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第1章
17.クレイア
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検証方法について、さらにどうしようかと考えていると、扉がノックされ声が掛かった。
「どうぞー」
「失礼いたします」
「「失礼しますっ!」」
扉が開き、ソフィとララとルルの3人が一礼して部屋に入ってきた。今ではすっかり見慣れた3人組だ。
エルフのソフィさんは相変わらず笑顔1つ見せないけど、その美貌は人間種とは違うなにかを感じるし、ララとルルの2人はメイド服を身に纏うことによって、より愛らしさが増したように思えた。
そうして勇馬がまじまじと2人を愛でる気持ちで眺めてると、目が合い、2人ともカアッと顔を赤らめて耳をイカ耳のようにピンとさせてしまった。
(おっと、恥ずかしがらせちゃったかな?)
「ユウマ様、フィーレ様とルティーナ様のお支度が整いました。ホールにてお待ちしております」
「わかりました」
ソフィ達に手伝ってもらってもう少し検証したかったが、ウィンドウを閉じてホールへと向かうことにした。
ララとルルの2人はテレテレとしており、彼女達には勇馬が使徒だと伝えていないし、フィーレ達を待たせるのも気が引けた。
ホールに移動すると、フィーレとルティーナ、フランの他に、ティステ達護衛隊が待機していた。
「すみません、お待たせしました」
「いえ、私達のほうこそお待たせしてしまってすみません」
フィーレとルティーナは先ほど着ていたフリフリとしたドレスではなく、一見すると町娘のような服装に着替えていたが、2人の可愛らしい容姿と相まって、見事なギャップ萌えを体現していた。
「皆さん、今後ともよろしくお願いします」
勇馬が護衛隊の面々に向かって頭を軽く下げると、護衛隊員達は左の手の平を胸に当てた。どうやら敬礼のポーズのようだ。
「今日は全員で行くんですか?」
勇馬がフィーレに聞く。
ここには、ソフィ達も入れれば12人もいる。これだけの人数で出歩けば、かなり目立ちそうだ。
「いえ、行くのは私達姉妹と護衛隊員の2人――ティステとリズベットです。街ではユウマ様とルティーナと私で移動します。護衛隊員の2人には、目立たないよう少し離れた場所で警護させます」
「といっても、私達は何も隠さないから街の人にすぐ気付かれちゃうと思うけどね」
あははと笑うルティーナ。
勇馬の後ろでは、フィーレの言葉にルルがかなりショックを受けていた。
「お2人は、普段その格好で街へ行ったりしてるんですか?」
「はい。特に変装もしないですし、街の人ともよくお話したりするので、こう見えて街中は結構詳しいんですよ?」
フィーレは少し自慢げに言う。
「私も姉とよく行ってるので、わからない事があったら何でも聞いてくださいねっ」
ルティーナも自信満々だ。
この様子なら、道案内は2人に任せておけば問題なさそうだ。
「わかりました。よろしくお願いしますね、フィーレさん、ルティーナさん」
ルルは勇馬に何か言いたそうに口をあぐあぐさせていたが、ララに何か言われて肩を落としていた。
ティステとリズベットの護衛隊員は馬車には乗らず、それぞれ馬に乗って向かうようだ。
勇馬達はソフィ達に見送られ、屋敷を馬車で出発するのだった。
「ユウマ様、まずは商店街からご案内します。貴族街の隣にあるので治安もいいですし、市民や色々な場所から人が集まるので活気がとてもありますよ」
対面に座るフィーレが行き先を説明してくれる。
彼女の隣りには、ルティーナが楽しそうな顔で座っていた。まるで、遊びに連れてってもらう子供のようだ。
「いいですね、どんなものがあるのか興味もありますし……それはそうと、フィーレさん」
フィーレは小首を傾げて「はい」と返事する。
「色々と思うところはあるとは思うんですけど、出来れば様付けは勘弁して欲しいなぁと。どうにも慣れなくて、なんか変な感じなんですよね」
勇馬は苦笑いしながらお願いする。
キールは様付けをやめてくれたが、フィーレやルティーナは変わらず勇馬のことを様付けしていた。
「それは……ユウマ様は中央諸国の大貴族となっていますし、私達がユウマ様とお呼びするのは当然かと……」
使徒でも大貴族でも立場的にはキール以上になるので、フィーレからすると勇馬の提案は恐れ多いのだった。
それもそのはず、貴族のなんたるかを学んできた彼女からすれば、そう思うのは何ら不思議なことではなかった。
「いやまあ、わかってはいるんですけどね。ただどうしても馴染めなくて……。正直、ソフィさんやティステさん達にそう呼ばれるのも気不味いんですよねえ」
「じゃあじゃあ、ユウマって呼んでもいいの!?」
ルティーナが目を輝かせて身を乗り出した。
「も、もちろん! それくらいのほうが変に壁もないし気楽かな」
「ダダダ、ダメに決まってるじゃないですか!? そんなこ、ここ、恋人同士みたい……というか失礼、そう失礼ですよっ!!」
勇馬を呼び捨てするルティーナに、フィーレが大慌てで諌める。
「えー、でもユウマはいいって……」
「ルティ?」
「あぅ……」
フィーレはルティーナに笑顔を向ける。
だがそれは底冷えするような声と貼り付けただけの笑顔で、ルティーナは口籠ってしまう。これは本気で怒ってる時の顔だ、とルティーナはぶるりと震えるのだった。
「わかったよぅ……じゃーなんて呼ぼうかなぁ……」
「いや、普通に呼び捨てで構わないですよ? 全然気にしませんし、その方がいいかも」
ルティーナは、途端にぱぁっと明るい表情になった。
「フィーレさんもそう呼んでくれていいですよ」
「わ、私が呼び捨てだなんてそんなっ……」
フィーレは、ほんのり朱くなった頬を両手で覆った。
あわあわしながら照れているようだ。
「ボク……じゃなくて、私のことはルティって呼んでくださいねっ! 敬語もなしでっ」
「うん、わかったよ。ルティって呼ぶね。ルティも敬語じゃなくていいし、俺の前ではいつも通りにしてていいよ」
それを聞いたルティーナは、嬉しそうな顔で元気よく返事をした。
フィーレは2人のやり取りを見て、「あぅ……いいなぁ……」と声を漏らし、妹の積極的な性格をこの時ばかりは羨ましく思った。
勇馬はそんな2人の様子を見て、ようやく少しは打ち解けたかなと馬車の外に目を向けるのだった。
クレイアの街はクレイオール領における、最大の要所となっている。
そのため貴族の多くはこの街に住み、平民や職人、商人など多くの人が区分けされた中で生活している。
現代日本のように高い建物は全然なく、道路も舗装されていないが、馬車の外からは人々の活気溢れる声が飛び交っていた。
「着いたよ、ユウマ!」
馬車は、貴族街を抜けて商店街に差し掛かったところで停止した。
ルティーナは、勇馬にひと声掛けて馬車から飛び降りた。
もうすっかり打ち解けたようだ。
「もうルティったら……すみません、ユウマさん」
「いえ、よっぽど楽しみだったんですかね」
馬車を降りたルティーナは、店の前に出ている商品をもう見始めていた。
結局、フィーレが勇馬に対してルティーナのように接してくることはなかったので、お互いそのままだった。
「そうですね、あの子にとって一番の楽しみでしょうから」
「フィーレさんも?」
フィーレは「うーん」と考え、
「私も小物とかお洋服とか、お買い物は好きですね」
少し照れたような笑った。
「じゃあ折角だし、色々見て回りましょうかね」
「はい!」
勇馬とフィーレも馬車を降り、ルティーナの下へ向かうのだった。
「どうぞー」
「失礼いたします」
「「失礼しますっ!」」
扉が開き、ソフィとララとルルの3人が一礼して部屋に入ってきた。今ではすっかり見慣れた3人組だ。
エルフのソフィさんは相変わらず笑顔1つ見せないけど、その美貌は人間種とは違うなにかを感じるし、ララとルルの2人はメイド服を身に纏うことによって、より愛らしさが増したように思えた。
そうして勇馬がまじまじと2人を愛でる気持ちで眺めてると、目が合い、2人ともカアッと顔を赤らめて耳をイカ耳のようにピンとさせてしまった。
(おっと、恥ずかしがらせちゃったかな?)
「ユウマ様、フィーレ様とルティーナ様のお支度が整いました。ホールにてお待ちしております」
「わかりました」
ソフィ達に手伝ってもらってもう少し検証したかったが、ウィンドウを閉じてホールへと向かうことにした。
ララとルルの2人はテレテレとしており、彼女達には勇馬が使徒だと伝えていないし、フィーレ達を待たせるのも気が引けた。
ホールに移動すると、フィーレとルティーナ、フランの他に、ティステ達護衛隊が待機していた。
「すみません、お待たせしました」
「いえ、私達のほうこそお待たせしてしまってすみません」
フィーレとルティーナは先ほど着ていたフリフリとしたドレスではなく、一見すると町娘のような服装に着替えていたが、2人の可愛らしい容姿と相まって、見事なギャップ萌えを体現していた。
「皆さん、今後ともよろしくお願いします」
勇馬が護衛隊の面々に向かって頭を軽く下げると、護衛隊員達は左の手の平を胸に当てた。どうやら敬礼のポーズのようだ。
「今日は全員で行くんですか?」
勇馬がフィーレに聞く。
ここには、ソフィ達も入れれば12人もいる。これだけの人数で出歩けば、かなり目立ちそうだ。
「いえ、行くのは私達姉妹と護衛隊員の2人――ティステとリズベットです。街ではユウマ様とルティーナと私で移動します。護衛隊員の2人には、目立たないよう少し離れた場所で警護させます」
「といっても、私達は何も隠さないから街の人にすぐ気付かれちゃうと思うけどね」
あははと笑うルティーナ。
勇馬の後ろでは、フィーレの言葉にルルがかなりショックを受けていた。
「お2人は、普段その格好で街へ行ったりしてるんですか?」
「はい。特に変装もしないですし、街の人ともよくお話したりするので、こう見えて街中は結構詳しいんですよ?」
フィーレは少し自慢げに言う。
「私も姉とよく行ってるので、わからない事があったら何でも聞いてくださいねっ」
ルティーナも自信満々だ。
この様子なら、道案内は2人に任せておけば問題なさそうだ。
「わかりました。よろしくお願いしますね、フィーレさん、ルティーナさん」
ルルは勇馬に何か言いたそうに口をあぐあぐさせていたが、ララに何か言われて肩を落としていた。
ティステとリズベットの護衛隊員は馬車には乗らず、それぞれ馬に乗って向かうようだ。
勇馬達はソフィ達に見送られ、屋敷を馬車で出発するのだった。
「ユウマ様、まずは商店街からご案内します。貴族街の隣にあるので治安もいいですし、市民や色々な場所から人が集まるので活気がとてもありますよ」
対面に座るフィーレが行き先を説明してくれる。
彼女の隣りには、ルティーナが楽しそうな顔で座っていた。まるで、遊びに連れてってもらう子供のようだ。
「いいですね、どんなものがあるのか興味もありますし……それはそうと、フィーレさん」
フィーレは小首を傾げて「はい」と返事する。
「色々と思うところはあるとは思うんですけど、出来れば様付けは勘弁して欲しいなぁと。どうにも慣れなくて、なんか変な感じなんですよね」
勇馬は苦笑いしながらお願いする。
キールは様付けをやめてくれたが、フィーレやルティーナは変わらず勇馬のことを様付けしていた。
「それは……ユウマ様は中央諸国の大貴族となっていますし、私達がユウマ様とお呼びするのは当然かと……」
使徒でも大貴族でも立場的にはキール以上になるので、フィーレからすると勇馬の提案は恐れ多いのだった。
それもそのはず、貴族のなんたるかを学んできた彼女からすれば、そう思うのは何ら不思議なことではなかった。
「いやまあ、わかってはいるんですけどね。ただどうしても馴染めなくて……。正直、ソフィさんやティステさん達にそう呼ばれるのも気不味いんですよねえ」
「じゃあじゃあ、ユウマって呼んでもいいの!?」
ルティーナが目を輝かせて身を乗り出した。
「も、もちろん! それくらいのほうが変に壁もないし気楽かな」
「ダダダ、ダメに決まってるじゃないですか!? そんなこ、ここ、恋人同士みたい……というか失礼、そう失礼ですよっ!!」
勇馬を呼び捨てするルティーナに、フィーレが大慌てで諌める。
「えー、でもユウマはいいって……」
「ルティ?」
「あぅ……」
フィーレはルティーナに笑顔を向ける。
だがそれは底冷えするような声と貼り付けただけの笑顔で、ルティーナは口籠ってしまう。これは本気で怒ってる時の顔だ、とルティーナはぶるりと震えるのだった。
「わかったよぅ……じゃーなんて呼ぼうかなぁ……」
「いや、普通に呼び捨てで構わないですよ? 全然気にしませんし、その方がいいかも」
ルティーナは、途端にぱぁっと明るい表情になった。
「フィーレさんもそう呼んでくれていいですよ」
「わ、私が呼び捨てだなんてそんなっ……」
フィーレは、ほんのり朱くなった頬を両手で覆った。
あわあわしながら照れているようだ。
「ボク……じゃなくて、私のことはルティって呼んでくださいねっ! 敬語もなしでっ」
「うん、わかったよ。ルティって呼ぶね。ルティも敬語じゃなくていいし、俺の前ではいつも通りにしてていいよ」
それを聞いたルティーナは、嬉しそうな顔で元気よく返事をした。
フィーレは2人のやり取りを見て、「あぅ……いいなぁ……」と声を漏らし、妹の積極的な性格をこの時ばかりは羨ましく思った。
勇馬はそんな2人の様子を見て、ようやく少しは打ち解けたかなと馬車の外に目を向けるのだった。
クレイアの街はクレイオール領における、最大の要所となっている。
そのため貴族の多くはこの街に住み、平民や職人、商人など多くの人が区分けされた中で生活している。
現代日本のように高い建物は全然なく、道路も舗装されていないが、馬車の外からは人々の活気溢れる声が飛び交っていた。
「着いたよ、ユウマ!」
馬車は、貴族街を抜けて商店街に差し掛かったところで停止した。
ルティーナは、勇馬にひと声掛けて馬車から飛び降りた。
もうすっかり打ち解けたようだ。
「もうルティったら……すみません、ユウマさん」
「いえ、よっぽど楽しみだったんですかね」
馬車を降りたルティーナは、店の前に出ている商品をもう見始めていた。
結局、フィーレが勇馬に対してルティーナのように接してくることはなかったので、お互いそのままだった。
「そうですね、あの子にとって一番の楽しみでしょうから」
「フィーレさんも?」
フィーレは「うーん」と考え、
「私も小物とかお洋服とか、お買い物は好きですね」
少し照れたような笑った。
「じゃあ折角だし、色々見て回りましょうかね」
「はい!」
勇馬とフィーレも馬車を降り、ルティーナの下へ向かうのだった。
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