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精神動物(スピリットアニマル)
浅草仲見世
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浅草の入り口から仁王門まで浅草仲見世が立ち並ぶ。浅草名物である#紅梅焼___こうばいやき_#を売っていた。
「藤、これはなんだ?」
玖賀は紅梅焼に興味を示した。店の前に並ぶ、紅梅焼が入った袋を指差す。袋の中には梅の花に型抜きされたものが入っていた。
「それは煎餅。江戸駄菓子だよ」
「ほう、煎餅とな」
玖賀は口元に手を置きジッと見つめている。玖賀の三毛猫が藤に甘えるように足元に擦り寄ってきた。どうやら玖賀は紅梅焼を食べたいらしい。
「小麦粉に砂糖を混ぜて梅の形に焼いてるんですわ。美味しいですわよ」
店内にいた女性が玖賀に近づいてきた。お一つどうぞ、と試食用に砕いた紅梅焼を玖賀に渡す。藤も一口もらった。
「ほう……」
玖賀はもぐもぐと味わって食べている。
「うまいな、もう一つくれ」
「え?」
玖賀が試食用のものに手を伸ばそうとしたところで、藤が玖賀の手を押さえた。
「なにをする」
玖賀は眉間に皺を寄せる。
「もっと食べたいなら買うから。さっきのはお試しなんだよ」
忘れていた。玖賀は人間の姿をしているが、人間の常識を知らない。
「お姉さん、一個ちょうだい」
藤は取り繕うように女性に笑いかけた。女性は苦笑いをしながら紅梅焼を手に取り渡す。藤は懐から財布を取り出そうとしたところで、後ろから声をかけられた。
「お前、ガイドだな」
藤の背後に立つのは男二人組。男二人はスーツにハットを被っている。髪型はポマードで七三分けに固めていた。藤はポマードの人工的な臭いに耐えられなくて鼻を隊服の袖で覆う。
「藤、これはなんだ?」
玖賀は紅梅焼に興味を示した。店の前に並ぶ、紅梅焼が入った袋を指差す。袋の中には梅の花に型抜きされたものが入っていた。
「それは煎餅。江戸駄菓子だよ」
「ほう、煎餅とな」
玖賀は口元に手を置きジッと見つめている。玖賀の三毛猫が藤に甘えるように足元に擦り寄ってきた。どうやら玖賀は紅梅焼を食べたいらしい。
「小麦粉に砂糖を混ぜて梅の形に焼いてるんですわ。美味しいですわよ」
店内にいた女性が玖賀に近づいてきた。お一つどうぞ、と試食用に砕いた紅梅焼を玖賀に渡す。藤も一口もらった。
「ほう……」
玖賀はもぐもぐと味わって食べている。
「うまいな、もう一つくれ」
「え?」
玖賀が試食用のものに手を伸ばそうとしたところで、藤が玖賀の手を押さえた。
「なにをする」
玖賀は眉間に皺を寄せる。
「もっと食べたいなら買うから。さっきのはお試しなんだよ」
忘れていた。玖賀は人間の姿をしているが、人間の常識を知らない。
「お姉さん、一個ちょうだい」
藤は取り繕うように女性に笑いかけた。女性は苦笑いをしながら紅梅焼を手に取り渡す。藤は懐から財布を取り出そうとしたところで、後ろから声をかけられた。
「お前、ガイドだな」
藤の背後に立つのは男二人組。男二人はスーツにハットを被っている。髪型はポマードで七三分けに固めていた。藤はポマードの人工的な臭いに耐えられなくて鼻を隊服の袖で覆う。
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