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5.異世界転生勇者とお子さま事情
子どもの体力は無限大
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「現在と永々遠が体力オバケになりつつあるわ」
深刻な表情でそう言った五日香のそれは全くジョークでもなんでもなく、驚くほど真剣だった。
保育園に通い始めたときはお友達と全力で遊び、帰ってきたら疲れ果ててご飯も食べずに寝てしまう、なんてこともよくあったもんだ。
だがしかし。
保育園にも慣れきってしまった今では、帰ってくるなり公園に行こうと騒ぎ出し、それができないとわかるや否やリビング中を駆け回っては壁に頭をぶつけ、おもちゃを振り回して喧嘩し、台所に侵入してはちゃっかりおやつを強奪している。どこの蛮族かな?
体力がついてきたのはいいことだ。
体力があればなんでもできる。風邪だって引きにくくなる。
だけど、その有り余る体力のおかげか、夜がっつりお風呂に浸かっても全く寝やしないし、なんだったら風呂上りにも暴れ散らかしている。
「スイミングスクールとか体操教室で体力を消耗させたい」
五日香の願いは、あまりにも切実だ。
ついでにオレに子ども達を連れて行かせて一人の時間がほしい、そんな意図も透けて見えた。
「でも……」
そう、五日香の野望を遮るたった一つの障害は。
「会費がね~、やっぱり高いわよね~」
共働きの我が家はそんなに貧乏ってわけじゃない。
だけど、倹約家、というよりはただの貧乏性な気がするだけの五日香としてはちょっとした習い事に出せるお金は少しでも抑えたいらしい。
それでも、この家のローンもあるし、他にも色々とお金はかかるだろうし、これからのことを考えたら確かに無駄遣いはできないよなあ。
まあ、こうなったらいつもの結論が出ないままの堂々巡りだろう。
「そうか、この世界には誰かに師事してもらうにはお金がかかるのか」
「そうなのよ、フィリアスちゃんとこは違うの?」
「ああ、わたしは騎士団に入ったからな、そこで師がわたしを見出してくれたんだ」
「なるほどな、なんかそういうのは異世界っぽいな……ん?」
「どうした、カナタ? 変な顔をして」
「そうだ、ここに習い事にうってつけの人がいるじゃないか!」
「ひゃあ!?」
「何よ、急に大きな声出さないでよ、フィリアスちゃんが怯えてるじゃない」
「すまんすまん。なあ、フィリアス、現在に剣術を教えてくれないか?」
「ふぇ?」
今は五日香のふくよかな身体に包まれてなだめられているフィリアスだけど、こう見えて元々正真正銘の勇者だったんだ。
彼女なら実戦仕込みのガチ剣術を教えられるのではなかろうか?
「なるほど、確かに男子たるもの剣のひとつやふたつ振るえなければな」
「現在、やってみる? フィリアスお姉ちゃんが教えてくれるってよ、仮面ライダーになれるかもよ?」
「かめんらいだーになれるの!? やる!」
あまりにも素早い即答に思わず苦笑。
「それなら早速外に出るぞ! まずは準備運動だ! わたしは教えるとなったら容赦しないからな!」
「りょかい!」
現在とフィリアス、いや、今は弟子と師匠か、は、フィリアスが自分の部屋から持ってきた突っ張り棒を持って意気揚々と外に飛び出して行った。
「わうわうわー!」
それがなんとなく楽しそうなことだと察したのか、だばだばついていこうとする永々遠をなんとかキャッチしながら。
「でも、現在が突っ張り棒とはいえ剣を振り回すなんて大丈夫かしら」
五日香の心配も激しくわかる。
現在は、リビングで容赦なくおもちゃを振り回しては永々遠にぶつけて泣かせている。
そんな彼が、いつもは持った瞬間に五日香に怒られている突っ張り棒なんて得物を持って、はたして大人しくしていられるだろうか。
「安心して、イツカ。剣術を教えるのはまだ先、まずは身体を動かすことからだ」
フィリアスもまた、何の変哲もないただの突っ張り棒を右手に持っているが、何故かとても様になっているのはなんでだろうか。
美少女が持つとなんでも映えるのはマジなのかもしれない。
次にバズるのは突っ張り棒か?
深刻な表情でそう言った五日香のそれは全くジョークでもなんでもなく、驚くほど真剣だった。
保育園に通い始めたときはお友達と全力で遊び、帰ってきたら疲れ果ててご飯も食べずに寝てしまう、なんてこともよくあったもんだ。
だがしかし。
保育園にも慣れきってしまった今では、帰ってくるなり公園に行こうと騒ぎ出し、それができないとわかるや否やリビング中を駆け回っては壁に頭をぶつけ、おもちゃを振り回して喧嘩し、台所に侵入してはちゃっかりおやつを強奪している。どこの蛮族かな?
体力がついてきたのはいいことだ。
体力があればなんでもできる。風邪だって引きにくくなる。
だけど、その有り余る体力のおかげか、夜がっつりお風呂に浸かっても全く寝やしないし、なんだったら風呂上りにも暴れ散らかしている。
「スイミングスクールとか体操教室で体力を消耗させたい」
五日香の願いは、あまりにも切実だ。
ついでにオレに子ども達を連れて行かせて一人の時間がほしい、そんな意図も透けて見えた。
「でも……」
そう、五日香の野望を遮るたった一つの障害は。
「会費がね~、やっぱり高いわよね~」
共働きの我が家はそんなに貧乏ってわけじゃない。
だけど、倹約家、というよりはただの貧乏性な気がするだけの五日香としてはちょっとした習い事に出せるお金は少しでも抑えたいらしい。
それでも、この家のローンもあるし、他にも色々とお金はかかるだろうし、これからのことを考えたら確かに無駄遣いはできないよなあ。
まあ、こうなったらいつもの結論が出ないままの堂々巡りだろう。
「そうか、この世界には誰かに師事してもらうにはお金がかかるのか」
「そうなのよ、フィリアスちゃんとこは違うの?」
「ああ、わたしは騎士団に入ったからな、そこで師がわたしを見出してくれたんだ」
「なるほどな、なんかそういうのは異世界っぽいな……ん?」
「どうした、カナタ? 変な顔をして」
「そうだ、ここに習い事にうってつけの人がいるじゃないか!」
「ひゃあ!?」
「何よ、急に大きな声出さないでよ、フィリアスちゃんが怯えてるじゃない」
「すまんすまん。なあ、フィリアス、現在に剣術を教えてくれないか?」
「ふぇ?」
今は五日香のふくよかな身体に包まれてなだめられているフィリアスだけど、こう見えて元々正真正銘の勇者だったんだ。
彼女なら実戦仕込みのガチ剣術を教えられるのではなかろうか?
「なるほど、確かに男子たるもの剣のひとつやふたつ振るえなければな」
「現在、やってみる? フィリアスお姉ちゃんが教えてくれるってよ、仮面ライダーになれるかもよ?」
「かめんらいだーになれるの!? やる!」
あまりにも素早い即答に思わず苦笑。
「それなら早速外に出るぞ! まずは準備運動だ! わたしは教えるとなったら容赦しないからな!」
「りょかい!」
現在とフィリアス、いや、今は弟子と師匠か、は、フィリアスが自分の部屋から持ってきた突っ張り棒を持って意気揚々と外に飛び出して行った。
「わうわうわー!」
それがなんとなく楽しそうなことだと察したのか、だばだばついていこうとする永々遠をなんとかキャッチしながら。
「でも、現在が突っ張り棒とはいえ剣を振り回すなんて大丈夫かしら」
五日香の心配も激しくわかる。
現在は、リビングで容赦なくおもちゃを振り回しては永々遠にぶつけて泣かせている。
そんな彼が、いつもは持った瞬間に五日香に怒られている突っ張り棒なんて得物を持って、はたして大人しくしていられるだろうか。
「安心して、イツカ。剣術を教えるのはまだ先、まずは身体を動かすことからだ」
フィリアスもまた、何の変哲もないただの突っ張り棒を右手に持っているが、何故かとても様になっているのはなんでだろうか。
美少女が持つとなんでも映えるのはマジなのかもしれない。
次にバズるのは突っ張り棒か?
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