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香水の落とし方
解決
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「な、なんで藤さんがここにいるんですか?!」
今、会いたくない人ナンバーワンである藤さんが目の前にいる。香水斗と僕が下着姿でうろちょろしている姿なんか見られたら一巻の終わりだ。
「ばかっ! そんなデカい声出したらさすがの藤でも起き……「んっ……香水斗さん??」
もぞりと身体を起こした藤さん。すぐに隠れなきゃと洗面所に飛び込んだ。
「ああ、ごめん。起こして悪かったな」
「いえ……起きて香水斗さんがいるのが嬉しい」
あまりにも僕と香水斗に対する態度が違いすぎて本当に同一人物かと疑いたくなる。毒気を抜かれた声に気を取られていれば鋭い言葉が突き刺さった。
「あれ? 同級生さんは一緒じゃないんですね」
物音を立てないように洗面所の端っこに座る。体育座りをして面積を小さくした。
「どうしてそこに志野が出てくる?」
「ここに俺の匂いがしたから」
すぐに自分の身体を嗅いだ。さっきシャワーを浴びたからラベンダーの臭いはしない。
「確かにあのにおいは強烈だったな、少しは抑えないと商品にならないぞ」
「いえ、あれは不審者にかけて警察犬で犯人を追い詰める用なのであのままで大丈夫です」
なんだよ、それ。僕は犯罪者じゃないし、そんな変な物をかけるな。
「だからってここでかけたら他の人の迷惑になるだろう」
「いや、部外者のやつにウロチョロされる方が迷惑ですよ。っていうか、香水斗さんこそあいつに香水かけてるじゃないですか。みんなうすうす感づいてますよ、香水斗さんがあいつをこの部署に引っ張り込んだって……俺の中の香水斗さんは、そんなふしだらなことはしませんよね」
妖しく笑う藤の声を聴いて生きた心地がしなかった。だけど、香水斗が僕をこの部署に引っ張ってこれる権力なんて持っているのだろうか? 胸の中が疑問で渦巻いて今すぐにでも香水斗に聞きたくなる。
「……っていうか香水斗さん……えっちいですね」
「え?」
「惚けないで下さいよ。いくら仮眠室でも下着姿でうろちょろするなんて……誘ってるんですか?」
おいおいおい! 何かいい雰囲気になってるんですけど!! っていうか、二人ともよく声通るな!
「やめろ、俺達は終わった関係だろ……「まだ終わってない!!」
「……っ!」
急に藤さんが怒鳴るものだからびっくりして、もたれていた壁に後頭部ぶつけた。というか、関係って何? あの二人付き合ってたってこと??
さっきの手慣れた触り方を思い出したら胸の中がモヤモヤしてきた。考えなくてもいいことなのに、匂い以外のことで悩むなんて自分らしくない。
……いやまぁ元々香水斗が持ってるオーバースペックに吊り合うものはないし、自分が最初の相手だなんて思ってはいなかったけど……聞いていてやっぱり気分はいいものじゃない。
こんな話、できれば、ききたくはなかった。
「……まだ……まだ俺の中では、終わってないです……」
「藤、抱きついたって俺の気持ちは変わらないし、こんなことされたって困る。離れてくれ」
え?、え?? 見えてないから分からなかったけど藤さん抱きついちゃってんの?! ちょっとした好奇心だけど見てみたい。
少し扉を開けてドアの隙間から二人を覗き見る。藤さんは香水斗に抱きついていて後ろ姿しか見えなかった。だけど、肩を上下に動かし震えていたので声を押し殺して泣いているのが分かる。
香水斗の表情はめんどくさそうな感じで気だるそうだった。
「冷たくね……?」
いつかあんな風な表情を見せられる瞬間が来るかもしれないと思えば、風呂場での一件で迷っていた心の悩みが解決したような気がした。
今、会いたくない人ナンバーワンである藤さんが目の前にいる。香水斗と僕が下着姿でうろちょろしている姿なんか見られたら一巻の終わりだ。
「ばかっ! そんなデカい声出したらさすがの藤でも起き……「んっ……香水斗さん??」
もぞりと身体を起こした藤さん。すぐに隠れなきゃと洗面所に飛び込んだ。
「ああ、ごめん。起こして悪かったな」
「いえ……起きて香水斗さんがいるのが嬉しい」
あまりにも僕と香水斗に対する態度が違いすぎて本当に同一人物かと疑いたくなる。毒気を抜かれた声に気を取られていれば鋭い言葉が突き刺さった。
「あれ? 同級生さんは一緒じゃないんですね」
物音を立てないように洗面所の端っこに座る。体育座りをして面積を小さくした。
「どうしてそこに志野が出てくる?」
「ここに俺の匂いがしたから」
すぐに自分の身体を嗅いだ。さっきシャワーを浴びたからラベンダーの臭いはしない。
「確かにあのにおいは強烈だったな、少しは抑えないと商品にならないぞ」
「いえ、あれは不審者にかけて警察犬で犯人を追い詰める用なのであのままで大丈夫です」
なんだよ、それ。僕は犯罪者じゃないし、そんな変な物をかけるな。
「だからってここでかけたら他の人の迷惑になるだろう」
「いや、部外者のやつにウロチョロされる方が迷惑ですよ。っていうか、香水斗さんこそあいつに香水かけてるじゃないですか。みんなうすうす感づいてますよ、香水斗さんがあいつをこの部署に引っ張り込んだって……俺の中の香水斗さんは、そんなふしだらなことはしませんよね」
妖しく笑う藤の声を聴いて生きた心地がしなかった。だけど、香水斗が僕をこの部署に引っ張ってこれる権力なんて持っているのだろうか? 胸の中が疑問で渦巻いて今すぐにでも香水斗に聞きたくなる。
「……っていうか香水斗さん……えっちいですね」
「え?」
「惚けないで下さいよ。いくら仮眠室でも下着姿でうろちょろするなんて……誘ってるんですか?」
おいおいおい! 何かいい雰囲気になってるんですけど!! っていうか、二人ともよく声通るな!
「やめろ、俺達は終わった関係だろ……「まだ終わってない!!」
「……っ!」
急に藤さんが怒鳴るものだからびっくりして、もたれていた壁に後頭部ぶつけた。というか、関係って何? あの二人付き合ってたってこと??
さっきの手慣れた触り方を思い出したら胸の中がモヤモヤしてきた。考えなくてもいいことなのに、匂い以外のことで悩むなんて自分らしくない。
……いやまぁ元々香水斗が持ってるオーバースペックに吊り合うものはないし、自分が最初の相手だなんて思ってはいなかったけど……聞いていてやっぱり気分はいいものじゃない。
こんな話、できれば、ききたくはなかった。
「……まだ……まだ俺の中では、終わってないです……」
「藤、抱きついたって俺の気持ちは変わらないし、こんなことされたって困る。離れてくれ」
え?、え?? 見えてないから分からなかったけど藤さん抱きついちゃってんの?! ちょっとした好奇心だけど見てみたい。
少し扉を開けてドアの隙間から二人を覗き見る。藤さんは香水斗に抱きついていて後ろ姿しか見えなかった。だけど、肩を上下に動かし震えていたので声を押し殺して泣いているのが分かる。
香水斗の表情はめんどくさそうな感じで気だるそうだった。
「冷たくね……?」
いつかあんな風な表情を見せられる瞬間が来るかもしれないと思えば、風呂場での一件で迷っていた心の悩みが解決したような気がした。
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