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祭りのあと
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ひろこの番組収録で聖司が中抜けした。
仕事な訳だけど、ひろこと一緒に仕事ができるなんてうらやましかった。
リーダーであり楽曲を作ってる人が不在になる訳でスタジオにいる俺たちはどことなくダラダラとしてきた夕方頃、今日やってる六本木の祭りに行きたいな、と話題が出た。
「じゃあさ、収録終わった聖司とひろこも呼ぼうよ」
「ひろこちゃんは無理じゃないか?」
「この後仕事ないって言ってた!」
俺はメガネをかけてひろこと祭りに行く事に楽しみになってきた。
そんなこんなで俺達と各マネージャーを連れてバンに乗り込み六本木へ向かった。
まだ暑さがジワジワと残る9月の祭りは夜だけあり賑やかに盛り上がっていた。
「祭なんて久々だよな」
「今年初だよね?春、ビール買う?」
隣にいる優希と眺めるように祭りを見ていたら水風船が目についた。カラフルな色で水に浮くのが涼しげで可憐に映る。
なんとなく、ひろこにあげたいって思って俺は赤い水風船を取っていた。
プレゼントした赤い靴。miumiuの赤い服。関西限定だった幻の雑誌の表紙も赤い服だった。
ひろこはやたら赤が似合っていて、赤いイメージが俺の中でも、多分世間からしてもついていた。
真っ赤な水風船は水の心地良い音がして、でもこの9月に聞くと夏の終わりを予感させた。
夏の終わり。
もうひろこと付き合って2年経ったんだ。
遠くに聖司がいる、と思ったら横にひろこがいるのがすぐに分かった。
聖司がリンゴ飴を買ってひろこに渡していた。その距離感ははたから見てもすごく近くて、まるで恋人同士のように絵になっていた。
「・・・」
同じ赤でもリンゴ飴。聖司は優しい顔してひろこに渡していた。ひろこも嬉しそうに2人で見つめ合って笑っている。
俺はその光景を見て目を疑った。
聖司があんなに優しそうな顔するのは初めて見たからだ。いつも誰にでも優しい聖司だけど、見た事のないもっと目がなくなりそうな優しい眼差しだった。
「あ!ひろだ!」
優希がすぐさま2人を見つけて走って行った。
するとケンもケンでひろこに駆け寄りほっぺたをつねっていた。
突然つねられてひろこは変な顔をした。ケンと話していたけど、後方の俺にすぐ気がついた。
「あ、春!」
ひろこは笑顔ですぐ俺の元に来た。それがやっぱり愛しい気持ちに歯車がかかるのが分かった。
「さっき、取ったんだ。あげる。」
「えーありがとう!1人で取ったの?」
リンゴ飴をかかえた手で赤い水風船を受け取った。
「いい音がする。」
耳の真横で水風船をひろこは振っていた。リンゴ飴も水風船も赤くて同じくらいの大きさで両方しっかり持っていた。
立ち止まってると目立つと言うのでこのマネージャーもいる厳戒態勢でゾロゾロと一行は歩いた。
俺はさっきの聖司とひろこの光景が頭から離れなかった。
どこからどう見ても恋人同士にしか見えなかったからだ。
もし、ひろこが俺から離れて別の男と付き合ったらあぁゆう光景になるんだと思っていた。
ひろこと2人でいたい。
「来て」
「え?」
俺は大通りに出た瞬間止まっていたタクシーにひろこの手を引っ張って乗り込んだ。
「待って!みんなは?」
「いいよ」
タクシーに乗った瞬間、ひろこと2人になれた事で笑顔になっていた。
「運転手さん行ってください」
タクシーはそのまま発車した。
「もーみんなに悪いよ!春戻ろうよ」
俺のTシャツを引っ張ってひろこは焦った顔をしていた。
「2人でどこか行きたいなって思ってさ」
ひろこは困ったような顔をしたけど少し笑っていた。
笑う口元がしょうがないな、って言ってるようだった。
タクシーは俺のマンションの裏にある駐車場に入ってもらった。
ひろこは入る時屈んで外から見えないようにして、タクシーは車の前で止まってくれて、そのまま俺の車に乗り込んだ。
「ひろこ大丈夫?少しの間横になってて」
「うん」
記者に最大限気をつけてひろこを後部座席で横にさせて人がいないように見せかけた。
「記者のいなそうなところ、どこかなぁ」
赤羽橋を通過すると東京タワーがどんどん近くなってきた。
「見て。東京タワーすごい近くない?」
「わ、本当。すごい迫力。」
東京タワーの真下に来ると赤くライトアップされた東京タワーが堂々とそびえ立つ。
俺はそこに停車した。
「下から見る東京タワーってなかなか力強いよね」
「うん。赤くてキレイ」
ひろこは赤く聳え立つ東京タワーを見つめていた。
「こっち、おいでよ」
ひろこは後部座席から心配そうにキョロキョロと辺りを見渡した。
「大丈夫。記者はいなそう。」
「うん」
助手席にひろこが移動した時、2年付き合ってこれで初めてひろこが俺の車の助手席に座ったんだと思ったらやっぱり普通じゃないって思った。
「この車、カイエン?春かっこいい車乗ってるね」
「そうだよ。ひろこ車知ってるの?」
「愛車紹介の番組出るからけっこう最近車見てるんだ」
「あ!それ。ケンにオファーが来たらしいよ」
「えー?ケンって車好きなの?」
2人でドライブなんて恋人は当たり前の事なのに。
時折、双方の携帯から着信が鳴り響いた。気にせず2人で都内を走った。
初めてのひろこを助手席に乗せてのドライブはたわいもない話でダラダラと喋り、そんな意味のない時間がやたら充実していた。
「ひろこと初、ドライブ」
「そうだね。」
同じ気持ちでいてくれた事が確認できたらやっぱり嬉しくて俺はひろこの膝にある手を繋いだ。その間にあるカップホルダーにささる飲みかけのペットボトルが手を繋ぐのに邪魔で、俺は後部座席にペットボトルをそっと投げた。
「?」
「ペットボトルが邪魔して手が繋げなくて」
「なにそれ!」
「ペットボトルが俺とひろこの邪魔してるんだよ。」
ひろこはケラケラと笑っていた。
信号待ちで止まるたびにひろこの横顔を見たりしてたら、ひろこが俺の視線に気づいた。
「でもさ、運転してるのに手繋いでたら危なくない?」
「・・危なくないよ」
その瞬間少しキスをした。ラブラブって一般的にこうゆう事をいうんだろうな、なんて思った。交際2年でもラブラブって、けっこう珍しい事なんだろうと思う。自分が1年以上同じ女の子と付き合う事自体が初めてだけど、絶対珍しいと思う。
車はお台場に差し掛かるとレインボーブリッジを渡った。
観覧車がキレイに輝いて2人で眺めながら、路駐して人のいない暗がりのお台場を歩いた。
少し涼しく感じる秋の予感をのせた風が吹く。
2人で手を繋いで歩いた。
あたりは静かで、街灯もそこまで明るい訳でもなく俺は眼鏡をとってTシャツにひっかけた。
「ひろこが東京戻ってから、外でデートなんてしてないなーと思ってさ」
「・・だから、無理矢理連れ出してくれたの?」
ひろこが嬉しそうに笑った。
「あーここまで来て、ひろこを家に連れて帰りたいのになんなんだろうな。普通の恋人同士みたくしたいよ」
外でデートだってやっとの事だ。自分の置かれている状況はよく分かっている。人気ロックバンドのボーカルと、まさしくこれから人気絶頂を迎えるタレント。
週刊誌の格好の餌食になるのは当たり前だ。
「ずっと、ひろこと一緒にいたいな」
「私はいるよ。もし子供できてたらもう一生じゃない」
「あ、昨日の?」
そう言うとひろこは俺をギロっと睨んだけど俺が笑ったらつられて少し笑った。腕を引いてそっとキスをした。
仕事な訳だけど、ひろこと一緒に仕事ができるなんてうらやましかった。
リーダーであり楽曲を作ってる人が不在になる訳でスタジオにいる俺たちはどことなくダラダラとしてきた夕方頃、今日やってる六本木の祭りに行きたいな、と話題が出た。
「じゃあさ、収録終わった聖司とひろこも呼ぼうよ」
「ひろこちゃんは無理じゃないか?」
「この後仕事ないって言ってた!」
俺はメガネをかけてひろこと祭りに行く事に楽しみになってきた。
そんなこんなで俺達と各マネージャーを連れてバンに乗り込み六本木へ向かった。
まだ暑さがジワジワと残る9月の祭りは夜だけあり賑やかに盛り上がっていた。
「祭なんて久々だよな」
「今年初だよね?春、ビール買う?」
隣にいる優希と眺めるように祭りを見ていたら水風船が目についた。カラフルな色で水に浮くのが涼しげで可憐に映る。
なんとなく、ひろこにあげたいって思って俺は赤い水風船を取っていた。
プレゼントした赤い靴。miumiuの赤い服。関西限定だった幻の雑誌の表紙も赤い服だった。
ひろこはやたら赤が似合っていて、赤いイメージが俺の中でも、多分世間からしてもついていた。
真っ赤な水風船は水の心地良い音がして、でもこの9月に聞くと夏の終わりを予感させた。
夏の終わり。
もうひろこと付き合って2年経ったんだ。
遠くに聖司がいる、と思ったら横にひろこがいるのがすぐに分かった。
聖司がリンゴ飴を買ってひろこに渡していた。その距離感ははたから見てもすごく近くて、まるで恋人同士のように絵になっていた。
「・・・」
同じ赤でもリンゴ飴。聖司は優しい顔してひろこに渡していた。ひろこも嬉しそうに2人で見つめ合って笑っている。
俺はその光景を見て目を疑った。
聖司があんなに優しそうな顔するのは初めて見たからだ。いつも誰にでも優しい聖司だけど、見た事のないもっと目がなくなりそうな優しい眼差しだった。
「あ!ひろだ!」
優希がすぐさま2人を見つけて走って行った。
するとケンもケンでひろこに駆け寄りほっぺたをつねっていた。
突然つねられてひろこは変な顔をした。ケンと話していたけど、後方の俺にすぐ気がついた。
「あ、春!」
ひろこは笑顔ですぐ俺の元に来た。それがやっぱり愛しい気持ちに歯車がかかるのが分かった。
「さっき、取ったんだ。あげる。」
「えーありがとう!1人で取ったの?」
リンゴ飴をかかえた手で赤い水風船を受け取った。
「いい音がする。」
耳の真横で水風船をひろこは振っていた。リンゴ飴も水風船も赤くて同じくらいの大きさで両方しっかり持っていた。
立ち止まってると目立つと言うのでこのマネージャーもいる厳戒態勢でゾロゾロと一行は歩いた。
俺はさっきの聖司とひろこの光景が頭から離れなかった。
どこからどう見ても恋人同士にしか見えなかったからだ。
もし、ひろこが俺から離れて別の男と付き合ったらあぁゆう光景になるんだと思っていた。
ひろこと2人でいたい。
「来て」
「え?」
俺は大通りに出た瞬間止まっていたタクシーにひろこの手を引っ張って乗り込んだ。
「待って!みんなは?」
「いいよ」
タクシーに乗った瞬間、ひろこと2人になれた事で笑顔になっていた。
「運転手さん行ってください」
タクシーはそのまま発車した。
「もーみんなに悪いよ!春戻ろうよ」
俺のTシャツを引っ張ってひろこは焦った顔をしていた。
「2人でどこか行きたいなって思ってさ」
ひろこは困ったような顔をしたけど少し笑っていた。
笑う口元がしょうがないな、って言ってるようだった。
タクシーは俺のマンションの裏にある駐車場に入ってもらった。
ひろこは入る時屈んで外から見えないようにして、タクシーは車の前で止まってくれて、そのまま俺の車に乗り込んだ。
「ひろこ大丈夫?少しの間横になってて」
「うん」
記者に最大限気をつけてひろこを後部座席で横にさせて人がいないように見せかけた。
「記者のいなそうなところ、どこかなぁ」
赤羽橋を通過すると東京タワーがどんどん近くなってきた。
「見て。東京タワーすごい近くない?」
「わ、本当。すごい迫力。」
東京タワーの真下に来ると赤くライトアップされた東京タワーが堂々とそびえ立つ。
俺はそこに停車した。
「下から見る東京タワーってなかなか力強いよね」
「うん。赤くてキレイ」
ひろこは赤く聳え立つ東京タワーを見つめていた。
「こっち、おいでよ」
ひろこは後部座席から心配そうにキョロキョロと辺りを見渡した。
「大丈夫。記者はいなそう。」
「うん」
助手席にひろこが移動した時、2年付き合ってこれで初めてひろこが俺の車の助手席に座ったんだと思ったらやっぱり普通じゃないって思った。
「この車、カイエン?春かっこいい車乗ってるね」
「そうだよ。ひろこ車知ってるの?」
「愛車紹介の番組出るからけっこう最近車見てるんだ」
「あ!それ。ケンにオファーが来たらしいよ」
「えー?ケンって車好きなの?」
2人でドライブなんて恋人は当たり前の事なのに。
時折、双方の携帯から着信が鳴り響いた。気にせず2人で都内を走った。
初めてのひろこを助手席に乗せてのドライブはたわいもない話でダラダラと喋り、そんな意味のない時間がやたら充実していた。
「ひろこと初、ドライブ」
「そうだね。」
同じ気持ちでいてくれた事が確認できたらやっぱり嬉しくて俺はひろこの膝にある手を繋いだ。その間にあるカップホルダーにささる飲みかけのペットボトルが手を繋ぐのに邪魔で、俺は後部座席にペットボトルをそっと投げた。
「?」
「ペットボトルが邪魔して手が繋げなくて」
「なにそれ!」
「ペットボトルが俺とひろこの邪魔してるんだよ。」
ひろこはケラケラと笑っていた。
信号待ちで止まるたびにひろこの横顔を見たりしてたら、ひろこが俺の視線に気づいた。
「でもさ、運転してるのに手繋いでたら危なくない?」
「・・危なくないよ」
その瞬間少しキスをした。ラブラブって一般的にこうゆう事をいうんだろうな、なんて思った。交際2年でもラブラブって、けっこう珍しい事なんだろうと思う。自分が1年以上同じ女の子と付き合う事自体が初めてだけど、絶対珍しいと思う。
車はお台場に差し掛かるとレインボーブリッジを渡った。
観覧車がキレイに輝いて2人で眺めながら、路駐して人のいない暗がりのお台場を歩いた。
少し涼しく感じる秋の予感をのせた風が吹く。
2人で手を繋いで歩いた。
あたりは静かで、街灯もそこまで明るい訳でもなく俺は眼鏡をとってTシャツにひっかけた。
「ひろこが東京戻ってから、外でデートなんてしてないなーと思ってさ」
「・・だから、無理矢理連れ出してくれたの?」
ひろこが嬉しそうに笑った。
「あーここまで来て、ひろこを家に連れて帰りたいのになんなんだろうな。普通の恋人同士みたくしたいよ」
外でデートだってやっとの事だ。自分の置かれている状況はよく分かっている。人気ロックバンドのボーカルと、まさしくこれから人気絶頂を迎えるタレント。
週刊誌の格好の餌食になるのは当たり前だ。
「ずっと、ひろこと一緒にいたいな」
「私はいるよ。もし子供できてたらもう一生じゃない」
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