アルビノ崇拝物語

弓葉

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第1章 残酷な伝統薬

表面上の友好関係

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 世の中、人間通しが戦争をするのだから見た目が違う獣人と戦争しないわけがない。人間と獣人との戦争は熾烈を極めた。

 レベリオとブラットに戦争のことについて聞けば、決まって必ず心を閉ざす。何も知らない方が幸せだと言って。

 契約が切れたのか連絡手段として使えなくなったスマホを握りしめる。スマホの情報を頼る前に、もっとまじめに勉強しとけばよかったと後悔した。これほど、勉強不足だったと思うことはない。

 セリスロピィへ留学しに来たのに、その国のことを最初から知ろうともしないで来たことがとても恥ずかしくてかっこ悪かった。

 この三ヶ月である程度、読み書きやリスニング能力が身についてはいる。ただ、時々レベリオとブラットが話すネイティブなベスティア語を聞き取ることは不可能だった。今だってそうだ。口の開き方は獣の発音で、聞き取りがかなり難しい。

 十月はテンポ良く話しているレベリオとブラットを見て目を伏せた。

ーー決まって、こう言う時に寂しくなる。

 履き潰した運動靴を見て日本を思い出す。この靴は母に買ってもらったもの。母は足先が開いた靴を見て、どうして早く新しいのを買えって言わないのか、と笑っていた。

 ずっと同じ靴を履いているから、だいぶボロボロになってきたな。

 靴の中で指をグーパーと開いたり閉じたりする。まだ靴の生地は破けそうにないが、あまり長くは持たないだろう。

「十月?」

「トッキーどうしたんだよ」

 レベリオとブラットは十月にも聞き取れるようなベスティア語で話しかけてきた。二人とも心配そうに十月を見ている。十月の気持ちが落ち込めば、こうしてレベリオとブラットは寄り添った。

 二人に心配されれば、十月はいつも自分の弱さを実感してしまう。こんなにも自分は『一人が怖いのか』と。

 日本へ帰国しても一人のイメージが拭えない。十月の自己肯定感は低かった。明るく振る舞ってはいても、陰で何かを言われているのではないかと不安に陥る。

「い、いや、その……ライオンの遺体を見るのが初めてだったからさ」

 怖い? いや違う。悲しいだ。

「なんか、悲しくなっちまった……」

 十月の気持ちも口にした言葉に同調する。無性に悲しみに暮れ、涙をこぼした。

 
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