上 下
44 / 71

酒が好き

しおりを挟む
「ひろこ、スカート短いよな」

仕事帰りに俺のマンションでみんなで打ち合わせをしてバラけて帰ったところでなんとなくケンが残っていた。
2人で缶ビールを空けてたらひろこの愛車紹介番組第一回目が放送された。
画面のひろこは短いスカートも特に気にせず共演者達と笑い合っていた。

ひろこに好意を寄せる中山くんはひろこに質問したりして満面の笑みだった。
ひろこもひろこで可愛く映っていた。

「水着で出るよりいいじゃん。年頃の娘を持つ親みたいな事言うなよ」

ケンが隣でTVを見てたけど、俺を見て笑っていた。

「親の方がいいよ。一生離れてかないんだし」
「親じゃなくて恋人だからセックスできるんだぞ?」
「…そりゃそうだけどさ」

久々、ケンからタバコをもらって1本吸った。

ピロリロピロリロ

ケンのスマホが鳴ってケンはスマホを取り出した。

「お、元気ー?」

「あ、春?うん。そうだね。うん。」

ケンが俺の話しをしてる、と思って電話が終わった後ケンがため息をついていた。

「俺の知ってる人?」

「ヒデちゃんだよ。ヒデちゃんが今入ってるバンドのギタリストのヨージって分かる?ヨージがひろこに会いたがってんだって。春と付き合ってるのかの確認だったよ。」

またか。
ヨージはウワサでめちゃくちゃ女に手が早いと聞いた事がある。
もういっその事大々的にひろこと付き合ってるとみんな知ってくれないのかと思った。

「やっぱりひろこ監禁した方がいいんじゃないか?こりゃ外歩いただけで拉致られるんじゃないか?」

「遊井さんいれば大丈夫だよ。」

俺はそんなことを言っていたけど内心気が気じゃなかった。

もう時計は2時を回るところでケンが帰ると言う。
本当は今日もひろこのマンションに行きたかったけど、帰りが12時を過ぎていたからやめたけど、今からでも会いに行きたかった。心のどこかで会えない苛立ちを抱えている自分がいた。

もう、病気なんじゃないかと思った。


「宅配ボックスまで送るよ。今日まだ見てないんだ」
「送ってくれるなんて彼氏みたいだな。ひろこにもいつもそう言うのか?」
「ひろこは家まで送るよ。危ないじゃん」
「それで泊まって朝まで一緒か。今日は行かないの?」
「0時過ぎちゃったから行かないよ。」

俺はケンを1階まで見送った。

宅配ボックスの中にAmazonから雑誌が届いていた。その場でビリッと開けたらひろこが表紙の週刊アサヒが届いていた。
この表紙の撮影の前日にひろこを抱いていた。中で出した日だ。

「・・・」

薄い腹に俺の精液が入ってた時だと思うと表紙のひろこを見てなぜかまた安心感が湧いてきた。

「あ、こんばんは。」

ハッとして顔を上げると田中剛が立っていた。

「あ、どうも」

俺が会釈すると田中剛が俺の手に持つ週刊アサヒを見つめていた。
するとカバンから全く同じひろこが表紙の週刊アサヒを俺に見せてきた。

「同じですね。」


俺たちは一緒にエレベーターに乗った。

「HARUさん、何階ですか?」
「22階です。田中さんは?」
「21階です。なんだ、近いですね」
「今度うちに遊びに来てくださいよ。飲みましょうよ。」
「嬉しいです。いつでも行きますよ。うちにも来てくださいよ。なんなら今からでも歓迎ですよ!」


そんな会話をしていたら、田中剛のマンションで飲み会となっていた。


「ええええええええ!春くんの彼女って安藤ひろこなの?!えええええええええ」

深夜は3時になるところで大声を張り上げた。
いつもは刑事ドラマでシリアスな刑事役を演じてるとは思えないほどのリアクションだった。

「剛くん、声大きい。今3時!!」

気がついたらお互い「くん」付けで呼び合い、酒好きだったようでお互いビールを飲み散らかしていた。

遊井さんもそうだけど、酒って本当交流ツールだと思う。
だから俺は酒が好きだ。

「うらやましい。。安藤ひろこちゃんと?本当うらやましい。きっかけは?!きっかけは何だったの?!春くん会うなり押し倒したりとかしたの?!」

「俺、ずっと好きで。まぁ俺から強引に迫った、かな。」

「強引?!やっぱり押し倒したの?!」

目を血走らせ興奮しながら剛くんは言ったと思ったらソファーに置かれたクッションをギュッと抱きしめてため息をついた。

「俺、これ持ってるよ」

そう言うと棚からあの関西限定の完売になったひろこが表紙の雑誌を出してきた。

「あ、それ!俺買えなくて欲しかったやつだ!」
「俺はオークションで15000円でゲットしたよ。これ、めちゃくちゃ可愛いよね?表情とかサイコー!ギネスに認定されると思ったよ」
「この口と目のバランスがこれいいんですよね。いいなー俺も欲しかった!」

2人で夜中3時、ゲラゲラ笑いながらなんだか陽気になっていた。

「でもさ、これ関東版は菊田恵ちゃんが表紙でしょ?Amazonで買ったら菊田恵ちゃんの方が届いたよ。」

「春くんも?実は俺もそうなんだよ。安藤ひろこの表紙の方Amazonで買ったらめぐめぐが表紙の方がきちゃって。」

「だって剛くん菊田恵ちゃんと付き合ってるんでしょ?ならいいじゃない。」

「・・・これ、めぐめぐには言えないんだけどさ。めぐめぐが表紙の方を安藤ひろこじゃないからがっかりして持ってたらめぐめぐに現場で声かけられて。それから交際が始まったという。。」

「あ、そうなの?」

俺は意外な表紙の出会いにそんな事もあるんだと聞いていた。

「俺、安藤ひろこちゃんの大ファンだったんだよ。どこかで出会えればいいなってマネージャーにも相談しててさ。したらめぐめぐが現れて今は付き合ってるしもちろん幸せだけど、まだ安藤ひろこちゃんが好きだよ。だから春くんがうらやましい」

「・・・」

ここにも、ひろこのファンがいた。

「俳優業界でもファン多いよ。大阪にいた頃もひろこちゃんは音楽番組しか出てないからみんな出会う機会ないからって話してたこともあったよ。もう彼氏いるかな、と思ったらまさか春くんが彼氏だなんて本当ビックリしたよ。」

「剛くん。早いもの勝ちだから」

俺は真剣に言った。これだけは分かっててほしかった。

「はぁ。春くんにもう完敗。春くんは罪な男だよ。本当罪だよ。安藤ひろこちゃんと付き合えるなんて。どこかで償った方がいいよ。」

そう言うとやけ酒のごとく缶ビールを飲み干した。

どこかで聞いた事がある話しだと思ったら、あの沖縄の占い師と言い方こそ違うけど同じ事を言っていると思った。

「いつもどこで会ってるの?春くんち来てるの?うらやましー!抱きしめてキスとかできてああー!うらやましい!!夜は?夜はどおなの?!あー想像しただけで春くんずるいよ!」
「剛くん騒ぎすぎ!!」

剛くんはひろこの話になるも酔いも深くなってオヤジくさく質問ばかりしてきたけど、俺は妙に心を開いていた。

「今度、ラジオ呼ぶねー」
「春くん、またのもーねー」

もうお互いベロンベロンで朝の4時に解散した。
同じマンションに友達がいると、聖司と大ちゃんが言ってたけど飲む時すぐ帰れて楽だと言っていた。
すぐ帰れる楽さと、何よりミュージシャンではないフィールドの芸能人の友達というのが初めてで純粋に嬉しかった。


階段を登って自分の部屋に向かった。

「たんたんたららん たんたんたらら」

急にメロディが湧いてきて鼻歌を歌っていた。

「結婚 結婚 しようよ 絶対」

酔っぱらいながらなんとなく自分の想いをそのメロディに乗せて歌っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー

葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。 立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。 優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

処理中です...