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48.一筋の光明

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「え、どゆこと?」

 僕は慌ててネオンのステータスを見直す。

【ランク】UR
【名前】ネオン
【二つ名】『闘魂』
【種族】人族
【レベル】902
【HP】174086/174086
【MP】15334/15334
【力】2526
【耐久】2345
【魔力】1714
【器用】1624
【敏捷】1894
【運】67

【クラス】
 体術Lv.10、回避Lv.9

固有能力ユニークスキル
 《闘撃とうげきかた

 ――うん、やっぱりレベルが900を超えてるな。

 喜ばしいことではあるんだけど、AOLではランクによるレベル上限か決められてるので、本来はありえないはずだ。
 どうしてかはわからないけど、ネオンはその壁を破ったらしい。

「ねぇ、ネオン。レベルが900超えてるんたけど、どうやって超えたの?」

「え、レベルですか? いやー、特別なにかしたってよりは、強くなるために冒険者になってあちこちで戦ってただけっすけどね」

 ネオンは照れたように頭を掻いた。

「うーん……そうすると、この世界ではサポーターのレベル上限がなくなるのかなぁ」

 ゲームの足枷がなくなったのか……よくわからないけど、考えても答えは出ないしとりあえずよしとしとこう。

「あ、そうだ。ネオン、彼らのことなんだけど――」

 僕はヨークたちを一瞥し、これまであったことをネオンに話した。

「――こンの大馬鹿野郎どもがあぁ――ッ!!」

「「ブボァッ!」」

 ネオンの鉄拳制裁によって、ヨークたちが厳しくされている。
 僕の話を聞いたネオンは、自分を兄のように慕っていた弟分たちがとんでもないことをしでかしたと拳でわからせていた。

「はぁ……まあとりあえず、その辺でもういいんじゃない? いい加減自分たちのしたことも反省したでしょ?」

「へ、へい! 申し訳ありませんでしたあぁ――っ!!」

 ネオンの教育によって原型が変わるくらい顔を腫らしたヨークたちは、僕たちに向かって土下座をしていた。

 ――ほんと、土下座になんか縁があるなぁ。

「みんなはどう?」

「ソーコ様がお許しになるのなら、私は問題ありません」

「主様に対する愚行は許しがたいものがありますが……私もアンジェと同じで、主様がそう仰るなら問題ありませんわ」

「フェルは慣れてますし、ソーコさんがそう言うのなら……でも――」

 フェルがヨークたちの前で屈んで、

「次、ソーコさんに同じことしたら――フェルは許しませんよ?」

「「は、はいいぃぃ――っ!!」」

 しっかりと釘を差した。
 ヨークたちには効果てきめんだったみたいで、冷や汗が吹き出していた。

「さ、もういいかしら?」

 どうやらまたセレンさんを待たせてたみたいだ。

「おう、サブマス。どうかしたか?」

「どうかしたかじゃないわよ。というか、あなたって本当にとんでもないわね。まさかあのオーガたちをたった1人で倒しちゃうだなんて……しかも、オーガロードもいたのに」

「ん、そうか? 俺なんて姐御に比べりゃ大したことないし、悔しいがアンジェやリリスなんかよりも弱いぞ」

「いや今の僕はそんな強くないんだけどね……」

 セレンさんが驚いた様子で僕たちを見た。

「へぇ、彼にそこまで言わせるなんて、相当すごいのね。それなら是非この街で活動してほしいわね。報酬のお話もしたいし、とりあえず冒険者ギルドに来てもらえるかしら?」

「わかりました」

 無事スタンピードを食い止めた僕たちは、一旦冒険者ギルドに戻ることとなった。


 ◆◇◆


「――ということで、へリニアにいるネオンに会いに来たんだ」

 ギルドに戻ってきた僕は、酒場でこれまでのことをネオンに話した。

「姐御、わざわざ自分のために……申し訳ありません」

 ネオンが頭を下げた。


「あなた、なんでここでずっと冒険者をしてるのですか? 我々は主を探し出すことを目的に分かれたはずでは?」

「それはそうなんだが……さっき言ったように姐御の力になりたくて冒険者になったってのは間違ってねぇ。それに、冒険者としていろんな場所に行ったり情報収集するのにもいいと思ったんだ。それに……」

 アンジェの疑問にネオンは周りを見渡し、

「この街では困ってるやつの依頼も多くてな、人助けを続けてるうちに長居することになっちまってよ……」

 その顔は街を守ってきた漢の顔だった。

「はぁ、あなたねぇ……主様を探すこと以上の優先事項なんてあるわけないじゃないの。相変わらず頭悪いの?」

「うぐ……っ! それを言われると……面目ねぇ……」

「まあまあ。ネオンはネオンなりに考えて、しかもこの街を守ってきたんでしょ? 立派なことだよ。ネオンがここで慕われて立派に成長してるところも見れたし……僕は嬉しいかな」

「あ、姐御……!」

 ネオンが瞳をうるうるとさせた。
 サポーターが自分で考えて判断し、困ってる人々を助け続けてきたというのなら、それは喜ばしいことのはずだ。
 僕はネオンを誇らしく思った。

「――そのとおりよ。彼はこの街をずっと守ってきてくれたの。事情はよくわからないけど、あまり責めないであげてほしいわ」

「セレンさん」

 サブマスのセレンさんが助け舟を出した。

「あなたがリーダーなのよね?」

「はい、ソーコといいます」

「よろしくね。もう知ってると思うけど、このギルドのサブマスをやってるわ。そうね……まずは謝らせてちょうだい」

「なにをですか?」

「あなたたちがここに来た時のことよ。話は全部聞いたわ。うちの職員……いえ、もう元職員ね。マリシアがしたことの話よ」

「あー、彼女のことですか」

 すっかり忘れてたけど、元はと言えばあのマリシアもあの時の一因だったな。
 それに、スタンピードの時に1番に逃げ出すっていう最低なこともしてたし。

「ええ。無事……といっていいのかしら? 街の外に逃げようとしてたところを不審に思った衛兵に止められてて、なんとか捕まえることができたわ。犯罪にはならないけど、今回のことはギルドの規定違反だから処罰は下されるわ。二度とまともな職には就けないでしょうね」

「そうなんですか」

 まぁ正直あの時は腹が立ったけど、今となってはどうでもいいといえばいい。
 今後、他の人たちが僕たちのような目に合わないようになるなら、それが1番いいことだろうしね。

「あ、そうそう。それとさっき少し聞こえたんだけど、あなたたちアルゴン帝国に行きたいの?」

「あ、はい。でもこの国と少し揉めてるって聞いて、それで国境も通れないとか……」

「そうね。でも、王都からなら行けるかもしれないわ」

「え!? 本当ですか!?」

 僕は、思いもよらないセレンさんからの情報に驚き、聞き返した。

「ええ。王都からなら、商人の護衛依頼を受けて国境を越えられるはずだわ」

 チヨメがいるかもしれないアルゴン帝国に行ける、一筋の光明が見えたのだった。
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