アルビノ崇拝物語

弓葉

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第1章 残酷な伝統薬

箱庭的な人工国家

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「最初に言っておくが、この国に自由はない。表向きは自由や寛容をうたっているが、カーストが根強く残っている。オメガなんて格好の餌食だ。さっさとこの国から去った方がいい」

 ライオン獣人は優しく十月に話しかけた。脅しには聞こえず、十月は動揺してしまう。

「か、帰りたくても帰れないんだ……」

 誰でもいいから相談したかった。誰かに自分の進むべき道を示してほしかった。そうでもしなければ、今立っている場所も揺らいで地下よりも深い闇に引きずり込まれそうだった。

「それはどういうことだ?」

 ライオン獣人の耳がピクリと動く。十月の言葉を聞き漏らさないように意識をしていた。ライオン獣人の聞く意思が目に見えて伝わり、十月は聞き流されないと安心する。

「帰ればきっとここよりも酷い扱いを受けるんだ。家族に頼りたくても両親が逮捕されて。おばあちゃんとはしばらく帰ってくるな、と言われてから連絡が取れないし。他に頼る身内もいない。だからと言って友達は頼れない。両親が逮捕されたってことはニュースで知っているだろうし……うっ、俺は、俺はどうしたらいいんだ……」

 十月の視界は歪み、クラリとめまいがした。膝をつけば、ボロボロと我慢していた涙があふれてくる。

 両親が何で逮捕されたのかは知らない。きっと何かの間違いであってほしいと思う。義父に関してはどうでもいいが、母は巻き込まれた側だ。すぐに釈放されるはず……それなのに何一つ連絡が来ないのはなぜだ。

 考えることをやめたはず。それなのに口にしただけで、頭は勝手に思考を巡らせてしまう。余計なことを考えてしまう。考えないようにしていたはずなのに。

「止まれ、止まれ止まれ止まれ止まれ止まれえええ!!」

 勝手に頭を使う脳に命令したって、ちっとも改善されない。むしろ、頭痛が起きるまで能力を使い切ろうとする。身体の疲弊もあり、十日の精神も限界だった。

「おい!」

 ライオン獣人の声が聞こえた。

 フッ、と目の前が真っ白になり意識が遠くなる。身体が大きく傾くのを感じながら、十月は目を閉じた。
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