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第2章
47.馬に乗ってみよう
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ヘビーボアを討伐して屋敷に戻ってきた翌日、勇馬は乗馬の練習をするために厩舎に来ていた。
「すごいたくさんいるな。これ全部世話をするのは大変そうだ」
「ですね。でも、私が乗れるようになれるのかな……」
ズラッと並ぶ馬に勇馬が感心すると、莉奈が不安そうに呟いた。
「大丈夫ですよ。私も最初は苦労しましたけど、今では1人で乗ることもできますし。誰でも練習すればきっと乗れるようになります」
「そうそう、簡単簡単! まっ、ボクはあまり苦労しなかったけどねっ!」
それを見たフィーレとルティーナが、それぞれ励ましと自慢を送る。
「そうでしたか? ルティーナ様も初めは落馬しそうになって服が引っ掛かって半裸の状態に――」
「わああぁぁーっ!! ティステ! 余計なことは言わなくていいから!!」
ルティーナは、顔を真っ赤に染め上げてティステを制止する。どうやら、ちょっとだけいい顔をしたかったようだ。
「ふふ、でも本当に落馬には気を付けてくださいね。戦の最中ですと、落馬してそのまま馬に踏まれて……という事故も多いみたいです。それを回避するのにも、ユウマが見せてくれた鐙がきっと役に立つと思います」
「そうだなぁ。落ちて馬に踏まれるなんて、運が悪ければ骨を折る程度じゃすまないもんな。それに、裸にもなりたくないしな」
「ユ~ウ~マ~~っ!!」
ぽかぽかとを叩くルティーナを、勇馬は笑いながら頭を撫でた。
「ははっ、冗談冗談、悪かったって」
「もうっ! 早く終わらせてよ? 冒険者組合に行かなきゃいけないんだからねっ!」
「なんだ、本当に行くつもりなのか?」
「そう言ったじゃん。冒険者になってユウマ達と一緒に依頼をこなすんだよ。ね、フィーちゃん?」
「ルティの言う通りです。以前より冒険者に興味はありましたし、これもいい機会です。領主の娘として恥じないように、しっかり依頼をこなさないといけません」
「領主の娘としてねぇ……まぁ、そういうことならさっそく馬に乗ってみようか」
ティステとリズベットが1頭ずつ連れてきた馬に鐙を取り付け、勇馬は馬を撫でてから飛び乗った。
(あ――)
手綱を握った瞬間、勇馬は「あ、これいけるわ」と、自身の能力が発動したことを確信した。
勇馬の持つ能力というものがどこまで適用範囲なのかいまいちわかってないが、少なくとも騎乗という技術は戦闘あるいはそれに近いものという認識なのだろう。
勇馬は、初めて手綱を握ったとは思えないほど、滑らかに馬を走らせ始めた。
「あれ!? ユウマ乗れるんじゃんっ!!」
何を期待していたのか、それまでは口に手を当てて笑いを堪えていたルティーナが、颯爽と馬を走らせる勇馬の姿に驚きを露にした。
「あれほど馬と一体になってるとは……ユウマ様は経験者だったのではないですか?」
「でも、ユウマ本人は否定してるわよ? ――あっ、もしかして、あれもユウマの力なのかな」
「うん、そうかも。勇馬さんは練習したいって言ってたし、手綱を掴んだら雰囲気変わったから、フィーレちゃんの言う通りかも」
フィーレ達がそんな話をしていると、勇馬はぐるっと馬を走らせて戻ってきた。
「ふぅーっ、乗れると楽しいなこれ!」
勇馬は馬から降りると、可愛がるように「おー、よしよし。偉かったなぁ」と馬を撫でた。
ティステの後ろに乗っているだけの時にはわからなかったが、馬と一心同体になって走り、風を感じるのが爽快感抜群でたまらなかったのだ。
「これならもっと全然乗ってられるなぁ」
「あの、勇馬さん、やっぱりそれも能力発動した感じですか?」
「ん? ああ、そうだな。手綱を掴んだ瞬間、『あ、これいける』って感じたんだよ。てっきり武器だけかと思ってたけど、こういうのもいけるみたいだな」
口には出さなかったが、勇馬はクレイオール邸にあったゼロ戦にも乗れるかもしれないと思っていた。もしそうであれば、この前の砦での戦いなど、一瞬で決着がついていただろうと。
「すごいですね! 私はどうだろう。勇馬さんとは少し違う能力みたいですし、もしかしたらダメかも……」
「試しにリナも乗ってみなよ。もしかしたらユウマみたいに乗れちゃうかもしれないよ!」
「頑張ってください、リナさん!」
「うん、頑張る!」
莉奈は勇馬とは違うもう1頭の馬に跨り、「わわっ!」と声を上げて少しふらついた。
「どうだ? 大丈夫そうか?」
「いえっ、これは……ダメっぽいですね。全然上手に騎乗できる気がしません……!」
莉奈は勇馬の時とは違い、馬を完全に制御している感じもなく、落ちないように必死に手綱を掴んでるといった感じだった。
どうやら莉奈は勇馬と違ってM24しか扱うことができないようだ。
「残念だな。そうなると、莉奈は頑張って乗れるようになるしかないなぁ」
「うぅ……頑張ります……!」
「私がついていくので、まずはゆっくり歩いてみましょう」
ティステが馬の横につき、莉奈が落馬しないように一緒に歩き出した。
勇馬がもう1度馬を走らせようかと考えていると、
「あのぅ……」
それまで大人しかったリズベットがおずおずお手を上げた。
「能力って、なんの話ですか?」
「あ」
そういえば、この中でリズベットだけ勇馬や莉奈がどういった存在か教えていなかったことを思い出した。
当然、それを知らない彼女の前で当たり前のようにその話をしていたので、リズベットが疑問に思うのも無理はない。
どう答えるべきかと考えていると、
「ユウマ、リズはこれからも一緒に行動することが多いですし、口も堅いので話してもいいかもしれません」
「そうそう、むしろそのほうがこうやって変に隠す必要もなくなるし、いっそ話しちゃったほうが楽かもよ?」
「むぅ……それもそうか」
フィーレとルティーナの意見を聞き、勇馬もそのほうが取り繕う必要もなくなるのでいいかもしれないと、莉奈が練習している間にこれまでのことを話すことにした。
一通り勇馬の説明を聞いたリズベットは、
「つまり――これからもあのおいしいものを食べられるってことですねっ!」
と少しズレた感想を、嬉しそうに満面の笑みで言うのだった。
「すごいたくさんいるな。これ全部世話をするのは大変そうだ」
「ですね。でも、私が乗れるようになれるのかな……」
ズラッと並ぶ馬に勇馬が感心すると、莉奈が不安そうに呟いた。
「大丈夫ですよ。私も最初は苦労しましたけど、今では1人で乗ることもできますし。誰でも練習すればきっと乗れるようになります」
「そうそう、簡単簡単! まっ、ボクはあまり苦労しなかったけどねっ!」
それを見たフィーレとルティーナが、それぞれ励ましと自慢を送る。
「そうでしたか? ルティーナ様も初めは落馬しそうになって服が引っ掛かって半裸の状態に――」
「わああぁぁーっ!! ティステ! 余計なことは言わなくていいから!!」
ルティーナは、顔を真っ赤に染め上げてティステを制止する。どうやら、ちょっとだけいい顔をしたかったようだ。
「ふふ、でも本当に落馬には気を付けてくださいね。戦の最中ですと、落馬してそのまま馬に踏まれて……という事故も多いみたいです。それを回避するのにも、ユウマが見せてくれた鐙がきっと役に立つと思います」
「そうだなぁ。落ちて馬に踏まれるなんて、運が悪ければ骨を折る程度じゃすまないもんな。それに、裸にもなりたくないしな」
「ユ~ウ~マ~~っ!!」
ぽかぽかとを叩くルティーナを、勇馬は笑いながら頭を撫でた。
「ははっ、冗談冗談、悪かったって」
「もうっ! 早く終わらせてよ? 冒険者組合に行かなきゃいけないんだからねっ!」
「なんだ、本当に行くつもりなのか?」
「そう言ったじゃん。冒険者になってユウマ達と一緒に依頼をこなすんだよ。ね、フィーちゃん?」
「ルティの言う通りです。以前より冒険者に興味はありましたし、これもいい機会です。領主の娘として恥じないように、しっかり依頼をこなさないといけません」
「領主の娘としてねぇ……まぁ、そういうことならさっそく馬に乗ってみようか」
ティステとリズベットが1頭ずつ連れてきた馬に鐙を取り付け、勇馬は馬を撫でてから飛び乗った。
(あ――)
手綱を握った瞬間、勇馬は「あ、これいけるわ」と、自身の能力が発動したことを確信した。
勇馬の持つ能力というものがどこまで適用範囲なのかいまいちわかってないが、少なくとも騎乗という技術は戦闘あるいはそれに近いものという認識なのだろう。
勇馬は、初めて手綱を握ったとは思えないほど、滑らかに馬を走らせ始めた。
「あれ!? ユウマ乗れるんじゃんっ!!」
何を期待していたのか、それまでは口に手を当てて笑いを堪えていたルティーナが、颯爽と馬を走らせる勇馬の姿に驚きを露にした。
「あれほど馬と一体になってるとは……ユウマ様は経験者だったのではないですか?」
「でも、ユウマ本人は否定してるわよ? ――あっ、もしかして、あれもユウマの力なのかな」
「うん、そうかも。勇馬さんは練習したいって言ってたし、手綱を掴んだら雰囲気変わったから、フィーレちゃんの言う通りかも」
フィーレ達がそんな話をしていると、勇馬はぐるっと馬を走らせて戻ってきた。
「ふぅーっ、乗れると楽しいなこれ!」
勇馬は馬から降りると、可愛がるように「おー、よしよし。偉かったなぁ」と馬を撫でた。
ティステの後ろに乗っているだけの時にはわからなかったが、馬と一心同体になって走り、風を感じるのが爽快感抜群でたまらなかったのだ。
「これならもっと全然乗ってられるなぁ」
「あの、勇馬さん、やっぱりそれも能力発動した感じですか?」
「ん? ああ、そうだな。手綱を掴んだ瞬間、『あ、これいける』って感じたんだよ。てっきり武器だけかと思ってたけど、こういうのもいけるみたいだな」
口には出さなかったが、勇馬はクレイオール邸にあったゼロ戦にも乗れるかもしれないと思っていた。もしそうであれば、この前の砦での戦いなど、一瞬で決着がついていただろうと。
「すごいですね! 私はどうだろう。勇馬さんとは少し違う能力みたいですし、もしかしたらダメかも……」
「試しにリナも乗ってみなよ。もしかしたらユウマみたいに乗れちゃうかもしれないよ!」
「頑張ってください、リナさん!」
「うん、頑張る!」
莉奈は勇馬とは違うもう1頭の馬に跨り、「わわっ!」と声を上げて少しふらついた。
「どうだ? 大丈夫そうか?」
「いえっ、これは……ダメっぽいですね。全然上手に騎乗できる気がしません……!」
莉奈は勇馬の時とは違い、馬を完全に制御している感じもなく、落ちないように必死に手綱を掴んでるといった感じだった。
どうやら莉奈は勇馬と違ってM24しか扱うことができないようだ。
「残念だな。そうなると、莉奈は頑張って乗れるようになるしかないなぁ」
「うぅ……頑張ります……!」
「私がついていくので、まずはゆっくり歩いてみましょう」
ティステが馬の横につき、莉奈が落馬しないように一緒に歩き出した。
勇馬がもう1度馬を走らせようかと考えていると、
「あのぅ……」
それまで大人しかったリズベットがおずおずお手を上げた。
「能力って、なんの話ですか?」
「あ」
そういえば、この中でリズベットだけ勇馬や莉奈がどういった存在か教えていなかったことを思い出した。
当然、それを知らない彼女の前で当たり前のようにその話をしていたので、リズベットが疑問に思うのも無理はない。
どう答えるべきかと考えていると、
「ユウマ、リズはこれからも一緒に行動することが多いですし、口も堅いので話してもいいかもしれません」
「そうそう、むしろそのほうがこうやって変に隠す必要もなくなるし、いっそ話しちゃったほうが楽かもよ?」
「むぅ……それもそうか」
フィーレとルティーナの意見を聞き、勇馬もそのほうが取り繕う必要もなくなるのでいいかもしれないと、莉奈が練習している間にこれまでのことを話すことにした。
一通り勇馬の説明を聞いたリズベットは、
「つまり――これからもあのおいしいものを食べられるってことですねっ!」
と少しズレた感想を、嬉しそうに満面の笑みで言うのだった。
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