公爵様と俺

長澤直流

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幼馴染み~木ノ内 朱里~3

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 達がまだ小学校低学年の頃、難癖をつけて絡んできた高学年の男の子がいた。

 その子は達の事が好きでちょっかいを出していただけなのだが、四六時中達の後をつけ回ったり、屋上に閉じ込めたりと明らかに度を越していた。
 当時、達はクラスが別れてしまった朱里には相談出来ず、また朱里も達に遠慮して深くは追求出来ずにいた。そんな日々がしばらく続き、とうとう達は学校に行くのが怖くなり登校拒否になってしまった。朱里は達に怖い思いをさせてしまったと深く後悔し、そして2度と同じ過ちを繰り返さないと誓った。その後、達は朱里の説得により再び登校する事が出来たが、その頃にはそのいじめっ子の姿はどこにもなかった。怪我をして入院したらしいことは噂で聞いたが詳細を聞いても皆口を濁らすばかり、そして退院後もその子がこの学校に戻って来ることはなかった。

 この件に関して達はひそひそ話でしか情報を入手出来なかったが、やはりいじめっ子を制裁したのは朱里だった。彼はタイマン勝負であっさりと勝ち、相手が許しを乞い続けているにも関わらず暴行し続け、最終的には気を失ったいじめっ子をロープで縛り上げ屋上から吊るして放置したそうだ。先生が気づいて下ろす頃には既にいじめっ子は転校したいと泣き叫んでいたという。
 朱里が罪に問われなかったのは確証が得られなかったからだ。
 大人の目撃者がいなかったこと、さらに同世代の目撃者が、朱里に賛同した者と朱里の報復を恐れた者に分かれたものの結果的に固く口を噤んだため、証言すらも得ることが出来なかったようだ。余程恐ろしかったのか被害者のいじめっ子さえも固く口を閉ざしてしまったという。
 達がひそひそ話でも情報を得られたのは、当事者の1人だったからこそだった。

 普段から優しい朱里がそんなことをするなんて到底信じられなかった達は、本人に直接聞いてみて驚愕した。
「達を苦しめたんだから当然の報いだね」
 朱里はそう言いきったのだ。

 朱里にはスイッチのようなものがあって、それに触れてしまうと別人のように変貌してしまうことを達は初めて認識した。しかもそれは全て達自身に関わることで起こっていることに気がつくのに時間はかからなかった。事実に気がついてからは朱里の別人スイッチが入らないよう、達なりに気にかけてきた。

 しかし、今回は相手が悪魔だ。
 こちらの常識がどこまで通じるか……、出来れば朱里とメフィストとの遭遇は避けたかったが、達の儚い希望もすぐに消えてしまった。

「お帰りマイハニー 」
 玄関で達と朱里を出迎えたのはメフィストと……怪しげなオカマ?だった。
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