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魔王の勇者育成日記 7.パパママ呼びは辛抱強く待ちましょう
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「魔王さあ、目がシバシバしてきた」
「目薬さします?」
「魔王目薬苦手なんだよねー」
「大丈夫ですって、ホラ上向いて」
「うー」
「はい目開けてー。さん、に」
「ギャーッ」
「はいさせたー」
「普通いちでささない!?何なのそのフェイント!!」
「敵を騙すにはまず味方からって言うじゃないですか」
「誰と戦ってるの?!」
魔王とカリフラワーがぎゃあぎゃあと騒ぐ中、サクラは書庫で本に囲まれてご満悦だった。元々本が大好きな本の虫なので、周りが本だらけとかパラダイスである。ここにコスモスが居たら最高なのになあとかしみじみ思うぐらいにはサクラのテンションは上がっていた。
(何か思い出すよな・・・)
書庫の一番端に、隠れるように椅子と机が置いてある。それを見てサクラは、コスモスと初めて出逢った時のことを思い出していた。詳しくは番外編を待つべし。
「あっ、しかもこの目薬めっちゃしみるやつじゃん!ウワアアアアアグワアアアアアア」
「魔王様ふぁーいと♪」
「めが、めがあああああ」
「はやりのふくはきらいですか(ドヤア」
ジ●リごっこをして遊ぶ二人に、しみじみと回想に浸るサクラ。
作業が進むわけがなかった。
「はい、リヒト様ー、こっちですよー」
「あーう、あーう」
一方、コスモスは子供部屋でリヒトのハイハイ訓練をしていた。
「大分遠くまで来られるようになりましたねー」
「あー」
リヒトから少し離れた場所にコスモスが立ち、そこまでリヒトがハイハイし、到達すると褒めるというのを繰り返している。ちなみに子供部屋の床は魔王が抗菌素材にリフォームし、毎日除菌している。下に引いてあるタオル素材のマットも魔王が毎日洗濯している。ありがとう、魔王とア●エール。その内隣の家に外国人が引っ越してきて「ポォン!」とかやりそうなぐらい、リヒトの周りのタオル素材はフワッフワであった。
「そろそろつかまり立ちが出来るようになるかもしれませんねー」
よしよし、とリヒトを抱っこしながらコスモスは頭を撫でた。
「うー・・・うー・・・」
リヒトがコスモスをじっと見つつ何か言おうとしているので、コスモスはリヒトを見つめ返した。
「何ですかー?リヒト様」
「うー・・・うー・・・しゅ」
「しゅ?」
何のことだろう、とコスモスが首を傾げると、リヒトは口をもごもごと動かし、発音の調整をしている。
「しゅ、ぉしゅ・・・もしゅ」
「喪主・・・?」
何故リヒトがそんな単語を知っているのだろうかとコスモスは素で思った。いやしかしそんなわけがない。
「しゅ、もしゅ」
「・・・・?」
やはり喪主にしか聞こえない。
「もしゅもしゅ」
喪主なのか「もしもし」なのか判断がつきかねるとコスモスが思っていると、リヒトがくいくいとコスモスの袖を引っ張った。
「もしゅもしゅ」
「あっ」
コスモスは気が付いた。
「もしかしてリヒト様・・・私を呼んで下さっているのですか・・・?」
「もしゅもしゅ」
「はい、リヒト様」
これは人間の育児書によるところの「今ママって言ったわ!パパにメールしなきゃ!」っていうやつなのかとコスモスは感動し、そして気が付いた。
(これは・・・まずいのでは・・・)
リヒトの親は一応魔王ということになっている。ということは、魔王よりも先に自分が呼ばれてしまっては立場上とんでもなく不味いのではないか。
「リヒト様」
「もしゅ」
「はい。いえあの、そうではなくですね」
「もしゅもしゅ」
「はい。ではなく」
コスモスはコホン、と咳払いをした。
「よろしいですかリヒト様。私のことを呼んで下さるのは大変嬉しいのですが、世の中には雇用という名の主従関係がございまして、時には一歩引いて相手を立てるということが必要な場合がございます。何よりリヒト様はまずお父上である魔王様を認識するところから始めるのがよろしいかと思うのですが、ご理解いただけますでしょうか?」
「うー」
「はい、それではリヒト様。リピートアフターミー、パ・パ」
「赤ん坊相手に何言ってんだお前は」
呆れたような声にコスモスが振り返ると、子供部屋の入り口にサクラが立っていた。
「サクラ、いつから居たの?」
「お前が長台詞言い出した辺りからだ」
サクラは扉を閉めると、コスモスの横に立った。
「お前時々ボケかますよな」
「私はいつでも真剣だよ!」
ぷう、と頬を膨らませるコスモスを見て、サクラはやれやれと笑った。もう可愛いからどっちでもいい。
「そうだ、それよりサクラはどうしてここに?書庫はもういいの?」
「ああ。明日の仕事の用事があってな。そろそろ帰ろうと思って」
「そっかあ。忙しいのに、来て貰っちゃっててごめんね」
「気にするな。本は好きだしな。お前にも会えるし」
「うん・・・」
「もしゅー」
蕩けそうになった空気をリヒトが破壊した。
「ああ、そうだ。どうしよう、リヒト様にパパを教えないと」
微妙な言い回しで慌てるコスモスに、サクラは首を傾げた。
「子供って、子供を中心にした呼び方で覚えていくって聞いたが、魔王様をパパって呼んでるの魔王様だけだよな?」
「うん、そうだよ」
「リヒト様はもしかして、魔王様=パパって呼び方で認識してないんじゃないか?」
「あっ」
コスモスは固まった。大いに有り得る。考えてみれば、自分は誰からも「コスモス」と呼ばれている。だからこそリヒトも「コスモス」として認識出来たのではないか。
「えっ、じゃあ、どうしよう」
「コスモス~、リヒトの様子どう~?」
目のシバシバから解放された魔王はニコニコしながら(覆面で見えない)子供部屋にやって来た。
「あ、魔王様、」
報告するべきかどうか迷うコスモスに、魔王は首を傾げた。
「どうし」
「もしゅー」
コスモスを見ながら袖を引っ張るリヒトに、魔王は事態を把握した。
「今・・・」
「もしゅもしゅー」
「おや、リヒト様。コスモスのことが呼べるようになったんですか~」
後からやって来たカリフラワーがよしよしとリヒトの頭を撫でた。
「すごいリヒト!コスモスのこと解るようになったんだ!我が輩、我が輩は?」
魔王は興奮気味に自分を指差した。
「・・・・・ ?」
リヒトは首を傾げた。
「泣いてなんか・・・ない・・・」
「魔王様、覆面びっちょびちょですよ」
「ま、魔王様、これは」
弁解しようとするコスモスの腕の中で、リヒトがじっと魔王を見た。
「まおー」
「「!!」」
コスモスとサクラは凍り付いた。まさかの呼び捨て。階級というか職位というかだから呼び捨てでいいのかもしれないが、だがしかし呼び捨て。
「い、今、魔王って言った・・・?リヒト、魔王って、我が輩のこと呼んだよね・・・?」
魔王はぷるぷると震えた。
「り、リヒトオオオオオオオ!!!!」
魔王は感動のあまりリヒトを抱き締め、びっちょびちょな覆面を更にびっちょびちょにして咽び泣いた。びっちょびちょな覆面が気に入らないのか、魔王の腕の中でリヒトが不快そうな顔をしている。
「もしゅー」
リヒトはコスモスに助けを求め、びっちょびちょな覆面から脱出することに成功した。
「サクラの言う通り、魔王様は皆に魔王様と呼ばれていますので、リヒト様はそのまま覚えてしまわれたのですね」
「何でもいいよ~リヒトが我が輩のこと解ってくれたよ~」
覆面をびっちょびちょにしておーいおいおいと泣く魔王を、リヒトはあまり関心がなさそうに眺めている。
「しゃくー」
リヒトがサクラに手を伸ばしたので、サクラはその手を握った。
「しゃくー」
「もしかしてサクラのこと呼んでるんじゃない?」
「もう解るのか。すごいな」
サクラが控えめにリヒトの頭を撫でると、リヒトは嬉しそうに笑った。もしかして面食いなのかなとカリフラワーは思った。そりゃあ誰だって覆面びっちょびちょにして大泣きしてるオッサンよりも、若くて美しい夫婦の方がいいに決まっている。
「リヒト様~私のことは解りますか~?」
カリフラワーが近づいて手を振ってみると、リヒトはじっとカリフラワーを見た。
「おっしゃん」
カリフラワーは固まった。
「えっ、私今オッサンって言われた・・・?」
「多分『叔父様』です、カリフラワー様。恐らくリヒト様は、コスモスの呼び方で覚えているのでしょう」
サクラの的確なフォローに、カリフラワーは胸を撫で下ろした。
「よかった~プチトラウマになるところだった~。確かに、カリフラワーって言い辛いもんね。何か呼ばれ方考えようかな・・・」
カリフラワーは真剣にあだ名を吟味し始めた。
「すぐに言葉を覚えますよ、叔父様」
「そうしたらカリフラワーおじさんって呼ばれるのかなあ。私のあしながおじさんみたいで何かいいね!」
気に入ったらしく、カリフラワーはグッと親指を立てた。奇跡的に文字数が同じだとサクラは思った。
「でもそっかあ・・・リヒト、これから言葉を覚えていくんだね・・・」
びっちょびちょな覆面のまま、魔王はしみじみと頷いた。
「コスモス」
「はい、魔王様」
「リヒトに読み聞かせる絵本さ・・・人間のも、読んであげてくれないかな」
「!」
「そのほうが、いいと思うんだ」
「魔王様・・・」
しんみりした空気の中、魔王は覆面を被ったまま、端っこの方を絞った。びっちょびちょだった。
「はい。早速取り寄せます」
「うん。ありがとう」
くたくたになった覆面を被り、魔王は頷いた。
この後、Babazonで絵本を買う習慣がつき、リヒトがタブレットを「ばーば」と呼ぶようになったのはまた別の話。
「目薬さします?」
「魔王目薬苦手なんだよねー」
「大丈夫ですって、ホラ上向いて」
「うー」
「はい目開けてー。さん、に」
「ギャーッ」
「はいさせたー」
「普通いちでささない!?何なのそのフェイント!!」
「敵を騙すにはまず味方からって言うじゃないですか」
「誰と戦ってるの?!」
魔王とカリフラワーがぎゃあぎゃあと騒ぐ中、サクラは書庫で本に囲まれてご満悦だった。元々本が大好きな本の虫なので、周りが本だらけとかパラダイスである。ここにコスモスが居たら最高なのになあとかしみじみ思うぐらいにはサクラのテンションは上がっていた。
(何か思い出すよな・・・)
書庫の一番端に、隠れるように椅子と机が置いてある。それを見てサクラは、コスモスと初めて出逢った時のことを思い出していた。詳しくは番外編を待つべし。
「あっ、しかもこの目薬めっちゃしみるやつじゃん!ウワアアアアアグワアアアアアア」
「魔王様ふぁーいと♪」
「めが、めがあああああ」
「はやりのふくはきらいですか(ドヤア」
ジ●リごっこをして遊ぶ二人に、しみじみと回想に浸るサクラ。
作業が進むわけがなかった。
「はい、リヒト様ー、こっちですよー」
「あーう、あーう」
一方、コスモスは子供部屋でリヒトのハイハイ訓練をしていた。
「大分遠くまで来られるようになりましたねー」
「あー」
リヒトから少し離れた場所にコスモスが立ち、そこまでリヒトがハイハイし、到達すると褒めるというのを繰り返している。ちなみに子供部屋の床は魔王が抗菌素材にリフォームし、毎日除菌している。下に引いてあるタオル素材のマットも魔王が毎日洗濯している。ありがとう、魔王とア●エール。その内隣の家に外国人が引っ越してきて「ポォン!」とかやりそうなぐらい、リヒトの周りのタオル素材はフワッフワであった。
「そろそろつかまり立ちが出来るようになるかもしれませんねー」
よしよし、とリヒトを抱っこしながらコスモスは頭を撫でた。
「うー・・・うー・・・」
リヒトがコスモスをじっと見つつ何か言おうとしているので、コスモスはリヒトを見つめ返した。
「何ですかー?リヒト様」
「うー・・・うー・・・しゅ」
「しゅ?」
何のことだろう、とコスモスが首を傾げると、リヒトは口をもごもごと動かし、発音の調整をしている。
「しゅ、ぉしゅ・・・もしゅ」
「喪主・・・?」
何故リヒトがそんな単語を知っているのだろうかとコスモスは素で思った。いやしかしそんなわけがない。
「しゅ、もしゅ」
「・・・・?」
やはり喪主にしか聞こえない。
「もしゅもしゅ」
喪主なのか「もしもし」なのか判断がつきかねるとコスモスが思っていると、リヒトがくいくいとコスモスの袖を引っ張った。
「もしゅもしゅ」
「あっ」
コスモスは気が付いた。
「もしかしてリヒト様・・・私を呼んで下さっているのですか・・・?」
「もしゅもしゅ」
「はい、リヒト様」
これは人間の育児書によるところの「今ママって言ったわ!パパにメールしなきゃ!」っていうやつなのかとコスモスは感動し、そして気が付いた。
(これは・・・まずいのでは・・・)
リヒトの親は一応魔王ということになっている。ということは、魔王よりも先に自分が呼ばれてしまっては立場上とんでもなく不味いのではないか。
「リヒト様」
「もしゅ」
「はい。いえあの、そうではなくですね」
「もしゅもしゅ」
「はい。ではなく」
コスモスはコホン、と咳払いをした。
「よろしいですかリヒト様。私のことを呼んで下さるのは大変嬉しいのですが、世の中には雇用という名の主従関係がございまして、時には一歩引いて相手を立てるということが必要な場合がございます。何よりリヒト様はまずお父上である魔王様を認識するところから始めるのがよろしいかと思うのですが、ご理解いただけますでしょうか?」
「うー」
「はい、それではリヒト様。リピートアフターミー、パ・パ」
「赤ん坊相手に何言ってんだお前は」
呆れたような声にコスモスが振り返ると、子供部屋の入り口にサクラが立っていた。
「サクラ、いつから居たの?」
「お前が長台詞言い出した辺りからだ」
サクラは扉を閉めると、コスモスの横に立った。
「お前時々ボケかますよな」
「私はいつでも真剣だよ!」
ぷう、と頬を膨らませるコスモスを見て、サクラはやれやれと笑った。もう可愛いからどっちでもいい。
「そうだ、それよりサクラはどうしてここに?書庫はもういいの?」
「ああ。明日の仕事の用事があってな。そろそろ帰ろうと思って」
「そっかあ。忙しいのに、来て貰っちゃっててごめんね」
「気にするな。本は好きだしな。お前にも会えるし」
「うん・・・」
「もしゅー」
蕩けそうになった空気をリヒトが破壊した。
「ああ、そうだ。どうしよう、リヒト様にパパを教えないと」
微妙な言い回しで慌てるコスモスに、サクラは首を傾げた。
「子供って、子供を中心にした呼び方で覚えていくって聞いたが、魔王様をパパって呼んでるの魔王様だけだよな?」
「うん、そうだよ」
「リヒト様はもしかして、魔王様=パパって呼び方で認識してないんじゃないか?」
「あっ」
コスモスは固まった。大いに有り得る。考えてみれば、自分は誰からも「コスモス」と呼ばれている。だからこそリヒトも「コスモス」として認識出来たのではないか。
「えっ、じゃあ、どうしよう」
「コスモス~、リヒトの様子どう~?」
目のシバシバから解放された魔王はニコニコしながら(覆面で見えない)子供部屋にやって来た。
「あ、魔王様、」
報告するべきかどうか迷うコスモスに、魔王は首を傾げた。
「どうし」
「もしゅー」
コスモスを見ながら袖を引っ張るリヒトに、魔王は事態を把握した。
「今・・・」
「もしゅもしゅー」
「おや、リヒト様。コスモスのことが呼べるようになったんですか~」
後からやって来たカリフラワーがよしよしとリヒトの頭を撫でた。
「すごいリヒト!コスモスのこと解るようになったんだ!我が輩、我が輩は?」
魔王は興奮気味に自分を指差した。
「・・・・・ ?」
リヒトは首を傾げた。
「泣いてなんか・・・ない・・・」
「魔王様、覆面びっちょびちょですよ」
「ま、魔王様、これは」
弁解しようとするコスモスの腕の中で、リヒトがじっと魔王を見た。
「まおー」
「「!!」」
コスモスとサクラは凍り付いた。まさかの呼び捨て。階級というか職位というかだから呼び捨てでいいのかもしれないが、だがしかし呼び捨て。
「い、今、魔王って言った・・・?リヒト、魔王って、我が輩のこと呼んだよね・・・?」
魔王はぷるぷると震えた。
「り、リヒトオオオオオオオ!!!!」
魔王は感動のあまりリヒトを抱き締め、びっちょびちょな覆面を更にびっちょびちょにして咽び泣いた。びっちょびちょな覆面が気に入らないのか、魔王の腕の中でリヒトが不快そうな顔をしている。
「もしゅー」
リヒトはコスモスに助けを求め、びっちょびちょな覆面から脱出することに成功した。
「サクラの言う通り、魔王様は皆に魔王様と呼ばれていますので、リヒト様はそのまま覚えてしまわれたのですね」
「何でもいいよ~リヒトが我が輩のこと解ってくれたよ~」
覆面をびっちょびちょにしておーいおいおいと泣く魔王を、リヒトはあまり関心がなさそうに眺めている。
「しゃくー」
リヒトがサクラに手を伸ばしたので、サクラはその手を握った。
「しゃくー」
「もしかしてサクラのこと呼んでるんじゃない?」
「もう解るのか。すごいな」
サクラが控えめにリヒトの頭を撫でると、リヒトは嬉しそうに笑った。もしかして面食いなのかなとカリフラワーは思った。そりゃあ誰だって覆面びっちょびちょにして大泣きしてるオッサンよりも、若くて美しい夫婦の方がいいに決まっている。
「リヒト様~私のことは解りますか~?」
カリフラワーが近づいて手を振ってみると、リヒトはじっとカリフラワーを見た。
「おっしゃん」
カリフラワーは固まった。
「えっ、私今オッサンって言われた・・・?」
「多分『叔父様』です、カリフラワー様。恐らくリヒト様は、コスモスの呼び方で覚えているのでしょう」
サクラの的確なフォローに、カリフラワーは胸を撫で下ろした。
「よかった~プチトラウマになるところだった~。確かに、カリフラワーって言い辛いもんね。何か呼ばれ方考えようかな・・・」
カリフラワーは真剣にあだ名を吟味し始めた。
「すぐに言葉を覚えますよ、叔父様」
「そうしたらカリフラワーおじさんって呼ばれるのかなあ。私のあしながおじさんみたいで何かいいね!」
気に入ったらしく、カリフラワーはグッと親指を立てた。奇跡的に文字数が同じだとサクラは思った。
「でもそっかあ・・・リヒト、これから言葉を覚えていくんだね・・・」
びっちょびちょな覆面のまま、魔王はしみじみと頷いた。
「コスモス」
「はい、魔王様」
「リヒトに読み聞かせる絵本さ・・・人間のも、読んであげてくれないかな」
「!」
「そのほうが、いいと思うんだ」
「魔王様・・・」
しんみりした空気の中、魔王は覆面を被ったまま、端っこの方を絞った。びっちょびちょだった。
「はい。早速取り寄せます」
「うん。ありがとう」
くたくたになった覆面を被り、魔王は頷いた。
この後、Babazonで絵本を買う習慣がつき、リヒトがタブレットを「ばーば」と呼ぶようになったのはまた別の話。
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