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第1章 『2度の追放と奴隷少女』
3.奴隷商
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『《特殊スキル:大喰らい》が発動し、《特殊スキル:聖なる癒し》とスキル《威圧》《爪撃》を獲得しました。レベルがアップしました』
「よっし!」
レベルは今回ので一気に3つも上がり、なんとレベル9になっていた。
スキルも『一般スキル』を2つも手に入れることができた。
そして――、
「――《聖なる癒し》!」
ホーリーベアから入手した《特殊スキル:聖なる癒し》によって、血が流れていた胸はすっかり治ってしまった。
「これはすごいな……。ただの回復スキルだけでもレアなのに、《聖なる癒し》なんて使えても教皇か聖女くらいなんじゃないか?」
触ってみても痛みも後遺症もまったくなく、完全に元通りだ。
『特殊スキル』を2つ持つなんて聞いたことないし、あらためて考えてみると相当やばい気がしてきた。
「数日前の俺じゃあ、とても考えられないことだよなぁ」
急な変化に戸惑いつつも、これからのことを考えるとワクワクが止まらなかった。
「よし、魔石と持っていける素材だけ回収して、冒険者ギルドに戻ろう。ホーリーベアのほとんどを捨てることになっちゃうけど……こればっかりはしかたないか。どこかで収納系のスキルが手に入れば最高なんだけどなぁ」
俺は持てるだけの素材を回収し、意気揚々と冒険者ギルドへ向かった。
◆◇◆
「ソフィさん」
「あ、こんにちは、アルゼさん。ごめんなさい、今日は清掃の依頼は全部もう他の方が引き受けちゃって……」
ギルドに戻って来た俺は、受付嬢のソフィさんに話しかけた。
ソフィさんが申し訳なさそうにするけど、今日の俺の目的はそれではない。
「いえ、今日は違うんですよ。ちょっと魔獣を討伐したので、その買取をお願いしたいんです」
「え、魔獣の討伐ですか? えと、アルゼさんがですか?」
「そうですよ」
ソフィさんが驚いた顔をした。
――まあ当たり前か。
レオたちに追放されてからは、ここのところ戦わなくてもできるドブ掃除やトイレ掃除なんていう汚れ仕事しかしてこなかった。
当然、ソフィさんも俺が『勇猛な獅子』から追放されたことは知ってるはずなので、パーティーも組まない俺が魔獣を倒したなんて信じられないんだろう。
「いったい何を討伐したんですか? 一角兎とかですか?」
おっ、なかなか鋭いな。
俺は手に持ったずた袋から、
「一角兎もですけど、コイツもですよ」
一角兎とホーリーベアの素材と魔石を取り出した。
「え!? これをアルゼさんが1人で!?」
ソフィさんが目を大きく見開いた。
きっと俺ぐらいの強さだと、運良く倒せても一角兎程度でホーリーベアなんて出てくるとは思ってもいなかったんだろう。
「そうですよ。運良く、たまたまですね」
「そ、そうなんですか……すぐに査定しますので少々お待ちください!」
そう言って、ソフィさんは急いで奥に行った。
――ふぅ、これでどうにかまとまった金も手に入りそうだな。
とりあえず、今日の宿を心配する必要はないだろう。
「お待たせしました!」
「おっと、早いですね」
「アルゼさんの初めての査定ですからね。超特急でやってもらいました!」
ニコッとソフィさんが微笑んだ。
どうやら、ちょっと気を遣わせてしまったみたいだ。
「ありがとうございます、ソフィさん」
「いえいえ、このくらい。えっと、それで金額なんですが、全部合わせて30万スレイなんですけどいかがでしょう?」
「30万!?」
思ったより全然高かった。
これだけあれば1ヶ月は何もしなくていいくらいだ。まあ、もちろんそんなことはしないが。
「はい。初めての討伐ということで、少し色を付けてもらうようにお願いしちゃいました」
てへっとかわいらしく舌を出すソフィさん。俺には彼女がまるで天使のように思えた。
「ありがとうございます! それでお願いします!」
「はい、わかりました」
俺は30万スレイを受け取り、
「そういえば、今ってパーティー募集ありますかね?」
と、確認してみた。
「えーと、あることにはあるんですが……」
「?」
なんだか歯切れが悪くなるソフィさん。
俺が不思議そうにしていると、
「――おいおい、お前みたいな能なしの詐欺師がパーティーに潜り込もうとしてんじゃねーよ」
横からガラの悪い奴らが、俺のことを嗤いながら馬鹿にしてきた。
「ちょ、ちょっとリックさん!」
「ソフィちゃんもさあ、ハッキリ教えてやんなよ。そのほうがコイツのためだって」
「……どういうことだよ?」
リックたちはニヤニヤとしており、ソフィさんは俯いて黙ってしまった。
「なんだよ、しょうがねーなー。んじゃ、俺がソフィちゃんの代わりに教えてやるよ。――この街でお前とパーティー組もうとする冒険者なんて、もういないんだよバーカ」
「な――っ!!」
「当たり前だろ。この街期待のトップランカー『勇猛な獅子』を追放されたんだぜ? お前が役に立たねえ無能だってことは、全員に知れ渡ってるんだからよ。しかもアイツラはBランクだってのに、お前は初心者に毛が生えたEランク。荷物持ちにだってもう少しマシなスキル持ったやつを雇うぜ? なあ、お前ら!」
「おう、リックの言う通りだ!」
「お前なんてここじゃ誰も必要となんてしてないぜ?」
「悪いこと言わねえから、もうおうち帰んなぼうや。おっと、もう家も追い出されたんだっけな! ぎゃははははは!!」
リックたちの大声に同調するように、俺を馬鹿にする笑い声がそこら中から聞こえてきた。
俺が元貴族ってところもあって、奴らの捌け口にはちょうどいい相手だったみたいだ。
「アルゼさん……」
ソフィさんが悲しそうな目で俺を見つめた。
「……俺は、もうこの街にいないほうがいいかもしれませんね。ソフィさん、短い間でしたけど、ありがとうございました」
俺は精一杯平常心を装ってソフィさんにそう告げ、いたたまれなくなってギルドを飛び出した。
後ろからは、俺を馬鹿にする楽しそうな笑い声が聞こえた。
◆◇◆
「はぁ……」
俺はとぼとぼと街の外に向かって歩いていた。
「金も手に入ったし、本当だったらゆっくり宿で休んでまともな飯をたらふく食べる予定だったのに」と考えていると、
「――ん? 奴隷商か……」
俺の目の前に奴隷商の館が目に入った。
この世界には普通に奴隷がいる。
前世で日本人だった俺にいいイメージはなかったが、意外とシステムが確立されており、今ではある程度理解しているつもりだ。
「さすがにこのままソロで旅するのは危険だし、パーティーも組めないならいっそ奴隷でも買ってみるか? 金なら多少手に入ったし……よし、行ってみよう」
俺は奴隷商に初めて足を踏み入れるのだった。
「よっし!」
レベルは今回ので一気に3つも上がり、なんとレベル9になっていた。
スキルも『一般スキル』を2つも手に入れることができた。
そして――、
「――《聖なる癒し》!」
ホーリーベアから入手した《特殊スキル:聖なる癒し》によって、血が流れていた胸はすっかり治ってしまった。
「これはすごいな……。ただの回復スキルだけでもレアなのに、《聖なる癒し》なんて使えても教皇か聖女くらいなんじゃないか?」
触ってみても痛みも後遺症もまったくなく、完全に元通りだ。
『特殊スキル』を2つ持つなんて聞いたことないし、あらためて考えてみると相当やばい気がしてきた。
「数日前の俺じゃあ、とても考えられないことだよなぁ」
急な変化に戸惑いつつも、これからのことを考えるとワクワクが止まらなかった。
「よし、魔石と持っていける素材だけ回収して、冒険者ギルドに戻ろう。ホーリーベアのほとんどを捨てることになっちゃうけど……こればっかりはしかたないか。どこかで収納系のスキルが手に入れば最高なんだけどなぁ」
俺は持てるだけの素材を回収し、意気揚々と冒険者ギルドへ向かった。
◆◇◆
「ソフィさん」
「あ、こんにちは、アルゼさん。ごめんなさい、今日は清掃の依頼は全部もう他の方が引き受けちゃって……」
ギルドに戻って来た俺は、受付嬢のソフィさんに話しかけた。
ソフィさんが申し訳なさそうにするけど、今日の俺の目的はそれではない。
「いえ、今日は違うんですよ。ちょっと魔獣を討伐したので、その買取をお願いしたいんです」
「え、魔獣の討伐ですか? えと、アルゼさんがですか?」
「そうですよ」
ソフィさんが驚いた顔をした。
――まあ当たり前か。
レオたちに追放されてからは、ここのところ戦わなくてもできるドブ掃除やトイレ掃除なんていう汚れ仕事しかしてこなかった。
当然、ソフィさんも俺が『勇猛な獅子』から追放されたことは知ってるはずなので、パーティーも組まない俺が魔獣を倒したなんて信じられないんだろう。
「いったい何を討伐したんですか? 一角兎とかですか?」
おっ、なかなか鋭いな。
俺は手に持ったずた袋から、
「一角兎もですけど、コイツもですよ」
一角兎とホーリーベアの素材と魔石を取り出した。
「え!? これをアルゼさんが1人で!?」
ソフィさんが目を大きく見開いた。
きっと俺ぐらいの強さだと、運良く倒せても一角兎程度でホーリーベアなんて出てくるとは思ってもいなかったんだろう。
「そうですよ。運良く、たまたまですね」
「そ、そうなんですか……すぐに査定しますので少々お待ちください!」
そう言って、ソフィさんは急いで奥に行った。
――ふぅ、これでどうにかまとまった金も手に入りそうだな。
とりあえず、今日の宿を心配する必要はないだろう。
「お待たせしました!」
「おっと、早いですね」
「アルゼさんの初めての査定ですからね。超特急でやってもらいました!」
ニコッとソフィさんが微笑んだ。
どうやら、ちょっと気を遣わせてしまったみたいだ。
「ありがとうございます、ソフィさん」
「いえいえ、このくらい。えっと、それで金額なんですが、全部合わせて30万スレイなんですけどいかがでしょう?」
「30万!?」
思ったより全然高かった。
これだけあれば1ヶ月は何もしなくていいくらいだ。まあ、もちろんそんなことはしないが。
「はい。初めての討伐ということで、少し色を付けてもらうようにお願いしちゃいました」
てへっとかわいらしく舌を出すソフィさん。俺には彼女がまるで天使のように思えた。
「ありがとうございます! それでお願いします!」
「はい、わかりました」
俺は30万スレイを受け取り、
「そういえば、今ってパーティー募集ありますかね?」
と、確認してみた。
「えーと、あることにはあるんですが……」
「?」
なんだか歯切れが悪くなるソフィさん。
俺が不思議そうにしていると、
「――おいおい、お前みたいな能なしの詐欺師がパーティーに潜り込もうとしてんじゃねーよ」
横からガラの悪い奴らが、俺のことを嗤いながら馬鹿にしてきた。
「ちょ、ちょっとリックさん!」
「ソフィちゃんもさあ、ハッキリ教えてやんなよ。そのほうがコイツのためだって」
「……どういうことだよ?」
リックたちはニヤニヤとしており、ソフィさんは俯いて黙ってしまった。
「なんだよ、しょうがねーなー。んじゃ、俺がソフィちゃんの代わりに教えてやるよ。――この街でお前とパーティー組もうとする冒険者なんて、もういないんだよバーカ」
「な――っ!!」
「当たり前だろ。この街期待のトップランカー『勇猛な獅子』を追放されたんだぜ? お前が役に立たねえ無能だってことは、全員に知れ渡ってるんだからよ。しかもアイツラはBランクだってのに、お前は初心者に毛が生えたEランク。荷物持ちにだってもう少しマシなスキル持ったやつを雇うぜ? なあ、お前ら!」
「おう、リックの言う通りだ!」
「お前なんてここじゃ誰も必要となんてしてないぜ?」
「悪いこと言わねえから、もうおうち帰んなぼうや。おっと、もう家も追い出されたんだっけな! ぎゃははははは!!」
リックたちの大声に同調するように、俺を馬鹿にする笑い声がそこら中から聞こえてきた。
俺が元貴族ってところもあって、奴らの捌け口にはちょうどいい相手だったみたいだ。
「アルゼさん……」
ソフィさんが悲しそうな目で俺を見つめた。
「……俺は、もうこの街にいないほうがいいかもしれませんね。ソフィさん、短い間でしたけど、ありがとうございました」
俺は精一杯平常心を装ってソフィさんにそう告げ、いたたまれなくなってギルドを飛び出した。
後ろからは、俺を馬鹿にする楽しそうな笑い声が聞こえた。
◆◇◆
「はぁ……」
俺はとぼとぼと街の外に向かって歩いていた。
「金も手に入ったし、本当だったらゆっくり宿で休んでまともな飯をたらふく食べる予定だったのに」と考えていると、
「――ん? 奴隷商か……」
俺の目の前に奴隷商の館が目に入った。
この世界には普通に奴隷がいる。
前世で日本人だった俺にいいイメージはなかったが、意外とシステムが確立されており、今ではある程度理解しているつもりだ。
「さすがにこのままソロで旅するのは危険だし、パーティーも組めないならいっそ奴隷でも買ってみるか? 金なら多少手に入ったし……よし、行ってみよう」
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