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俺は王国の兵士長

運命

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(はぁ!? このままここで倒れろって言ってんの!? それじゃあ姫様どうすんだよ!)

 今女神と会話していた。
 提案があると聞いていたのがこれだ。
 俺が今ここで倒れて、姫様をさらわせる。そして俺が後から助けに行くという提案だった。

「おい! 早くしろよ!」

《早くしてください。姫様が殺されますよ!》
(くっ・・・・分かった)

 俺はアメジストのネックレスを外そうとする。
 そしてその途中で俺はその場に倒れるふりをするはずだったのだが、その場で本当に気を失ってしまった。

「ひっひっひっ・・・・・本当に倒れやがった。なんちゃってヒーローが。」
「セカイはなんちゃってヒーローなんかじゃありません!」
「あぁああん? 殺すぞ。」

 口が悪い男に変貌したキーサードは、そのまま姫様をどこかに連れて行ってしまった。
 そこに倒れてしまっていた俺は、キーサードと姫様がどの方向に攫って行ったのか分かった。


 俺は知らない天井を目の前に、知らないベッドで寝ていた。
 右に首を回すと、そこには猫耳猫しっぽがついている小さな女の子がいた。

「あの・・・・・・」

 俺が声を掛けると、気付いたようでこちらに近づいてくる。

「あ・・・・起きましたね!? 良かったです・・・・死んじゃいましたかと思いました!」
「そう・・・・・それで?・・・・姫様は・・・・・」
「やはり何かを知っているんですね。レイのところに向かってください!」

 そう言われたので、ベッドから降りたのだが、一つ気になったことがあったので問いかけてみる。

「でも何でレイたちは俺が戦っている中来なかったんだ?」
「あ・・・・皆何故か眠っていたんですよね・・・」
「そっか・・・・」

 そう言って医務室らしき場所を出た。


 俺はここがどこか分からなかったので、歩き回っていた。
 たぶんみんなが眠っていたのは、キーサードの仕業だろう。
 俺が途方に迷っていると、目の前から誰かが曲がって来た。

「サーシャ!?」
「あ・・・・セカイ様・・・・・」

 どこか悲しげな顔をしているが、俺を例の場所まで案内してくれと頼んだ。

「セカイ様・・・・・本当に申し訳ございませんでした。」

 廊下を歩きながら、丁寧な口調で謝って来た。
 何故謝って来たのかがわからず、流すことが出来なかった。

「何がだ?」
「寝てしまってしまいましたことです。セカイ様を守ることが姫様からのご命令でしたので・・・それを守れなかったのが、謝った理由です。」

 最初は理解できなかった。
 それが謝る理由にならないからだ。
 それよりこっちが謝らなければならない、姫様を・・・・・・・・・・・・・

「俺の方が謝らなければならない・・・・・」
「何でですか?」
「姫様が・・・・姫様の事を・・・・・・」

 俺は悔やみ悔やみ悔やみ悩んだ。
 自然と拳に力が入り、キーサードを恨みつぶした。
 それに気づいたサーシャは、気を使ってなのか、気付いた様子で話しかけてきてくれた。

「大丈夫です・・・・・姫様を助けるのが最善です・・・・」
「ああそうだな。ありがとな・・・」

 そしてついた場所は、大きな扉の、玄関の真正面にある大きな扉だった。
 入るのをためらうぐらいの気迫で、俺は正直驚いた。
 部屋に入るのをここまで緊張することが、人生の中で味わうとはな。

「大広間です・・・・レイが待っています。」
「分かった。」

 俺は目の前にあるとても大きい扉を開けた。


「失礼します。」

 そう言って入ると、そこにはレイの他に兵や親衛隊の人が、少なからずいた。

「そこに座れ・・・」

 レイはとてもピリピリしていて、正直少しだが殺気立っていた。
 俺は言う通りにして、空いている席に座った。

「何でしょうか・・・・・?」
「何でしょうかじゃ無いわよ! 姫様はどこ!? 何やっていたのあんたは!」

 とても怒っていた。
 俺はここまで怒る理由は分かるが、ちょっと偉そうすぎないかと思った。

「竜と戦って、キーサードと対峙して、そして倒れてしまっただけだ。」

 そう言うとますます怒りが収まらなくなっていた。

「姫様はどこだって言ってんの! 分かる!?」
「攫われたよ・・・・・」

 とても殺気立っているレイは何がしたいのだろう。俺を殺したいのか?

「攫われた? 何やってんのよ・・・・あんたそこにいたのなら・・・・・」
「あのさぁ! お前さっきから何なの? お前ら助けにも来なかったくせに、何偉そうなこと言ってんの!?」
「く・・・・・それは・・・」
「寝てたんだろ? ぐっすりと・・・・・お前らの忠誠心はそれまでだってことだ・・・」

 俺はこれ以上言うのをやめて、レイの反論を待った。

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