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ヴァイオレットに好きな人がいる。


そうよね。私達もう16歳だし、好きな人くらいいてもおかしくないわ。

それに、好きな人がいるって言った時のヴァイオレット、本当に可愛かった。頬を染めて話す姿がすごく女の子らしくて、普段と全然違うの。なんだか羨ましい。

アリシアは、恋をする女の子の話や激しい恋愛をする男女の小説は読んだことはあるけれど、まだ自分が男の人を好きになったことがないので、憧れの気持ちとともにホウとため息をつく。

けど、あのヴァイオレットが好きになる人って一体どんな人なんだろう?



「5つ上の幼馴染で、いま、王室騎士団にいるの。」

ヴァイオレットは、昼休みのカフェできらきらと顔を輝かせた。

ヴァイオレットの好きな人は、セオドア・カールトン様といい、ヘレフォード領の隣領のカールトン子爵家の三男で、騎士として身を立てるため、厳しい修練ののち国内最難関といわれる王室騎士団に入団したそうだ。

「セオドア兄様は、優しくて努力家で頭も良くて、しかもカッコよくて、本当にすごいの!」

昼食を取るのも忘れ、ヴァイオレットは頬を上気させてそう熱弁する。

セオドア様との出会いや幼い頃の思い出など、彼がいかにカッコよく素晴らしいかという話を次から次へと、まるで終わりのない物語を話すかのように続ける。

そんなヴァイオレットの姿が可愛くて、アリシアはうんうんと楽しげに相槌を打つ。

「それで、セオドア様はヴァイオレットの気持ちはもう知ってるの?」

告白したの?とアリシアが尋ねるとヴァイオレットは真っ赤な顔をして答えた。

「まだよっ。騎士団の仕事に慣れるのに大変な兄様の気持ちを煩わせるのはダメだと思って。それに気持ちを伝えるなんて、そんなっ」

恥ずかしいとヴァイオレットは言う。

ああ、本当に恋する乙女だ。可愛いなあ。
思わず顔がにまにましてしまう。

「僕だったら、君から告白されたら2つ返事で了承するのになあ。」

恋バナに夢中になっていたアリシアとヴァイオレットのテーブルに、ティーカップの載ったトレイをそれは自然に置いてジェームスが椅子に腰掛けた。勿論ヴァイオレットのすぐ隣に。何処からか、きゃーという女子生徒の歓声がした。
 
ヴァイオレットをちらと見ると、それはそれは美人が台無しな顔をしていた。
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