香水のせいにすればいい

弓葉

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香りの設計図

あからさまな嫌み

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「別に旅行に行っていたわけじゃない。邪魔するなら帰れ」

 香水斗は眉間に皺を寄せる。藤さんといえど、あからさまな嫌味は香水斗の機嫌を損ねたようだ。

「ものの例えですよ。本気にしないで下さい。でもまぁ、そう考える社員もいるということで」

 藤さんは香水斗に媚びへつらうように笑いかける。もちろん、その言葉の矛先は僕に対してだろう。藤さんの予想通り僕はその言葉に傷ついていた。

 たしかに、側から見れば羨ましがられるのもわかる。経費で温泉旅行に行っているようなものだ。僕がまだ営業に所属していれば、同じように羨んだと思う。

「なら、その期待に答えられるような入浴剤を作らないとですね」

 自分で自分の首を絞めていると思った。だけど、言い返さないと僕の気が済まない。調香師である香水斗の傍にいて信念を知って、製品開発する側になった今はそれなりにプライドを持っている。

 アロマティック部門は名前の花形だけじゃなくて、結果も華麗に残したい。

「そうだな」

 香水斗は一瞬、驚いた顔をしたが安心したかのように俯き笑った。
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