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第3章 『ダンジョンとポーター』
20.達成感
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「さてさて、何が入ってますかー?」
ウキウキした様子のアビは宝箱を開けて、
「おおー、ローブが入ってるのですよー!」
嬉しそうにローブを掲げた。
「それの価値は高いのか?」
「ギルドで見てもらわないとわかりませんけど、なんたって『不死の宵闇』のダンジョンボスからのドロップですよ? きっとすごいに決まってるですよー」
「へー、とりあえずギルドに持っていってみるか。ダンジョン踏破の報告も必要だろうし」
「そうしましょー。この性悪ダンジョンのことを報告するのですよー」
「性悪ダンジョン?」
「確かに、このダンジョンは性格が悪いといえるかもしれませんね」
俺が疑問を返すと、メルが説明してくれる。
「『不死の宵闇』の不死に注目すればアンテッドはいそうな気もしますが、このダンジョンボスのレイス以外にはアンテッド系はいませんでした。きっと、このダンジョンに潜っている冒険者は、誰一人もうアンテッドのことは頭にないかもしれません」
「ああ、なるほど。それで最後には物理と魔法を無効化するレイス……確かに酷いハメ殺しだな、これは」
俺が《特殊スキル:聖なる癒し》を使えたからよかったものの、普通の冒険者ならまず手詰まりになってしまうだろう。
なんともいやらしいダンジョンだ。
「アルゼがいてくれてアビは助かったのですよー。アビの勘はやっぱり当たるのですよ?」
「ふふ、そうですね」
えっへんと、胸を反らすアビ。
まぁ確かに彼女の勘は正しかったということになる。金も稼げたろうし、一緒に旅をする仲間もできた。
もちろん俺たちにとってもだが、この街に来て、ダンジョンに潜ってよかったと思う。
「よし、地上へ戻ろうか……って言っても、どうやって戻ればいいんだ?」
「また、来た道を戻るのでしょうか?」
「あそこにある『転移石』に乗れば移動できるのですよー」
「へー、そんな便利なものがあったのか。よし、それじゃあ戻ろう」
「はい!」
「はいですよー」
俺たちはボス部屋にあった『転移石』という石の上に乗り、地上へと戻るのだった。
◆◇◆
俺たちがダンジョン入口まで転移されると、
「え、今あんたたちそこから現れた……よな? ってことは、あんたらもしかして……ダンジョンクリアしたのか?」
たまたますぐそばにいた冒険者パーティーの男に声を掛けられた。
どうやら、俺たちが転移された場所はダンジョンを攻略した者たちだけが転移できるところだったみたいだ。
「ああ、そうだ」
俺が男に短く返すと、
「……う」
「う?」
「うおおおぉぉぉぉぉおおお――っっ!!!」
「うおっ!?」
「あぅっ」
「ひぅ……」
いきなり男が雄叫びを上げたのだった。
あまりにもうるさくて、俺たちは思わず耳を塞いだ。
「なんだなんだ?」
「おい、トニー! 急にデケェ声出すんじゃねーよ!」
トニーと呼ばれた男の突然の大声に、周りの冒険者も反応し出す。
俺はなんだか面倒なことになりそうだと思い、さっさとその場を離れようとするも、
「こいつらがダンジョンをクリアしたぞ――ッ!!」
がっちりと肩を掴まれ、再びとんでもない声量で叫んだ。
「は? 何言ってんだあの馬鹿は」
「いや待て、あの『転移石』……光ってないか?」
「え、え? てことは……マジ?」
周囲の冒険者の視線がどんどん俺たちに集まり、ざわざわとにわかに盛り上がっていく。
俺は今すぐにでも逃げ出したい気持ちだったが、どうにもそんなことは出来なさそうな雰囲気が漂ってる。
「お、おい、アンタ……この馬鹿が言ってることは本当なのか……?」
すると、俺たちを遠巻きに見てた男の1人が再び俺たちに確認してきた。
「ほんとなのですよー! アルゼがダンジョンボスのレイスをパパッと倒しちゃったのですよ?」
「レイス!? ダンジョンボスはレイスなのか……ってか、マジでクリアしたのかよ! すごいなアンタ!!」
「レイス倒したって本当かよ!?」
「すげぇ……俺たちなんて6層の突破すら諦めてるのに……」
至る所で「ダンジョンクリアだってよ!」とか「マジかよ!? このダンジョンクリアできるやついるのかよ!?」と、俺たちがダンジョンを踏破したことがどんどん伝わっていく。
そのうちに、今日初めて会ったやつらにまで「おめでとう!」、「ほんとすごいよ!」と、なぜか手まで握られて祝福されてしまった。
「なんだかすごいことになってきましたね……」
「この街唯一のダンジョンが初めて踏破されたのですよ? 盛り上がらないわけがないのですよー」
「いったいアルゼ様はどうなっちゃうのでしょう……」
「しばらくはいろんな人間が寄ってくるでしょうねー。メルも気を付けないと、他の雌にアルゼを取られちゃうのですよ?」
「わ、私はアルゼ様の奴隷ですから! アルゼ様が他の方を望むなら……」
「おーおー、いじらしいですねー。メルがいいのでしたらアビも番として立候補するのですよー?」
「えぇ!?」
後ろでメルたちがのんきにそんな会話をしていた。
俺は目の前に広がる冒険者たちの様子を見て、これまで感じたことのない達成感に胸がいっぱいになるのだった。
ウキウキした様子のアビは宝箱を開けて、
「おおー、ローブが入ってるのですよー!」
嬉しそうにローブを掲げた。
「それの価値は高いのか?」
「ギルドで見てもらわないとわかりませんけど、なんたって『不死の宵闇』のダンジョンボスからのドロップですよ? きっとすごいに決まってるですよー」
「へー、とりあえずギルドに持っていってみるか。ダンジョン踏破の報告も必要だろうし」
「そうしましょー。この性悪ダンジョンのことを報告するのですよー」
「性悪ダンジョン?」
「確かに、このダンジョンは性格が悪いといえるかもしれませんね」
俺が疑問を返すと、メルが説明してくれる。
「『不死の宵闇』の不死に注目すればアンテッドはいそうな気もしますが、このダンジョンボスのレイス以外にはアンテッド系はいませんでした。きっと、このダンジョンに潜っている冒険者は、誰一人もうアンテッドのことは頭にないかもしれません」
「ああ、なるほど。それで最後には物理と魔法を無効化するレイス……確かに酷いハメ殺しだな、これは」
俺が《特殊スキル:聖なる癒し》を使えたからよかったものの、普通の冒険者ならまず手詰まりになってしまうだろう。
なんともいやらしいダンジョンだ。
「アルゼがいてくれてアビは助かったのですよー。アビの勘はやっぱり当たるのですよ?」
「ふふ、そうですね」
えっへんと、胸を反らすアビ。
まぁ確かに彼女の勘は正しかったということになる。金も稼げたろうし、一緒に旅をする仲間もできた。
もちろん俺たちにとってもだが、この街に来て、ダンジョンに潜ってよかったと思う。
「よし、地上へ戻ろうか……って言っても、どうやって戻ればいいんだ?」
「また、来た道を戻るのでしょうか?」
「あそこにある『転移石』に乗れば移動できるのですよー」
「へー、そんな便利なものがあったのか。よし、それじゃあ戻ろう」
「はい!」
「はいですよー」
俺たちはボス部屋にあった『転移石』という石の上に乗り、地上へと戻るのだった。
◆◇◆
俺たちがダンジョン入口まで転移されると、
「え、今あんたたちそこから現れた……よな? ってことは、あんたらもしかして……ダンジョンクリアしたのか?」
たまたますぐそばにいた冒険者パーティーの男に声を掛けられた。
どうやら、俺たちが転移された場所はダンジョンを攻略した者たちだけが転移できるところだったみたいだ。
「ああ、そうだ」
俺が男に短く返すと、
「……う」
「う?」
「うおおおぉぉぉぉぉおおお――っっ!!!」
「うおっ!?」
「あぅっ」
「ひぅ……」
いきなり男が雄叫びを上げたのだった。
あまりにもうるさくて、俺たちは思わず耳を塞いだ。
「なんだなんだ?」
「おい、トニー! 急にデケェ声出すんじゃねーよ!」
トニーと呼ばれた男の突然の大声に、周りの冒険者も反応し出す。
俺はなんだか面倒なことになりそうだと思い、さっさとその場を離れようとするも、
「こいつらがダンジョンをクリアしたぞ――ッ!!」
がっちりと肩を掴まれ、再びとんでもない声量で叫んだ。
「は? 何言ってんだあの馬鹿は」
「いや待て、あの『転移石』……光ってないか?」
「え、え? てことは……マジ?」
周囲の冒険者の視線がどんどん俺たちに集まり、ざわざわとにわかに盛り上がっていく。
俺は今すぐにでも逃げ出したい気持ちだったが、どうにもそんなことは出来なさそうな雰囲気が漂ってる。
「お、おい、アンタ……この馬鹿が言ってることは本当なのか……?」
すると、俺たちを遠巻きに見てた男の1人が再び俺たちに確認してきた。
「ほんとなのですよー! アルゼがダンジョンボスのレイスをパパッと倒しちゃったのですよ?」
「レイス!? ダンジョンボスはレイスなのか……ってか、マジでクリアしたのかよ! すごいなアンタ!!」
「レイス倒したって本当かよ!?」
「すげぇ……俺たちなんて6層の突破すら諦めてるのに……」
至る所で「ダンジョンクリアだってよ!」とか「マジかよ!? このダンジョンクリアできるやついるのかよ!?」と、俺たちがダンジョンを踏破したことがどんどん伝わっていく。
そのうちに、今日初めて会ったやつらにまで「おめでとう!」、「ほんとすごいよ!」と、なぜか手まで握られて祝福されてしまった。
「なんだかすごいことになってきましたね……」
「この街唯一のダンジョンが初めて踏破されたのですよ? 盛り上がらないわけがないのですよー」
「いったいアルゼ様はどうなっちゃうのでしょう……」
「しばらくはいろんな人間が寄ってくるでしょうねー。メルも気を付けないと、他の雌にアルゼを取られちゃうのですよ?」
「わ、私はアルゼ様の奴隷ですから! アルゼ様が他の方を望むなら……」
「おーおー、いじらしいですねー。メルがいいのでしたらアビも番として立候補するのですよー?」
「えぇ!?」
後ろでメルたちがのんきにそんな会話をしていた。
俺は目の前に広がる冒険者たちの様子を見て、これまで感じたことのない達成感に胸がいっぱいになるのだった。
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