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期待してんの?

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――3年前、僕は友達と遊ぶ約束をしてショッピングセンターに来ていた。

 待ち合わせ場所に行く途中の道に、ぽつんと置かれていたピアノ。誰もが通り過ぎていく中、黒いコートを翻して座ったのがネオ様だった。

 ピアノの音は歌っているように聴こえて、一つ一つの鍵盤を弾くと耳元で銀色のピアスが揺れる。音だけじゃなくて、僕はネオ様という存在に興味を持った。

 友達と約束していたことなんか忘れて、僕はその場に立ち止まる。約束の時間は過ぎようとしていた。だけど僕はこの場から動きたくなかった。動けなかった。

 ***

「どうした、乗らないのか?」

 ネオ様が僕の顔を覗き込む。先にタクシーへ乗り込んだネオ様は僕の腕を引っ張った。

「の、乗ります……」

 僕はタクシーに乗り込んだ。ネオ様の隣に座るだけで、ドキドキと高まる鼓動が止まらない。ただ、ネオ様が話しているだけなのに、僕はまた勝手に発情しようとしている。

「もう少しだけ我慢しろ」

 ネオ様は僕の目を手で塞いだ。僕の心臓の音はさらに大きくなる。ドキドキと心臓がはち切れそうだ。

「は、はい……」

 返事をした僕の声は裏返っていて、息の吸い方が分からなくなる。え、え、どういう状況なんですかこれは。僕は背筋をバカみたいに伸ばして、手を握りしめる。そうしないとこの場にいることができなかった。

「○○ホテルまで」

 透き通るような声でネオ様は言った。○○ホテルは高級ホテルで、僕なんかが泊まれないほどの値段だ。僕は今から自分が一生泊まることがないと思っていたホテルに連れて行かれる。ホテルの部屋に入るところを想像して、ジュッとお尻が締まった。変な緊張と汗が噴き出してくる。

「期待してんの?」

 耳元でネオ様の声がした。わざと熱を孕ませた声は僕の中を触れてもいないのに刺激をしてくる。硬直していたはずの身体はもじもじと太ももをすりあわせていた。じっとしていられないほど、僕はネオ様に身体を支配されている。オメガという自分を再確認した瞬間だった。
 
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