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ご挨拶~魔界~2
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「はじめまして、間宮達と申します。ふつつかものですがよろしくお願いいたします」
達は一礼すると、ほっとして微笑む。
(言えた! 噛まずに言えた! グッジョブ俺!)
使用人達は目を見張った。
達から目が放せない。
しばしの静寂の時が流れる。
(何? 何でみんな黙ってるの? 何で無反応なの? 俺何かマズッた!?)
達の額に1滴の汗が垂れる。
メフィストがそれを指ですくい、口へと運んでいく。
(こんな時にまで何を――)
達がメフィストを睨むと、彼は軽い溜め息をつきながら苦笑して言った。
「お前の微笑みは他の者には少々毒のようだ、厄介事に捲き込まれないためにも我輩のテリトリー以外では無闇に笑わぬことをおすすめする」
(毒……?)
メフィストが手を叩いた。
その乾いた音に皆が正気に戻る。
「達はだだの人間ではない。父親は召喚術師の間宮司、母親はリリーだ」
「リリー!?」
「あのリリー様!?」
達は使用人達のざわめきを不信に思う。
(あのって何だよ、あのって)
「いかにも、あのリリーの子だ」
メフィストが宣言すると使用人達がどよめく、各々納得しているようだ。
「確かにリリー様は美しく聡明で気高く――」
達は誰のことを言っているのかわからなかった。
(美しく聡明で気高い――?)
達はリリーを思う。
確かに顔は整っていたが、どちらかというと可愛らしい方だ。
不信に思ってメフィストを見ると彼は達に微笑んでいった。
「リリーはこちらではクールビューティーで通っていてね、彼らにとってカリスマ的存在なのだよ」
達は吹き出した。
ヒラヒラのピンクレースのエプロンをつけたリリーの姿が目に浮かぶ。クールビューティーとはかけ離れていた。
「まあ、我輩やブブの認識ではお前の前でのリリーと大差無いから安心しろ」
「ピンクのヒラヒラ?」
「ピンクのヒラヒラだ」
メフィストと達は顔を合せて小さく笑った。
「今日は疲れたであろう? 我輩の部屋で一休みした後、夕食としよう。お披露目会はまた後日……」
達の思考回路が一瞬止まり、再びゆるゆると動き出す。
「お披露目……会……?」
「我輩の友人、ビジネス関係者達に達を紹介しようと思ってな」
「……それってどのくらいいるの?」
「…………数えたことはないな」
「お断りします」
達は間髪入れずに余所行きの笑顔で言った。
「……」
メフィストは呆気にとられて達の顔を見つめている。
「お断りします」
達は顔の表情そのままに繰り返して言った。
(今でさえ、いっぱいいっぱいなのにこれ以上は無理、住む世界が違い過ぎる)
「しかしだな……ん?」
メフィストが唸る中、達は極度の緊張のせいかその場に崩れ落ちそうになり、寸でのところで彼に抱えられる。
「達? ――達!?」
メフィストの心配そうな声が遠くで聞こえる。
(ごめん、キャパオーバーです)
達の意識はそこで途絶えた。
達は一礼すると、ほっとして微笑む。
(言えた! 噛まずに言えた! グッジョブ俺!)
使用人達は目を見張った。
達から目が放せない。
しばしの静寂の時が流れる。
(何? 何でみんな黙ってるの? 何で無反応なの? 俺何かマズッた!?)
達の額に1滴の汗が垂れる。
メフィストがそれを指ですくい、口へと運んでいく。
(こんな時にまで何を――)
達がメフィストを睨むと、彼は軽い溜め息をつきながら苦笑して言った。
「お前の微笑みは他の者には少々毒のようだ、厄介事に捲き込まれないためにも我輩のテリトリー以外では無闇に笑わぬことをおすすめする」
(毒……?)
メフィストが手を叩いた。
その乾いた音に皆が正気に戻る。
「達はだだの人間ではない。父親は召喚術師の間宮司、母親はリリーだ」
「リリー!?」
「あのリリー様!?」
達は使用人達のざわめきを不信に思う。
(あのって何だよ、あのって)
「いかにも、あのリリーの子だ」
メフィストが宣言すると使用人達がどよめく、各々納得しているようだ。
「確かにリリー様は美しく聡明で気高く――」
達は誰のことを言っているのかわからなかった。
(美しく聡明で気高い――?)
達はリリーを思う。
確かに顔は整っていたが、どちらかというと可愛らしい方だ。
不信に思ってメフィストを見ると彼は達に微笑んでいった。
「リリーはこちらではクールビューティーで通っていてね、彼らにとってカリスマ的存在なのだよ」
達は吹き出した。
ヒラヒラのピンクレースのエプロンをつけたリリーの姿が目に浮かぶ。クールビューティーとはかけ離れていた。
「まあ、我輩やブブの認識ではお前の前でのリリーと大差無いから安心しろ」
「ピンクのヒラヒラ?」
「ピンクのヒラヒラだ」
メフィストと達は顔を合せて小さく笑った。
「今日は疲れたであろう? 我輩の部屋で一休みした後、夕食としよう。お披露目会はまた後日……」
達の思考回路が一瞬止まり、再びゆるゆると動き出す。
「お披露目……会……?」
「我輩の友人、ビジネス関係者達に達を紹介しようと思ってな」
「……それってどのくらいいるの?」
「…………数えたことはないな」
「お断りします」
達は間髪入れずに余所行きの笑顔で言った。
「……」
メフィストは呆気にとられて達の顔を見つめている。
「お断りします」
達は顔の表情そのままに繰り返して言った。
(今でさえ、いっぱいいっぱいなのにこれ以上は無理、住む世界が違い過ぎる)
「しかしだな……ん?」
メフィストが唸る中、達は極度の緊張のせいかその場に崩れ落ちそうになり、寸でのところで彼に抱えられる。
「達? ――達!?」
メフィストの心配そうな声が遠くで聞こえる。
(ごめん、キャパオーバーです)
達の意識はそこで途絶えた。
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