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一目惚れ
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小さい頃、4歳かな。
初めてイルカを見た日の事はまだ覚えている。
イルカのショーに家族5人で行った。両親と姉ちゃんと弟。
目と口が可愛くて特別な声で鳴く。
「触りたい!」
ショーが終わった後俺はイルカに触らせてもらえた。
パッと水をスプレーの如く飛ばしてプールから飛び上がってきてキスしてくれた。
「春ーよかったわね!イルカさんかわいいね」
「かわいい!」
多分、初めて「かわいい」という感情が芽生えたのはあの時かもしれない。
いつもマイペース。
何考えてるか分からない。
天然。
みんな俺の事をそうゆうけど、それからの僕の話をしようかな。
「好きな女性のタイプ イルカみたいな人って春らしいよなぁ。天然というか、」
聖司が昔のチラシを見ながら笑い出した。
「それ、アマチュア最後のライブの時配ったやつでしょ?誰これ持ってきたの?」
「引っ越しの片付けしたら出てきたんだ。春はもう片付いた?」
優希がベースを調整しながら俺に言った。
聖司、優希、ケン、俺たち4人『SOUL』はインディーズからメジャーデビューした。
俺と優希は記念にマンションを買った。
せっかくだから億ションを買ってこれからもっと稼ごうと自分を奮い立たせるつもりだった。
欅坂にあるタワーマンションでとにかく広いリビングが一目で気に入って俺はすぐに購入した。
民放各局も近い六本木麻布エリア。
デビューして気持ちは高まったけどその欅坂近辺自体、遊び歩く事はなかった。
むしろ夜中に一人で隣のスタバでコーヒー飲んでぼんやりするくらいでそれが1番自分にとって大切で好きな時間だった。
「春!もう、部屋片付いたの?」
ここにも優希と同じような事を聞く人がいる。
「まだ。片付け苦手。」
「手伝ってあげるのに。明日春の家行こうか?」
寝る間際なのにバッチリ化粧してる。
真美の長い脚が俺の前でチラチラ視界に入る。
真美はまだ新居には来ていない。連れて来てお泊まり、とか彼女だから当たり前なんだろうけど部屋をまだ片付けていないのと、そこまで真美に対して気が回らなかった。
真美のことは好きだけど、自分の仕事で精一杯だった。
ビールを飲みながらTVをつけた。
『いつか!あなたと!ワンナイトー!』
女の子達のキャピキャピした声が聞こえる。
4月から始まった平日深夜の帯番組。女の子20人くらい、ひな壇に座っている深夜の情報番組だ。
話は聞いた事あるけど、とりわけ見た事が一度もなかった番組。
真美は俺からリモコンを奪ってすぐにチャンネルを変えた。
「なんで変えるの?今の番組でよくない?深夜っぽくて」
「私、この番組オーディションで落ちたから絶対見ないって決めてるの。これ決まれば平日深夜帯で出れたのにさ」
TVはスポーツニュースにチャンネルを合わせた。
「俺もちゃんと見た事ないけど、女の子20人くらい出てるんでしょ?多分ほとんどがコネなんじゃないの?」
「うちの事務所のコネで私も出るはずだったのに、コネでさえも落ちたの。出てる女、どんだけ有力なコネ持ちなんだろ。みんなプロデューサーと寝たのかな」
真美はこの番組に落ちた事に対してくやしがっていた。プロデューサーと寝るのを引換えに、と言われたら俺に黙ってでも寝ただろうな、と思う自分がいた。
真美は雑誌のモデルをしている。仕事に対してはストイックで貪欲なところがあった。
有名になりたい。タレントになりたい。女優になりたい。歌も出してみたい。CMは大手でお酒のCMとか、外資系のかっこいいCMとか。
夢は尽きなかった。
「でも、番組に出るよりも今の雑誌に出てる方がいいじゃない。オシャレもできるし」
「紙じゃなくてテレビにでたいの」
真美は缶チューハイを一口飲んで俺の肩にもたれかかってきた。
「もう、仕事辞めようかな。25だし、アイドルにはなれないし。春に稼いでもらって結婚してもらおうかな」
腕が俺に絡み付いてきた。肩まで伸びたパーマっ毛のあるふわふわした髪が俺の口元に当たる。
ワンピースをその場で脱がせたらそのままベッドになだれ込んだ。
「春と一緒に暮らしたい」
真美はよく言っていた。
知り合ったのは去年のスタッフとの飲み会。いわば合コンだ。
付き合いだして1年が経とうとしていた。
美人だしスタイルもいいし性格も良い。
申し分ないくらいいい女だけど、セックスしたくてしてるんじゃないと思っていた。
そばにいる自分の彼女だからしてるので会っていなくても真美と特別したいとか思わない。
これは本当に彼女の事を好きなのか。でもよく考えたら今まで10人くらいの女の子と付き合ってきたけどみんなそうゆう感情だ。
彼女だからセックスするんだろうけど特別やりたい気持ちはないんだ。
彼女が切れない自分は、これは恋愛不適合なんじゃないかとさえ思っていた。
それか、その感情が世の中の恋愛においては普通の事なのか。
「真美ちゃんと最近会ってるの?」
ネクタイがしっくりいかなくて鏡を見つめながら悩んでいる俺に聖司が声をかけてきた。
「会ってるよ」
「そっか。うまくいってるんだな。」
一度だけ真美をメンバーに会わせた事がある。
こうゆう人達と仕事してるんだよ、と分かって欲しくて。特に仲良くなるはずもなくそれっきりだけど、メンバーからは春は面食いだね、くらいの話で終わっただけだけど。
「見たい見たいー!」
「どうぞどうぞ」
最近スタイリストが花ちゃんという女の子になった。
とりわけ気さくでメンバーも信頼できるような子。俺達は花ちゃんとすぐ仲良くなった。
「花ちゃんも写真好きだね~」
「こないだロケでグアム行ったんだけどカメラ新しくしたから張り切ってたくさん撮っちゃったよ」
優希と花ちゃんが仲良く話してるのを割って入るみたいで嫌だったけど俺は花ちゃんに話しかけた。
「花ちゃん、ネクタイ、やっぱりさっきの色のがいいな。」
「さっきの青いやつ?ちょっと待ってて。あれどこしまったかなぁ」
花ちゃんは大きなダンボールをゴソゴソと探している。探すのに時間がかかりそうでテーブルの上にあったアルバムに目を向けた。
「見て見て!花ちゃんも写真上手なんだよ」
優希がアルバムを持って俺に無邪気に笑いかけた。
「へー本当だ。海の写真。いいねー!これグアム?」
「ロケで行ったんだって」
「グアムかぁ。海外なんてプライベートで何年行ってないんだろ」
次のページを開いた時俺は心臓が打たれたんだ。
「・・・」
長い髪の女の子が頭や体にハイビスカスをくっつけて写っている。
バンビみたいに少し垂れた潤んだ瞳。やわらかそうな唇にあどけない笑顔。
笑っていない写真はどこかアンニュイで色っぽい。
この子、誰なんだ。
どうしてこんなに可愛いいんだ。
その瞬間頭が真っ白になった。
とにかく可愛いいんだ。
イルカが写真とだぶって幻覚のように見えた。
この子、イルカに似てるんだ。
「・・すんごいかわいい。この子タイプ。なんて名前?」
俺はアルバムをテーブルから離して至近距離でまじまじと見た。
「安藤ひろこちゃん、かわいいよね。」
「いや、本当にかわいいよ。アイドル?タレント?どこにいるの?」
多分血圧はすごく上がっていたと思う。
血が逆流しているようで心臓の鼓動が早い。
メジャーデビューが決まった時も興奮したけど、多分その時より心が騒いでいる。
写真に写るその子はそれはもう魅力的で。完全なる一目惚れだった。
「山ちゃん、ファンだよ」
俺と優希の後ろにいつの間にかケンが背後霊のように立っていて写真を見ていた。
「ケン知ってるの?」
ケンのマネージャー山ちゃんは彼女のファンだった。
初めてイルカを見た日の事はまだ覚えている。
イルカのショーに家族5人で行った。両親と姉ちゃんと弟。
目と口が可愛くて特別な声で鳴く。
「触りたい!」
ショーが終わった後俺はイルカに触らせてもらえた。
パッと水をスプレーの如く飛ばしてプールから飛び上がってきてキスしてくれた。
「春ーよかったわね!イルカさんかわいいね」
「かわいい!」
多分、初めて「かわいい」という感情が芽生えたのはあの時かもしれない。
いつもマイペース。
何考えてるか分からない。
天然。
みんな俺の事をそうゆうけど、それからの僕の話をしようかな。
「好きな女性のタイプ イルカみたいな人って春らしいよなぁ。天然というか、」
聖司が昔のチラシを見ながら笑い出した。
「それ、アマチュア最後のライブの時配ったやつでしょ?誰これ持ってきたの?」
「引っ越しの片付けしたら出てきたんだ。春はもう片付いた?」
優希がベースを調整しながら俺に言った。
聖司、優希、ケン、俺たち4人『SOUL』はインディーズからメジャーデビューした。
俺と優希は記念にマンションを買った。
せっかくだから億ションを買ってこれからもっと稼ごうと自分を奮い立たせるつもりだった。
欅坂にあるタワーマンションでとにかく広いリビングが一目で気に入って俺はすぐに購入した。
民放各局も近い六本木麻布エリア。
デビューして気持ちは高まったけどその欅坂近辺自体、遊び歩く事はなかった。
むしろ夜中に一人で隣のスタバでコーヒー飲んでぼんやりするくらいでそれが1番自分にとって大切で好きな時間だった。
「春!もう、部屋片付いたの?」
ここにも優希と同じような事を聞く人がいる。
「まだ。片付け苦手。」
「手伝ってあげるのに。明日春の家行こうか?」
寝る間際なのにバッチリ化粧してる。
真美の長い脚が俺の前でチラチラ視界に入る。
真美はまだ新居には来ていない。連れて来てお泊まり、とか彼女だから当たり前なんだろうけど部屋をまだ片付けていないのと、そこまで真美に対して気が回らなかった。
真美のことは好きだけど、自分の仕事で精一杯だった。
ビールを飲みながらTVをつけた。
『いつか!あなたと!ワンナイトー!』
女の子達のキャピキャピした声が聞こえる。
4月から始まった平日深夜の帯番組。女の子20人くらい、ひな壇に座っている深夜の情報番組だ。
話は聞いた事あるけど、とりわけ見た事が一度もなかった番組。
真美は俺からリモコンを奪ってすぐにチャンネルを変えた。
「なんで変えるの?今の番組でよくない?深夜っぽくて」
「私、この番組オーディションで落ちたから絶対見ないって決めてるの。これ決まれば平日深夜帯で出れたのにさ」
TVはスポーツニュースにチャンネルを合わせた。
「俺もちゃんと見た事ないけど、女の子20人くらい出てるんでしょ?多分ほとんどがコネなんじゃないの?」
「うちの事務所のコネで私も出るはずだったのに、コネでさえも落ちたの。出てる女、どんだけ有力なコネ持ちなんだろ。みんなプロデューサーと寝たのかな」
真美はこの番組に落ちた事に対してくやしがっていた。プロデューサーと寝るのを引換えに、と言われたら俺に黙ってでも寝ただろうな、と思う自分がいた。
真美は雑誌のモデルをしている。仕事に対してはストイックで貪欲なところがあった。
有名になりたい。タレントになりたい。女優になりたい。歌も出してみたい。CMは大手でお酒のCMとか、外資系のかっこいいCMとか。
夢は尽きなかった。
「でも、番組に出るよりも今の雑誌に出てる方がいいじゃない。オシャレもできるし」
「紙じゃなくてテレビにでたいの」
真美は缶チューハイを一口飲んで俺の肩にもたれかかってきた。
「もう、仕事辞めようかな。25だし、アイドルにはなれないし。春に稼いでもらって結婚してもらおうかな」
腕が俺に絡み付いてきた。肩まで伸びたパーマっ毛のあるふわふわした髪が俺の口元に当たる。
ワンピースをその場で脱がせたらそのままベッドになだれ込んだ。
「春と一緒に暮らしたい」
真美はよく言っていた。
知り合ったのは去年のスタッフとの飲み会。いわば合コンだ。
付き合いだして1年が経とうとしていた。
美人だしスタイルもいいし性格も良い。
申し分ないくらいいい女だけど、セックスしたくてしてるんじゃないと思っていた。
そばにいる自分の彼女だからしてるので会っていなくても真美と特別したいとか思わない。
これは本当に彼女の事を好きなのか。でもよく考えたら今まで10人くらいの女の子と付き合ってきたけどみんなそうゆう感情だ。
彼女だからセックスするんだろうけど特別やりたい気持ちはないんだ。
彼女が切れない自分は、これは恋愛不適合なんじゃないかとさえ思っていた。
それか、その感情が世の中の恋愛においては普通の事なのか。
「真美ちゃんと最近会ってるの?」
ネクタイがしっくりいかなくて鏡を見つめながら悩んでいる俺に聖司が声をかけてきた。
「会ってるよ」
「そっか。うまくいってるんだな。」
一度だけ真美をメンバーに会わせた事がある。
こうゆう人達と仕事してるんだよ、と分かって欲しくて。特に仲良くなるはずもなくそれっきりだけど、メンバーからは春は面食いだね、くらいの話で終わっただけだけど。
「見たい見たいー!」
「どうぞどうぞ」
最近スタイリストが花ちゃんという女の子になった。
とりわけ気さくでメンバーも信頼できるような子。俺達は花ちゃんとすぐ仲良くなった。
「花ちゃんも写真好きだね~」
「こないだロケでグアム行ったんだけどカメラ新しくしたから張り切ってたくさん撮っちゃったよ」
優希と花ちゃんが仲良く話してるのを割って入るみたいで嫌だったけど俺は花ちゃんに話しかけた。
「花ちゃん、ネクタイ、やっぱりさっきの色のがいいな。」
「さっきの青いやつ?ちょっと待ってて。あれどこしまったかなぁ」
花ちゃんは大きなダンボールをゴソゴソと探している。探すのに時間がかかりそうでテーブルの上にあったアルバムに目を向けた。
「見て見て!花ちゃんも写真上手なんだよ」
優希がアルバムを持って俺に無邪気に笑いかけた。
「へー本当だ。海の写真。いいねー!これグアム?」
「ロケで行ったんだって」
「グアムかぁ。海外なんてプライベートで何年行ってないんだろ」
次のページを開いた時俺は心臓が打たれたんだ。
「・・・」
長い髪の女の子が頭や体にハイビスカスをくっつけて写っている。
バンビみたいに少し垂れた潤んだ瞳。やわらかそうな唇にあどけない笑顔。
笑っていない写真はどこかアンニュイで色っぽい。
この子、誰なんだ。
どうしてこんなに可愛いいんだ。
その瞬間頭が真っ白になった。
とにかく可愛いいんだ。
イルカが写真とだぶって幻覚のように見えた。
この子、イルカに似てるんだ。
「・・すんごいかわいい。この子タイプ。なんて名前?」
俺はアルバムをテーブルから離して至近距離でまじまじと見た。
「安藤ひろこちゃん、かわいいよね。」
「いや、本当にかわいいよ。アイドル?タレント?どこにいるの?」
多分血圧はすごく上がっていたと思う。
血が逆流しているようで心臓の鼓動が早い。
メジャーデビューが決まった時も興奮したけど、多分その時より心が騒いでいる。
写真に写るその子はそれはもう魅力的で。完全なる一目惚れだった。
「山ちゃん、ファンだよ」
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