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side story -レイとルーク-
レイの恋煩い①
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「はぁ……」
レイ=ローマンドは馬車の中で珍しくため息をついた。
僕は基本的にポジティブで楽天的で猪突猛進である。学生の頃は良く、『悩みなんてなさそう』と言われる程だった。実際、悩みなんて誰かに話す前に自分で解決してきたし、多分これからもそうなるだろうと思っていた。新しい魔法の研究でだって悩む前に行動し、成功させてきた。
なのに、今の自分はため息をつくほど悩んでいる。
それというのも、恋人であるルーク=ヴァレンスが原因だ。しかし彼自身に何か問題がある訳でも不満がある訳でもない。いや、多少の不満はあるかもしれないが、些事でありそこまで目くじらを立てるものはない。けれど、ルークが原因なのだ。
「はあぁ……」
こんなの自分らしくない、とは誰よりも自分が1番よく分かっている。けれど、考えれば考えるほど胸に何かがつかえてこびり付いて取れないのだ。これは僕にとって初めての感情で、グウェンの時だって感じたことがない。
元々グウェンへの気持ちは、それほどと言ってしまえばそれまで。好きという気持ちより、自分より年上の兄のような人への敬愛の方が強かった。けれど今は一体どこを尊敬していたのか分からないほどに、変態化してきてそれは目下弟の悩みとなっているらしい。
「なんでこんな……」
今更。そう。この現状を表現するならば今更という言葉が一番しっくりくる。かと言って人によっては今からでも、という言葉が後に続くかもしれない。別に誰からも責められることはない。
ルークへの恋を自覚したのだ
そこにたどり着くと、身体全体にブワッと熱が上がってくるのを感じる。悩んで、自覚して、恥ずかしくなってを繰り返す。さっきからずっとこんな調子だ。そしてこの気持ちはなんの罪もない。ルークは自分の恋人である。
「ううぅー…」
なのにどうしてか死にたくなってくるほど恥ずかしいのだ。気持ちに体がついていかない。
ルークは最近子爵家である自分の家に泊まることが多い。家には使用人以外はレイ本人しか居ないため、部屋は沢山あるし、愚痴相手として有難く居てもらっていた。
自分の中でのルークの立ち位置は、今まで恋人ではなかった。
いや、誕生日パーティでキスをされた時から恋人だったはずなのに、あれ以降そういう雰囲気にもならなかった。ルークも特にアプローチもしてこなかった。だから家にいてもドキドキもしなければ、恋人という括りになったことに多少の疑問も感じていた。
先の事件、最低最悪の状況で純潔を奪われた時に絶望した。色んなことが駆け巡った。
どうして僕が。
どうしてこんなことに。
こんな辛い思いをノアは今まで抱えていたのか。
ノアも助けたい。自分もノアと一緒に助かりたい。
助けて。
誰か。
ルーク
身体の自由を奪われ、頭が混乱している中で自分が1番強く求めたのは恋人だった。
純潔を奪われた事でルークが自分に対して拒否反応が出てしまったらどうしようか、と多少の思案はあったが、ルークは別段自分に対しての態度を変えることはなかった。自分にはそれがとてもありがたかった。変に気を使われても、触るのを嫌がられてもどちらも自分には耐え難いものだった。ルークにもそれが分かっていたのかもしれない。
だから、今日も普通だったのだ。
朝、多少寝ぼけながら朝食を取ろうと食堂に向かった。前を歩いているルークも同様に食堂に向かっているところだった。後ろから「おはよう」と声を掛けた。これはいつも通りで普通の事だ。
けれど、振り返ったルークが、窓から差し込む朝日でキラキラしていた。
いつもの事だ。なのに。動悸がした。整えてきたであろう髪に少しだけ寝癖がついているのも、グウェンほど筋肉質ではないが鍛え上げられたしなやかな筋肉も、いつもの意地悪そうではない恋人を見る瞳も、少しだけ口端を上げた微笑みも。全部全部。
身体が静止した。何が起きているのか自分でも理解出来なかった。ルークは自分が突然反応しなくなったせいか、心配そうに近づいてくる。
無理だ。
そう思って逃げた。ルークが引き留めようと手を伸ばしてきても、使用人が走っている自分に不思議そうにしているのも分かっていた。けれど無理なものは無理なのだ。
顔はこれ以上ないほど真っ赤だし、誰も追いかけてきてないことが分かって立ち止まったら身体が震えてくるし、立っていられなくてズルズル自分を抱えるように抱きしめて座り込んだ。
「なにこれぇ……」
なんとかフラフラしながら立ち上がって、たまたま御者がいたから馬車に乗り込んだ。
そして、冒頭に戻る。
レイ=ローマンドは馬車の中で珍しくため息をついた。
僕は基本的にポジティブで楽天的で猪突猛進である。学生の頃は良く、『悩みなんてなさそう』と言われる程だった。実際、悩みなんて誰かに話す前に自分で解決してきたし、多分これからもそうなるだろうと思っていた。新しい魔法の研究でだって悩む前に行動し、成功させてきた。
なのに、今の自分はため息をつくほど悩んでいる。
それというのも、恋人であるルーク=ヴァレンスが原因だ。しかし彼自身に何か問題がある訳でも不満がある訳でもない。いや、多少の不満はあるかもしれないが、些事でありそこまで目くじらを立てるものはない。けれど、ルークが原因なのだ。
「はあぁ……」
こんなの自分らしくない、とは誰よりも自分が1番よく分かっている。けれど、考えれば考えるほど胸に何かがつかえてこびり付いて取れないのだ。これは僕にとって初めての感情で、グウェンの時だって感じたことがない。
元々グウェンへの気持ちは、それほどと言ってしまえばそれまで。好きという気持ちより、自分より年上の兄のような人への敬愛の方が強かった。けれど今は一体どこを尊敬していたのか分からないほどに、変態化してきてそれは目下弟の悩みとなっているらしい。
「なんでこんな……」
今更。そう。この現状を表現するならば今更という言葉が一番しっくりくる。かと言って人によっては今からでも、という言葉が後に続くかもしれない。別に誰からも責められることはない。
ルークへの恋を自覚したのだ
そこにたどり着くと、身体全体にブワッと熱が上がってくるのを感じる。悩んで、自覚して、恥ずかしくなってを繰り返す。さっきからずっとこんな調子だ。そしてこの気持ちはなんの罪もない。ルークは自分の恋人である。
「ううぅー…」
なのにどうしてか死にたくなってくるほど恥ずかしいのだ。気持ちに体がついていかない。
ルークは最近子爵家である自分の家に泊まることが多い。家には使用人以外はレイ本人しか居ないため、部屋は沢山あるし、愚痴相手として有難く居てもらっていた。
自分の中でのルークの立ち位置は、今まで恋人ではなかった。
いや、誕生日パーティでキスをされた時から恋人だったはずなのに、あれ以降そういう雰囲気にもならなかった。ルークも特にアプローチもしてこなかった。だから家にいてもドキドキもしなければ、恋人という括りになったことに多少の疑問も感じていた。
先の事件、最低最悪の状況で純潔を奪われた時に絶望した。色んなことが駆け巡った。
どうして僕が。
どうしてこんなことに。
こんな辛い思いをノアは今まで抱えていたのか。
ノアも助けたい。自分もノアと一緒に助かりたい。
助けて。
誰か。
ルーク
身体の自由を奪われ、頭が混乱している中で自分が1番強く求めたのは恋人だった。
純潔を奪われた事でルークが自分に対して拒否反応が出てしまったらどうしようか、と多少の思案はあったが、ルークは別段自分に対しての態度を変えることはなかった。自分にはそれがとてもありがたかった。変に気を使われても、触るのを嫌がられてもどちらも自分には耐え難いものだった。ルークにもそれが分かっていたのかもしれない。
だから、今日も普通だったのだ。
朝、多少寝ぼけながら朝食を取ろうと食堂に向かった。前を歩いているルークも同様に食堂に向かっているところだった。後ろから「おはよう」と声を掛けた。これはいつも通りで普通の事だ。
けれど、振り返ったルークが、窓から差し込む朝日でキラキラしていた。
いつもの事だ。なのに。動悸がした。整えてきたであろう髪に少しだけ寝癖がついているのも、グウェンほど筋肉質ではないが鍛え上げられたしなやかな筋肉も、いつもの意地悪そうではない恋人を見る瞳も、少しだけ口端を上げた微笑みも。全部全部。
身体が静止した。何が起きているのか自分でも理解出来なかった。ルークは自分が突然反応しなくなったせいか、心配そうに近づいてくる。
無理だ。
そう思って逃げた。ルークが引き留めようと手を伸ばしてきても、使用人が走っている自分に不思議そうにしているのも分かっていた。けれど無理なものは無理なのだ。
顔はこれ以上ないほど真っ赤だし、誰も追いかけてきてないことが分かって立ち止まったら身体が震えてくるし、立っていられなくてズルズル自分を抱えるように抱きしめて座り込んだ。
「なにこれぇ……」
なんとかフラフラしながら立ち上がって、たまたま御者がいたから馬車に乗り込んだ。
そして、冒頭に戻る。
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