!」
唇を重ねられる。化粧が落ちるかもとか考えるが、グウェンの舌が入って上顎を舌で撫でられると気持ちよさに身体を預け始めた。
「ん……ふっ、んん」
グウェンの首に手を回して、快感に身を委ねる。およそ1ヶ月ぶりに味わうグウェンでも快楽への道程は身体が覚えている。
口内を蹂躙してくる舌に、俺も絡ませるように動かす。いつになく積極的な俺に、グウェンは少しビクッと身体を動かすがすぐに口付けに意識を戻した。
どのくらいそうしていただろうか。馬車が舗装された道を通る音に混ざって、馬車内にそぐわないキスの水音が響く。何度も角度を変えてキスを繰り返す内に、俺はスイッチが入りかけた。
その矢先、馬車の動きが止まった。
「んっ!ぷぁ! ん……っや、やば……っ」
「俺が先に出る。落ち着いたら出てこい」
グウェンは涼しい顔をして、俺の頭頂部へキスをしてから馬車のドアを開けて外に出た。
「……ぐっ……だ、誰のせいだ……」
グウェンの悪ノリに、乗っかった自分が悪かったとは思いたくなかった。
なんとか顔の火照りが戻った所でドアを開けた。グウェンがエスコートして降ろしてくれる。御者の方をチラ、と見ると顔を赤く染めて目を逸らされた。もう二度と馬車であんなことはしないと心に誓った。
「…おい、その色気どうにかしてから出てきた方が」
「いっ……そんなのないよ、もう頬の色は戻ったんだから、行こう」
たとえ色気があったとしても誰のせいだと思っているのか。グウェンの腕に手を回して王城へ入る。ドアの前の使用人に招待状を渡して、ドアが開かれた。
「グウェン=ライオット様並びにノア=ライオット様のご入場です」
ひぇ、名前呼んで開けないでと注目されたくない俺は思っていると、やはり思った通り、先に到着していた招待客達はこちらを一様に見ていた。
「ひっ…」
グウェンにしか聞こえない小声で怯える。俺は恐らく微笑みを浮かべたまま顔色が悪いこと間違いない。
グウェンは大丈夫だ、と俺にしか聞こえない声で言ってくれる。しかし、馬車で緊張を解されたはずが、引きこもりの性なのかまたしても緊張が駆け巡ってくる。
「行くぞ」
「う、うん……」
兎にも角にも、陛下へのご挨拶が先だ。2人で陛下と王妃殿下の座る玉座へ向かった。
向かっている最中も、なんだか目線が痛い気がする。やっぱり男の配偶者が珍しいから?いや、でもこの世界は男の配偶者もチラホラいるから、そこまででもないはずなのに。ああ、早くレイの顔を見て安心したい。そう思いながら、挨拶の順番が回ってきた。礼をして陛下の言葉を待った。
「おお、グウェン。久しぶりだな」
陛下に声をかけられ、グウェンが顔を上げる。
「お久しぶりでございます。その節は陛下にお力添え頂きありがとうございました」
「いやいや!こちらが礼を言いたいほどだ。あれからすっかりソフィアも落ち着いたのだ」
「妻もソフィア殿下と懇意にして頂いているようで」
陛下は砕けて話されている。公爵家だからだろうか、前々からの知り合いのようにも取れる話し方だ。
「グウェンの奥方も、婚姻許可以来であるな。ソフィアの件では大変な迷惑をかけたようで…」
「お久しぶりでございます。いえ、ソフィア殿下には今とても良くして頂いております。」
微笑みながら顔を上げると、陛下の口がで、の形で止まっていた。王妃も目を軽く見開いていた。不思議に思ったが、どう声をかけていいかもわからず、グウェンを見るとぐっ、と変な声を出される。
「っゴホン、まぁ本日は楽しんでいってくれ」
「はい、失礼致します」
一体なんだったのか。礼儀がなっていなかったのか?いや、無難な挨拶だったはずだ。なぜ。頭に疑問符を浮かべながら陛下たちから離れた。
「……失敗した」
「え!な、なんかやらかした?!」
「…いや、失敗したのは俺だ……」
なにかよく分からない反省が始まったようだった。グウェンは顔に手を当てながら歩いていると、近くに薔薇の刺繍が施されたドレスをきた女性が寄ってきた。薔薇の刺繍は俺が手がけたものだが、この間のものとは違う薔薇だった。何着買ってくださっているのだろうか。顔を見ると、ソフィア殿下だった。
「ノア様、グウェン様、お久しぶりでございます。本日はお会いできて嬉しいですわ」
「殿下、お久しぶりです。先月は教室をお休みしてしまって申し訳ありませんでした」
「いえいえ、いいんですのよ。また次回からよろしくお願い致しますわ…それより」
ソフィア殿下はニコニコと気さくに話していたが、俺の足からてっぺんまで見始めた。
「やっぱり素晴らしいですわ!この刺繍は百合ですわね!紺黒のシルクの布に銀糸で施された百合に月が描かれてますわね!それにしてもこの服の形は見たことがありませんが、ノア様にとても良くお似合いですわ!」
俺が来ている服は、前世で見た事がある男性チャイナドレスだ。女性とは違い、男性はズボンを履いている。肩口には雲がかった月の刺繍を裾の辺りには百合の花を一面に刺繍されている。紺黒なのは漆黒だとあまり良くないと思い選んだ。黒にこだわったのはグウェンを表現したかった。スイレンが編み込んでくれた髪の飾りには三日月が揺れる簪を刺し、耳のピアスにはガラスビーズで作成した立体に丸くした黒と金を高さ違いにチェーンの金具を使って揺れるようにしている。
「けれどもノア様、いつもと雰囲気が違いますわ」
「服が違うからじゃないですか?」
「いえ、もっとこう……身の内から出てくるような……」
「そ、ソフィア殿下! 後ろの方々も挨拶したがっております!」
グウェンは慌てたように、後ろのソワソワしているご令嬢達へ誘導する。するとソフィア王女が気づいたようにあ、と声を上げる。
「グウェン様が我慢できなかったからですのね!」
俺たちの周りが一瞬ザワついた。俺は最初理解できなかったが、グウェンが焦っているので気づく。そして、頭から爆発音がなった。
「の、ノア、落ち着け、ここはパーティー会場だ!」
「~~~~~っ!!だ、誰のせいだと……!」
「っうぐ!」
なんとか俺は理性が働いて、顔を真っ赤にしながらグウェンの爪先をヒールで潰すだけに留めた。グウェンは少し涙目でしゃがんだ。騎士団長でも痛いものは痛いらしい。
ソフィア王女はホホホ、と笑いながら離れていった。
0
お気に入りに追加
855
あなたにおすすめの小説
その男、有能につき……
大和撫子
BL
俺はその日最高に落ち込んでいた。このまま死んで異世界に転生。チート能力を手に入れて最高にリア充な人生を……なんてことが現実に起こる筈もなく。奇しくもその日は俺の二十歳の誕生日だった。初めて飲む酒はヤケ酒で。簡単に酒に呑まれちまった俺はフラフラと渋谷の繁華街を彷徨い歩いた。ふと気づいたら、全く知らない路地(?)に立っていたんだ。そうだな、辺りの建物や雰囲気でいったら……ビクトリア調時代風? て、まさかなぁ。俺、さっきいつもの道を歩いていた筈だよな? どこだよ、ここ。酔いつぶれて寝ちまったのか?
「君、どうかしたのかい?」
その時、背後にフルートみたいに澄んだ柔らかい声が響いた。突然、そう話しかけてくる声に振り向いた。そこにいたのは……。
黄金の髪、真珠の肌、ピンクサファイアの唇、そして光の加減によって深紅からロイヤルブルーに変化する瞳を持った、まるで全身が宝石で出来ているような超絶美形男子だった。えーと、確か電気の光と太陽光で色が変わって見える宝石、あったような……。後で聞いたら、そんな風に光によって赤から青に変化する宝石は『ベキリーブルーガーネット』と言うらしい。何でも、翠から赤に変化するアレキサンドライトよりも非常に希少な代物だそうだ。
彼は|Radius《ラディウス》~ラテン語で「光源」の意味を持つ、|Eternal《エターナル》王家の次男らしい。何だか分からない内に彼に気に入られた俺は、エターナル王家第二王子の専属侍従として仕える事になっちまったんだ! しかもゆくゆくは執事になって欲しいんだとか。
だけど彼は第二王子。専属についている秘書を始め護衛役や美容師、マッサージ師などなど。数多く王子と密に接する男たちは沢山いる。そんな訳で、まずは見習いから、と彼らの指導のもと、仕事を覚えていく訳だけど……。皆、王子の寵愛を独占しようと日々蹴落としあって熾烈な争いは日常茶飯事だった。そんな中、得体の知れない俺が王子直々で専属侍従にする、なんていうもんだから、そいつらから様々な嫌がらせを受けたりするようになっちまって。それは日増しにエスカレートしていく。
大丈夫か? こんな「ムササビの五能」な俺……果たしてこのまま皇子の寵愛を受け続ける事が出来るんだろうか?
更には、第一王子も登場。まるで第二王子に対抗するかのように俺を引き抜こうとしてみたり、波乱の予感しかしない。どうなる? 俺?!
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?
小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている
飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話
アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。
無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。
ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。
朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。
連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。
※6/20追記。
少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。
今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。
1話目はちょっと暗めですが………。
宜しかったらお付き合い下さいませ。
多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。
ストックが切れるまで、毎日更新予定です。
最強S級冒険者が俺にだけ過保護すぎる!
天宮叶
BL
前世の世界で亡くなった主人公は、突然知らない世界で知らない人物、クリスの身体へと転生してしまう。クリスが眠っていた屋敷の主であるダリウスに、思い切って事情を説明した主人公。しかし事情を聞いたダリウスは突然「結婚しようか」と主人公に求婚してくる。
なんとかその求婚を断り、ダリウスと共に屋敷の外へと出た主人公は、自分が転生した世界が魔法やモンスターの存在するファンタジー世界だと気がつき冒険者を目指すことにするが____
過保護すぎる大型犬系最強S級冒険者攻めに振り回されていると思いきや、自由奔放で強気な性格を発揮して無自覚に振り回し返す元気な受けのドタバタオメガバースラブコメディの予定
要所要所シリアスが入ります。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
異世界に転生したら竜騎士たちに愛されました
あいえだ
BL
俺は病気で逝ってから生まれ変わったらしい。ど田舎に生まれ、みんな俺のことを伝説の竜騎士って呼ぶんだけど…なんだそれ?俺は生まれたときから何故か一緒にいるドラゴンと、この大自然でゆるゆる暮らしたいのにみんな王宮に行けって言う…。王宮では竜騎士イケメン二人に愛されて…。
完結済みです。
7回BL大賞エントリーします。
表紙、本文中のイラストは自作。キャライラストなどはTwitterに順次上げてます(@aieda_kei)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる