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声とともに颯爽とセオドアの隣に立ったのはジェームスだった。


「君たちは、王立学園の生徒、だね。僕のことを知ってるかい?」

ボールとゴッグは何者かと息巻き鼻息を荒くしたが、ジェームスの顔を見た途端、驚愕の表情を浮かべて青ざめ、2人同時に呟いた。


「ジェームス、会長・・・。」



「顔を知っていてくれてありがとう。改めて自己紹介させて頂くよ。僕の名は、ジェームス・ブレイク。以後よろしくね。・・君たちは、ボール君とゴッグ君、だね。」

ブレイクの家名を聞いた周りの貴族は安堵し、平民たちは高位貴族がこの場に出てきた事にざわめいた。


「君たちは何をしていたの?」

穏やかに甘い笑みを浮かべながら話しているにも関わらず、問われた者がヒヤリと背筋が寒くなりそうな声色でジェームスは聞く。
ボールとゴッグはあわあわしながらも己の正当性を訴えた。

「わ、私たちは誇り高き貴族として、己が身分を弁えた行動を示すことが、国に対する忠誠の証であることを、この無知な平民や騎士に説いただけですっ。」
「そ、そうですっ。我々は優先されるべき尊き血の者、なのですから。ジェームス会長ほどの家の方なら分かって頂けるでしょう?」

なんて傲慢なの。自分たち以外の人は奴隷だとでも言いたいの?アリシアもヴァイオレットも2人の訴えにますます憤った。

「・・ボール君とゴッグ君は、王立学園の校訓を覚えているかい?」

唐突に、ジェームスが問うた。
ボールもゴッグもぽかんとした顔をした。

「・・?え・・確か・・なん、なん・・」
「えーと、何だ?なんぺと?なんぱと?・・」

・・これで王立学園の生徒とは。情けない。アリシアは心の中でため息をついた。

「何人も、対等、平等たれ。王弟であられ我が王立学園の理事長でもあるグレンヴィル公、、、マクシミリアン殿下が掲げた訓示だ。・・どうやら君たちは、この言葉を全く理解していないようだね。」

ジェームスの言葉にボールが反論した。

「それはっ貴族間のものでしょう?平民は貴族ではありません。」
「そうですっ。平民は貴族の下にいるから生きていけるのですっ。」


「それを本気で言っているのなら、君たちはマクシミリアン殿下の意に反する思想を持つ叛逆者だね。」

ふふっと笑いながらジェームスが言う。
叛逆という言葉に2人はさらに青ざめた。

「それに、君たちの言っていることは権利の主張ばかりで責任を取ることを知らぬ言葉だよ。貴族とは責任を果たす者。暴利を貪る者ではない。もう一度、貴族とは何なのか良く考え直すと良いよ。」

ジェームスが今まで見たことのないような冷たい目で2人を一瞥すると、次の瞬間、極上の、怖いほど甘やかな笑みを浮かべた。
 

「じゃあ、宿題は出したから、君たちのセンスのないはこれまでにしてくれるかな?それではご機嫌よう。また学園で。」


ボールとゴッグは、取り囲んでいた貴族や平民の冷ややかな視線を背に、悔しそうな、バツの悪そうな顔をして逃げるように去って行った。

2人が立ち去った後の場は、ジェームスとセオドアに対しての拍手がいつまでもいつまでも鳴り響いた。
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