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俺は王国の兵士長

軌道少年ヒロト

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「キャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァ」

 目の前にいる竜の咆哮が響き渡る。
 だがその竜は、さっきまで女の子だった。魔薬らしきものを打って竜になった。
 赤い鱗に赤い翼の真っ赤な竜。勇ましかったがどこか狂気に満ち溢れていた。
 地響きを立ててこちらに向かってくる。

 いきなりだった。
 空中を飛んで持っていた剣を振り下ろしてくる。
 即座に反応できたが、エンシェントブレイドだけでは受け止めきれなかった。

「ううぁあう・・・・・・ドラグシャイニング!」

 ドラグシャイニングを放って竜から離れられたのだが、そこには衝撃的な事が起こっていた。

「流石竜だね。傷一つついてないや・・・・・」
《竜は最強の種族ですから、一筋縄ではいきませんよ》
「グァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

 竜は何もしゃべらない。奇声を発するだけだ。
 俺がどんどん後ろに下がって来ると、竜は剣じゃなく新たな手を使って来た。
 ハードメテオを口から放ってきた。
 詠唱の言葉も時間もないので、どんなにその技を粉砕できても、当たる可能性は十分に上がってしまう。

「シャインバレット」

 それでも俺はシャインバレットで粉砕した。
 だが竜はそれだけではなかった。

 今度は竜の左手に黒い粒子が集まっている。それを俺に向かって放ってきた。
 黒い光線だった。とても威力は絶大で俺を包み込める直径だった。
 俺は空中に飛んでいたため避けることは不可能だ。それを狙って来たのだろう。
 だが竜は俺にこの技を放ったのを躊躇したようだ。竜の手には黒い粒子が残っている。
 だが今の俺には躊躇した光線も粉砕できるか分からない。良くて相殺だろう。

《ちょっと私に任せてくれませんか?》
(どういうことだ?)
《説明は後です》

 そう言って紫色の宝石は赤くルビーのように光った。
 大量の魔力が集まってきて、黒い光線が俺の寸前まで迫ったところで女神はそれを放った。

《ハードメテオ》

 俺の目の前で巨大な火の玉と巨大な黒い光線がぶつかり合った。
 爆発が起き、俺が地面に着地するころには相殺されて何も残っていなかった。
 それから俺は女神に聞きたいことがあった。

(お前ハードメテオ使えたのか)
《いえ、使えませんでしたよ。セカイさんが心の中で強く、そして具体的に思った魔法を展開したまでです》
(そんな事もできたのか!?)
《たぶん使えるのは後一回でしょう》
(それじゃあ俺の知っている魔法なら後一回唱えられるのか!?)
《はい。そうですね》

 今勝ち筋が見えた。こいつにダメージを負わす魔法ではない。

――――この子を人間に戻す魔法だ

 強制軌道修正・・・・・というだ。

 軌道少年ヒロトという1990年代にやっていたアニメだ。まったく売れられなかった。たぶんこのアニメを覚えているのは、地球で俺ぐらいだろう。

 俺は一回見た異世界もののアニメ、小説、漫画は絶対に忘れない。
 物語は、魔王に取りつかれ変貌した幼馴染を助けるみたいな内容だった気がする。
 異世界マイスターの知恵が異世界で一番働いた時となるだろう。忘れられた理由は、グッズ販売を一切しておらず、アニメ放送時期は深夜の3時。覚えている方が神だと思う。

 その主人公の必殺技が、幼馴染を助けたが強制軌道修正だった。
 たぶん強制軌道修正が出来るはあるだろう。でもそれは魔法じゃない。
 魔法としてあったのが、軌道少年ヒロトだけだった。
 これこそ異世界マイスターの知恵の本領発揮どころなのだろう。

 俺はその魔法を使った時のシーンを完ぺきに思い出す。
 
(できるか?)
《出来ますけど、魔王をボッコボッコにしてから使ってますから、竜をボコボコにしてから使いますから、セカイさん頑張ってください》
(サンキュー)

 これであの子を助ける道が見えた。
 こっからは俺のターンだ。

「行け! ドラグシャイニング」

 俺はさっき伸び以上の魔力をつぎ込み、竜に向かってドラグシャイニングを放った。







《記憶力半端ないですね》
(異世界の事だけだがな)
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