香水のせいにすればいい

弓葉

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香りの設計図

入浴剤評価室

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 調香師として働くことになってから、いろんな部屋があることを学んだ。

「入浴剤評価室……?」

 僕は香水斗に連れられて入浴剤評価室がある研究所に来た。

「ああ、ここでは調合した香料を粉末に混ぜ込むんだ。実際に使用した時の匂いを評価して、調合と検証を繰り返すんだよ」

 機械に香水斗と僕が作ったサンプルを入れる。すると、粉末状になって香料がでてきた。それを商品の仮パッケージに入れて、さらに奥にある部屋に進む。

 入浴剤評価室には一般的な浴槽のほか、ホーロー、人工大理石、ステンレス、ヒノキ材の浴槽がずらりと並んでいた。天井についている明かりもそれぞれ違うものが取り付けられていて、蛍光灯と白熱灯とLEDライトがある。

「香水斗、浴槽が違うのはわかるんだけどさ。どうして明かりも違うんだ?」

 天井にはいろんな照明が取り付けられていた。

「明かりを切り替えるのは入浴剤の色味や溶け方、香り立ちや持続性など多角的に評価する必要があるんだ」

「匂いだけじゃないんだ……」

 匂いを混ぜて作るだけかと思っていたのに、入浴剤となると一気にやることが増えてくる。この際、嫌みを言ってくる藤さんの手も借りたいぐらいだ。そんなことを考えながら僕と香水斗は六据えある浴槽にお湯を入れていった。

「パッケージもリニューアルしないとな。プレゼント用に特別感があるものがほしいって峰岡さんから要望があったらしい」

「パッケージまで……」

 入浴剤が家で使用されるシーンを想定して容器から入浴剤をお風呂へ投入していく。やることが多すぎてメモを取らないと頭がパンクしそうになった。

「まぁ、新しい入浴剤は半年かけて作るものだからな。といっても、あっという間に半年は過ぎていくが」

「普通に働いていても半年はあっという間だよ。完成できそうな未来が見えない……」

「だから、少しずつ形にしていくしかないんだよ。調合と検証を繰り返して納得ができたものを見つけに行く。これで食っている以上、半端な仕事はできない」

 香水斗は溶けていく入浴剤を見つめていた。

「溶けていくのがちょっと遅いな」

 香水斗はお湯に手を入れる。ぐるぐるとお湯をかき混ぜて入浴剤を溶かしていった。

「さあ、志野出番だぞ」

 香水斗は僕と浴槽を交互に指さした。

「はい……?」

 香水斗が言う僕の出番は、この場で裸になってお湯につかれって意味なのか……?



 
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