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2.病院ではお静かに

人畜無害ここに極まれり、しかして、オレは犯人扱い

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「それで、あなた、あの子に何をしたんですか?」

「な、何もしていません! 本当です、信じてください!」

 遥場さんともう一人の大柄な刑事に連れられて廊下を歩いていると、世間話のテンションでいきなりこんなところでずばっと切り込まれる。

 こんなフランクに訊かれるとは思ってもみなかった。こういう事情聴取って警察署の暗そうな取調室とかでやるんじゃないのか。ドラマとかでよく見るやつ。

 もしかしてその必要すらないと判断されたのだろうか、カモがネギを、じゃなくて、犯人が被害者を連れてきた、と。

 いつでも抜け出せそうな病院で馬鹿正直に一晩過ごした一家だ、面構えが違う。いや、いちいち連行しなくても問題ないくらいに完全に人畜無害だと思われているのかもしれない。

 こっちとしては一家崩壊につながりかねない重大事件なのだが、向こうはこんな家出パパ活少女の保護、そして、少女買春男性の逮捕というのは日常茶飯事なのか、とても面倒くさそうだ。いやいや、こんなの日常茶飯事なの? 日本の治安どうした?

 彼女がいる病室に向かう間にスマホは一時的に没収された。うわ、ホントに取られるんだ。やっぱり外部に連絡されると困るとかそういうことなんだとか。「何か怪しいサイトなどありませんか?」「ない。ないけど、頼む、調べられるならいっそスマホごとオレを殺してくれ」

 遥場さん曰く、彼女的にオレと家族が一緒にいるのを見て事件性は感じていない、とのことで、少女の証言次第では警察への連行もしないらしい。マジか。頼むぜ、お嬢さん。

「普通なら、犯人と被害者をこのタイミングで会わせることはありません。彼女がトラウマを抱えているかもしれませんから」

 とうとう犯人って言いやがった、この人。

「だけど、彼女の記憶がはっきりしないみたいで埒が明かない。私達の質問には支離滅裂なことを言っていて、しかも、身元がわかるような物も何も持っていない」

 ほとんどショック療法やないか。というか、オレの存在は絶対に誓ってまず間違いなく何も影響を与えないぞ。フラグじゃないよ、いや、ホントにそうだよ?

「あなたは私が良いと言うまで彼女に話かけないでください」

「……わかりました」

 なんかずっと犯人扱いされているのも面白くないな。

 なんとなく釈然としないままオレは遥場さんともう一人の若い刑事に前後を挟まれるかたちで連れられる。これも逃げられないように、ってか。……クソ。
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