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アフターストーリー⑤
しおりを挟む「はぁ…だからアリスに逃げてって言ったのに。クソ父様は許容量が超えると監禁、軟禁する悪い癖があるの」
「アリスが実家に行ったって言った瞬間に足の拘束具を取り出したからヤベェって思ったんだけど……まぁ俺らに出来ることは何も無かったな……」
ビクトリアとトラヴィンがベッドに繋がれたままのアリスティドを見て溜息をついていた。
拘束具の内側には皮膚が擦れないように、クッションが入っている。その優しさに喜ぶべきなのか、よく分からなかった。
「ぼ、僕本当に三週間このままなの?外してってお願いしても全く聞いて貰えなかったんだけど…っ」
ほんの少し泣きそうになりながら二人に尋ねる。しかし、二人は首を縦に振った。
その様子を見てアリスティドは絶望する。
昨日は拘束をされたまま、激しく揺さぶられた。ヴィクトールに抱かれて嬉しい気持ちは確かにあったのだが、眼がずっとギラついていて恐怖を感じた。
予感がしたのだ。三週間、このまま責められ続けるのでは、という予感が。
「……ちゃんと実家に帰る前は申請して、こっちに戻ってくる時も連絡すれば、まだ軟禁くらいで済んだと思う。でもアリスは今回どっちもしなかったでしょ?父様は好きな人のことを全部把握しないと気が済まない人なの」
前妻も全てを把握されていたのだろうか。しかしそれでも前妻は幸せそうではあった。
つまり、前妻もきっとこうされても恨めないほどにはヴィクトールにベタ惚れだったのだ。そしてそれはアリスティドも同じこと。
こんな状況になっても、一ミリたりとも嫌いになんてなれやしない。
けれども、恐怖はあるわけで。
「そ、それ先に言って……!」
「言ってもアリスは『そんな訳ないよ、今まで平気だったんだから』って聞きゃしねぇだろ」
トラヴィンにバッサリと切られ、アリスティドは肩をガックリ落として納得してしまった。
そうだ。ビクトリアもトラヴィンもヴィクリスも、家令のエイベンですら忠告はしてくれていた。それを全部聞き流したのは他でもない、アリスティド本人だ。
好きな人と一緒にいれるのは嬉しさでいっぱいなのだが、それはそれで、これは全く別の話になってくる。
「ま、アリスが拘束されてる間に結婚式の準備をしましょ。暇だから捗るわよ」
「え!僕やらないって……!」
「……アリスのお母様の手紙には、『アリスちゃんがやらないって言っても強制です。ちゃんとやらないと返却してもらいます』って書いてあったわ」
「アリスも帰りたくはねぇだろ。大人しく結婚式しようぜ……」
帰りたいとは思わない、思わないが、こんな拘束をされて逃げたくない訳でもない。
しかし、二人はもちろんヴィクリスもエイベンもメイドも助けてくれない。
「次回から気をつけるでしょ。ちゃんと言えば出してはくれるわよ」
「でも帰ってきたら軟禁だよね?!あんまり変わらなくない?!」
「鎖は繋がらねぇから、まだ人権はあるぞ」
「軟禁もだいぶ人権無視だよね?!」
感覚のズレを指摘しても、アリスティドを無視して二人はあーでもないこーでもないと結婚式のカタログを見始めた。アリスティドの精神安定の為に一緒に居てくれる二人は嬉しいのだが、拘束を外してくれる方がもっと嬉しい。
「ね、ねぇ…助けてくれたりは」
「する訳ないでしょ。今回はアリスも反省しなさい。私たちの忠告を無視したのだから」
「親父に内緒で勝手に外してたのがバレたら剣の訓練で扱かれんだよ。絶対嫌だ」
「うぅ……」
二人に救助を求めるが、切り捨てられた。アリスティドを助けてくれる人物は居ないらしい。
ため息とともに、遠い目をしながらアリスティドは一つ賢くなった。
ヴィクトールには報連相をしっかりしよう、と。
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