鬼のセンチネル

弓葉

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玖賀の存在

鬼の虜

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「……任務があるから」

 前髪を触りながら、返事をする。深浦さんは話に合わせてくれるのだろうか。

「そうだな、陰陽寮の案内は部下に任せるとしよう」

 深浦は母親と椿を連れて神社を去った。

「ついていかなくてよかったのか」

 隣にいた獅堂が指を指す。

「ああ、家に帰らないと玖賀の様子が心配だ」

 言葉にすると恋人のようで妙に照れる。自分の体温が上がったのがわかった。

「ふうん、鬼の虜だな」

 からかうように獅堂が藤の頭を撫で回した。

「その言い方はやめろ、放置するとめんどくさいだけだ」


 ***


 家に帰ると、昼間なのに真っ暗だった。玖賀は日に当たりたくないのか、窓は全て閉め切っている。カビが生えそうな空気だった。

「昼でも、お化け屋敷みたいだな」

 中の灯りはついていない。玖賀の姿も確認できなかった。

「玖賀……?」

 おそるおそる真っ暗な空間に声をかけてみる。藤の声が響くだけで、シーン、と静まり返っていた。おかしいな、いつもなら飛びついてきそうなのに。

 藤は一歩、家の中に入る。後ろ手で玄関の扉を閉めれば、背後から口を塞がれた。

「んんっ……!」

 頬に長い爪が当たる。玖賀だ。

 無理やり、玖賀に首を振り向かされる。接吻をし、グチュグチュ、と舌をかき回される。鼻で息をすることを忘れ、口の中に残っていた酸素を吸い取られる。

 酸欠で頭がクラリ、とした。

「ハァ、ハァハァ……」

 意識を失う寸前に、玖賀から解放される。だが、すぐ口で塞がれた。身体は弄られ、隊服が乱れていく。下半身に触れられると、ドキリ、と心臓が跳ねた。

 玖賀の長い爪で中を傷つけられやしないか、と不安になる。心配をしていれば、玖賀の手が藤の陰茎を掴んだ。器用に指の腹で藤の陰茎をこねくり回す。小指で根元を刺激し、親指の腹で先端を弄られた。

「はぁ、はぁ……ぁ」

 玖賀の逸物が尻の割れ目に当てられる。はやくいれたい、と言わんばかりに押しつけられた。

「ンッツ……ッ……」

 何度出されたのか、把握できない。ただ、わかるのは漏らしたようにグチョグチョになっていること。玖賀がずっと接吻をしてくること。藤の体内にある粘液や体液を一つ残らず奪い取ろうとしてくる。

 たった、一晩いなかっただけで不安定すぎだろ。

 帰って来てから言葉を発しない玖賀。やはり、人ではなく鬼だ。
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