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転生したらBL世界だった

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パチッ

目が覚めた瞬間だった。
見覚えのない天井が眼前に広がっていた。
横を向いて、規則的に並ぶ棒が見える。反対にもあった。どうやら俺は囲まれているようだった。
柵? どうして柵があるのか。
起き上がって確認しようとしても、身体が上手く動かせない。
ならば、と声を出そうとした。

「ぁーぅー」

声も上手く出せない。というより、声の質が根本から違っている。
これはまるで…

「起きたのかい?」

柵の上から覗き込んで来て、天井が声の主に塗り替えられた。
金の髪に、碧の眼。まるでおとぎ話のような風貌は女性のようにも見えるが、声の低さは男のソレだった。

金髪の美男子は俺を軽々と持ち上げた。
持ち上げられる瞬間、怖くて少し暴れるが、関係なく抱き寄せられてしまった。

明らかに男の胸である。
どうして女の胸でないのか。

いや、それよりも気づくべきは、この男が巨人であることである。
俺は17歳の男だったんだ。男子高校生を軽々持ち上げるなぞ、ありえない、おかしい。

そう思って、男の服を掴んだ手を見た。
俺の手だ。俺の体にくっついている。
しかし、その手は明らかに赤ん坊の手だった。ぷくぷく、ムクムク、とした可愛らしい肉厚な手をしていた。

「あー!」
「ん?どうしたんだい? お話してくれるのかなー?」

驚いて声を出したら、男は横抱きにした俺の顔をニコニコと覗き込んできた。
いや、イケメンだけど、抱き上げられるなら女がいい。

いや、そういうことじゃない!

男子高校生がどうして赤ちゃんに?!
そしてここはどこ?!
この男は一体何者?!

分からなくて赤ちゃんの上手く働かない脳で混乱していると、目の前の男とは別の声が聞こえてくる。

「セド、どうした?」

これまた男だった。 俺を抱き上げている男が儚げな美男子だとすれば、この声をかけてきた男はなんというか、秀麗な美男子だった。これまた金の髪に碧の目をしている。

セド、と呼ばれた儚げな俺を抱く美男子が俺を寝かせようと揺すりながら秀麗な美男子に言う。

「クリス。起きちゃったみたいなんだ。 もう一回寝るかなって」

クリスと呼ばれた秀麗な美男子は、俺を覗き込んでくる。

「…なんか全然泣かないし、笑わないな。どうしたんだ?」
「確かに、いつも途中で起きたら良く泣いてたのに」

いや、だって俺赤ちゃんじゃなくて、男子高校生だからね?
17歳なの。 てか俺今何歳なんだ?

「まぁいっか。ほら、まだお休みだよー」
「寝てくれないと困るな」

困るって何に。赤ちゃんだから寝るのが仕事だってか。いやしかし17歳のはずなんだが。意識も今しっかりしてる中、眠れるわけもない。

「ようやく解禁されたのに」
「も、もう…何言ってるの……」

セドはクリスの言葉に顔を赤くしている。 解禁て、ワインの解禁か?
しかし、そんな俺の想像を遥かに超える衝撃が降りかかった。

なんとこの美男子達、赤ん坊の俺の目の前でキスしたのだ。

しかも、めちゃディープなんですが!舌が入ってんの、下からだと丸見えなんですけど!セドからは「んっ……」なんて色っぽい声が聞きたくないのに聞こえてくる!

「ぁあぁあああ……」

つい声が出てしまった。恐怖に打ちひしがれた声が漏れてしまった。
なぜ俺の目の前でホモな展開が起きているんだ?

2人は俺の声に驚いて、キスを中断してくれた。
セドは真っ赤な顔のまま、また俺を揺さぶり始めた。

「ご、ごめんねぇ、ノエルー」

明らかに俺を見てノエルと言った。俺はノエルなのか。
いやそんなことはどうでもいい、どうして男同士でキスしたんだ。

「ノエル、早く寝てくれー、俺はもうお前のためにめちゃくちゃ我慢したんだからなー」
「もうクリスってば…」

我慢。男がキスをして、俺が寝てくれなくて困って、我慢している。ということはだ。つまり、そういうことか?いやそういうことなのか?!いやいや!分かりたくない!
何故こうも簡単にホモが展開されているんだ?!

「早く大きくなってねぇ、ノエル」
「ノエルが大きくなって1人で寝られるようになったらセドといつでもできるな」
「もうっ、クリスのバカ!」

なんで男の乳繰りあいを見せつけられているのか!

脳内がスパークしてショートした俺は、フッと電源が切れたかのように眠りについた。
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