【完結】泥中の蓮

七咲陸

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2章

惚れた欲目※

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グウェンの建てた屋敷に引っ越してからというもの、3食昼寝付きで、基本的に全てメイドが何もかも行ってくれる。多少肉付きが良くなってきたと自分で思ってきた。たまに朝は食べ逃すけれども、概ね健康な毎日を送る生活に少しずつ慣れ始めた。


「ん……」


机に突っ伏していた顔を上げる。いつの間にか寝てしまっていた。デスクに向かって、刺繍図案を考えていたはずだった。

しかし、陽が心地よく当たるこの部屋は暖かく、快適な睡眠を促してきた。まだ陽は高い。自分がうたた寝してからさほど時間が経っていないようだった。


「あれ…膝掛けかけてくれたんだ」


アイリスか、スイレンのどちらかが気を遣って肩にかけてくれたのだろうと考える。

扉からノックの音が3回した。返事をすると扉が開いて、今考えていたメイドのスイレンが姿を表した。


「ノア様、奥様が到着致しました」
「え!あ、ごめんなさい!寝てた!」
「いえ、先触れが来た時に起こそうと思いましたが、奥様から急がせないようにとの命令だったので起こしませんでした」
「ひ、ひえええ…次は起こして…」


思うに、この屋敷のメイド達は俺に甘すぎる。更に公爵様や夫人もめちゃくちゃ甘い。

しかし眠りこけて遅刻なのはまずいので慌てて準備する。スイレンは準備を手伝ってくれる。急いた気持ちのまま、足取りは早歩きで夫人が待つ部屋に向かった。

今日は、結婚式の打ち合わせで右も左も分からない俺にアドバイスをしながら準備をしていく予定だ。会うと夫人は優雅にお茶を飲んでおり、謝罪をするとニコニコとしていた。打ち合わせは滞りなく終わり、解散となった。帰りに夫人が


「お互いの服は、息子が決めたいそうよ。お楽しみにね」


うふふ、と笑いながら夫人は帰って行った。






「あっ、グウェン、ん…んん……」
「ノア…」


自室に入った瞬間、後ろから抱き締められながら唇を盗られる。挨拶混じりのキスのように思って、好きにさせていた。

最近グウェンは呼び捨てを要望した。様付けする度に落ち込まれたり、最中だとしつこくしてくるため、俺はグウェン様と呼ぶのを諦めた。


「んっ、ん……ふぁ、んん」


舌を絡ませ吸われ、口内を蹂躙される。明らかに挨拶の度を超え始めた。自分は快楽に滅法弱い。グウェンもそれを狙って煽るようなキスをしてくる。

ドアの前での激しい口付けに、もう何も考えられなくなりそうだった。身を捩り、ドアの方に向いていた身体を、グウェンへ向けて腕を首に絡ませる。


「はっ、は……ん、ふ……ん、ぁ」
「ノア…」


キスをしながら器用にグウェンは俺の下を脱がす。もう既に反応しているソコにグウェンが触れる。


「んっ、んっ」
「凄いな、キスだけでこんなにとろとろで」
「ん…だって…んぅ」


口付けを再開しながら、グウェンの手は陰茎を上下に擦り始める。先走りで濡れているソレは、緩急をつけた動きに翻弄される。


「んっ、んんっ、ふっ、ぁん…!」


膝を抱えられ、左足を持ち上げられる。片足だけでは支えられなくなった身体はドアに寄り掛かる。グウェンの右手は陰茎から会陰へ向かっていく


「ここ、触られるの好きだろ?」
「あっ、んん~っ」


指先で会陰をなぞられると身体全体からゾクゾクとした快感が襲ってくる。グウェンは何度か行き来し、俺の反応を楽しんでいた。

指は後孔に触れそうで、触れてくれない。もう知ってしまった快楽は浅ましいほど自分から求めてしまう。


「んっ!ぁ……やだ、もっと、後ろ……」
「ちゃんと言いなさい」
「あっ……ん、グウェン、後ろに指…」
「指をどうすれば良いのか、ちゃんと言いなさい」


グウェンは耳元でハスキーな声を聞かせる。それだけでまたゾクゾクと快感が駆け巡る。


「あっ、グウェンの、指で、ぐちゃぐちゃにして欲しい……」
「…良いだろう」
「んっ……あっ!ぁん!んんっ」


グウェンの太く無骨な指がゆっくり入ってくる。まずは1本だったが、徐々に指を増やされているのか、水音が激しくなっていく。


「あっ、あっ、ん!きもちいっ」
「指だけで満足してるのか?」
「あっ!やだ!やだ、グウェンのっ、ちょうだい!」


指よりも気持ちよくしてくれるモノを欲しがる姿に、グウェンの口端が上がる。

指が引き抜かれると、物欲しそうに後孔がヒクヒクした。この後来る快楽に、俺はこれ以上無いほど期待して興奮していた。


「グウェン様、ノア様。失礼してもよろしいでしょうか」


ノックと共にアイリスの声が聞こえてきた。

思わず、ヒッと声を挙げそうになって、口を抑えて耐えた。


「っ、グウェン、下ろしてっ……」
「……」


アイリスに返事をするために小声でグウェンに左足を下ろして貰うよう要求する。グウェンの顔は下を向いていて良く見えなかった。しかし、要求はなかなか通らない。不思議に思ってグウェンの顔を覗き込もうとした瞬間だった。


「~~~っ!!」


後孔がズチュン!と思い切り音を立てながら、何かが貫かれた。貫く際に中の良いところを抉られ、思わず声が出そうになるが、何とか耐える。

下を見るとグウェンの恐ろしいまでに太くそそり立つ陰茎が、俺の中に挿れられていた。


「はっ、ぁっだめっ、まって、やだっ、あ、んっ」


後ろの1枚ドアを隔てた先にいるアイリスに聞かれないよう最大限声を抑えながら拒否する。しかしグウェンは俺の後孔を関係ないとでも言うように中で暴れさせる。

グウェンの眼が、飢えたケモノの様に光る。


「……? 入りますが、大丈夫でしょうか?」
「ひっ、あ、アイ、リスっ!ちょっと、まって!」


ドアノブが少し傾くのが見えた。俺は焦りながら、グウェンにずちゅっ、ずちゅっと良いところを抉られつつもなんとか返事をする。


「……大変失礼致しました。食事はまた後程お声かけします」
「っ! ああ、おね、がい!」


動き始めたドアノブがピタリと止まる。アイリスは何かを察したように返答し、離れていく気配を感じた。


「凄い締りだったな」
「くっ…このっ、あっ!あ!~~っ!」


恨みがましく文句を言ってやろうとするが、責められ続けた中でグウェンが前立腺を刺激する。左足だけでなく、右足も持ち上げて貫かれる。

身体はグウェンに絡みついた腕と背中のドアだけの支えになる。良いところを抉られ、声にならない声をあげた。


「あっ!あ!だめっあ!きちゃう!」
「ノア…可愛いな……っ」
「あっ!~~~~~っっ!!!」


同時に達し、しばらく2人で呼吸を整えた。グウェンのモノが出しきったのか、ゆっくり抜かれていく。ゆっくり足を下ろされ、中に出された精液はだらしなく後孔から太ももを伝った。


「はっ、ぁ……ちょっ、と!んっんぅ……」
「ノア、可愛かった…好きだ……」


顔の至る所にキスをされながら囁かれる。怒ってやろうとしたのに、この男はあろう事か先手を打ってきた。


「ノア…」
「~~っ、その顔はズルい!」


そうだ、俺は8年前の最初、この顔にやられたのだ。その時の自分にまた言ってやりたい。

このとても顔が良い男は、それを武器にどんな悪事も許されると思ってるぞ、と。
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