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「あ、そろそろ帰らないと」
何事もなくお茶して、ほのぼの今日の出来事を話しているうちに大分時間が経っていた。夕食の時間までに帰るなら今から家に向かわなくちゃいけない。
俺がそう言ってソファに置いていた荷物をゴソゴソと取り出していると、逆隣に座っていたヴィオがこっちをジッと見ていることに気づく。ほんとコイツいちいち絵になるな。ムカつく。ソファの肘掛で頬杖をつきながら俺の顔を優しく手背でさらりと撫ぜた。
「帰したくなくなるな」
そしたら本当に寂しそうに言うものだから、俺も何だか離れがたくなってしまった。
「……泊まりたいって言ったら、泊まらせてくれる……?」
蚊の鳴くような声で呟く。頬から頭頂部まで熱くて熱くて湯気が出そうだった。恥ずかしくてヴィオから目を逸らしていたけど、全然反応がない。おかしいと思ってヴィオの方を見ると両手で顔を覆って天を仰いでた。
「何してんの?」
「……己の理性と戦っている」
「どっちが勝った?」
「首の皮一枚理性」
「泊まっちゃダメってこと?」
「……流石にクリス殿に殺される。今日のところは帰らせる」
クリス、俺の父はいまだにヴィオと婚約破棄するか尋ねてくる。俺の気持ちが固まったのを見て寂しくなったらしい。その度、母であるセドに怒られている。子供のことを好きなのは嬉しいけど、ちょっと鬱陶しかったりする。
俺が泊まりを匂わせるとセドなんかは「お泊まり?良いよ! あ、これはヴィオ様を信用してるからだからね?ノエルがヴィオ様をあんまり誘惑しちゃダメだよ?」なんて言ってくる。誘惑なんかしたことないんだが。
「今日はって…いつも帰らせられてる」
別に1日くらい泊まってもいいじゃんと言いながらぷく、と膨れて見せるとヴィオからぐぐと耐えるような喉の音が聞こえてきた。
「……………………お前は、本当に俺に感謝して欲しい。俺にというか、俺の理性に……」
「はー? 泊まらせてくれないのに感謝するのとか変じゃね?」
「…………なら感謝しなくていい。とにかく送るから帰るぞ」
なんだよ!ちょっと呆れてる顔して!いや、ワガママすぎたから呆れてんのか?どっちにしても、もう言う事聞いといた方が良さそうだ。ヴィオをあまり困らせるなってメイナードにも言われてる。俺の何百倍も忙しいのにこうやって時間を作ってくれているのだ、と懇切丁寧に教えられている。そりゃもう耳にタコが出来るほどだ。
「はぁい。あーあ、やっぱり契約訂正しようかなー」
「ノエル」
俺を咎めるような声にうっと怯む。こうやって名前を呼ぶ時は本当にダメな時だ。
「分かったよ、悪かった!いいじゃん別に…少し言うだけなら…っ」
諦めていじけながらもソファから立ち上がる。しかし上手く立ち上がれなかった。腕を掴まれ、引き寄せられる。気づけば俺はヴィオの身体の上に乗っかる体勢になっていた。
転んだような勢いに、ヴィオの胸に額をぶつけた。
「ったぁ…な、なに……?!」
そんなに痛くなかったけど、硬い筋肉に覆われた胸に当たった額がジーンとする。ちょっと涙目になりながらヴィオを見ようと上を向く。
「っ、!?」
顎を掴まれ、唇に柔らかな感触がぶつかる。
「な、な」
「ノエルは余程俺とそういうことがしたいみたいだからな」
「人を痴女みたいに言うな!」
初めてはレモンの味って言うけど、初めてはよく分からん、ってのが答えだと知ったのだった。
------
エールありがとうございます!
出来る限り頑張ります……!
何事もなくお茶して、ほのぼの今日の出来事を話しているうちに大分時間が経っていた。夕食の時間までに帰るなら今から家に向かわなくちゃいけない。
俺がそう言ってソファに置いていた荷物をゴソゴソと取り出していると、逆隣に座っていたヴィオがこっちをジッと見ていることに気づく。ほんとコイツいちいち絵になるな。ムカつく。ソファの肘掛で頬杖をつきながら俺の顔を優しく手背でさらりと撫ぜた。
「帰したくなくなるな」
そしたら本当に寂しそうに言うものだから、俺も何だか離れがたくなってしまった。
「……泊まりたいって言ったら、泊まらせてくれる……?」
蚊の鳴くような声で呟く。頬から頭頂部まで熱くて熱くて湯気が出そうだった。恥ずかしくてヴィオから目を逸らしていたけど、全然反応がない。おかしいと思ってヴィオの方を見ると両手で顔を覆って天を仰いでた。
「何してんの?」
「……己の理性と戦っている」
「どっちが勝った?」
「首の皮一枚理性」
「泊まっちゃダメってこと?」
「……流石にクリス殿に殺される。今日のところは帰らせる」
クリス、俺の父はいまだにヴィオと婚約破棄するか尋ねてくる。俺の気持ちが固まったのを見て寂しくなったらしい。その度、母であるセドに怒られている。子供のことを好きなのは嬉しいけど、ちょっと鬱陶しかったりする。
俺が泊まりを匂わせるとセドなんかは「お泊まり?良いよ! あ、これはヴィオ様を信用してるからだからね?ノエルがヴィオ様をあんまり誘惑しちゃダメだよ?」なんて言ってくる。誘惑なんかしたことないんだが。
「今日はって…いつも帰らせられてる」
別に1日くらい泊まってもいいじゃんと言いながらぷく、と膨れて見せるとヴィオからぐぐと耐えるような喉の音が聞こえてきた。
「……………………お前は、本当に俺に感謝して欲しい。俺にというか、俺の理性に……」
「はー? 泊まらせてくれないのに感謝するのとか変じゃね?」
「…………なら感謝しなくていい。とにかく送るから帰るぞ」
なんだよ!ちょっと呆れてる顔して!いや、ワガママすぎたから呆れてんのか?どっちにしても、もう言う事聞いといた方が良さそうだ。ヴィオをあまり困らせるなってメイナードにも言われてる。俺の何百倍も忙しいのにこうやって時間を作ってくれているのだ、と懇切丁寧に教えられている。そりゃもう耳にタコが出来るほどだ。
「はぁい。あーあ、やっぱり契約訂正しようかなー」
「ノエル」
俺を咎めるような声にうっと怯む。こうやって名前を呼ぶ時は本当にダメな時だ。
「分かったよ、悪かった!いいじゃん別に…少し言うだけなら…っ」
諦めていじけながらもソファから立ち上がる。しかし上手く立ち上がれなかった。腕を掴まれ、引き寄せられる。気づけば俺はヴィオの身体の上に乗っかる体勢になっていた。
転んだような勢いに、ヴィオの胸に額をぶつけた。
「ったぁ…な、なに……?!」
そんなに痛くなかったけど、硬い筋肉に覆われた胸に当たった額がジーンとする。ちょっと涙目になりながらヴィオを見ようと上を向く。
「っ、!?」
顎を掴まれ、唇に柔らかな感触がぶつかる。
「な、な」
「ノエルは余程俺とそういうことがしたいみたいだからな」
「人を痴女みたいに言うな!」
初めてはレモンの味って言うけど、初めてはよく分からん、ってのが答えだと知ったのだった。
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エールありがとうございます!
出来る限り頑張ります……!
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