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しばらくの平穏を楽しめるか
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「やい、侵入者ども! 我はここの守護者だ! ここに入りたくば貢ぎ物を持ってこい!」
オレの(そう、いつの間にかみんな集まりやがっているが、オレ“だけ”のだ)拠点である図書館の扉の前でずばーんッと仁王立つは。
「いつからスパイじゃなくて守護者になったんだ。早く入れろ、ほのか」
ちっさいうさ耳少女なんかに一切の威圧感のへったくれもないけど、その自信ははたしてどこから来るのか。
「はい、これ、ワタシのお母さんの手作りクッキー」
「おぅふ、かたじけない。外殻の食べ物は我の口に合わなくてな」
「外殻じゃ食事なんてしてるやつの方が少数派だしな」
「あっさり入れてくれるんだな、ほのかちゃん」
「図書館で食事はやめて!」
いつの間にか図書館に住み……潜伏し始めたほのかは、しれっとこの学校の生徒として何食わぬ顔で学園生活を謳歌している。カグラ先生が今にも死にそうな表情でこちらを見つめている。仲間になりたいのかな?
メグリから命のクッキーを与えられ、一瞬にしてすっかり守護者としての威厳がなくなった従順なウサギはあっさりとオレ達を図書館へ招き入れる。
というか、訪れる度どんどん生活感が増していくのはさすがにまずいような気がするんだが。今日なんていつの間にか本棚の一部がほのかのコスプレ用「潜入用衣装だ!」のクローゼットになってたし。……楽しんでるなあ。
それにしても、あれだけの重傷を負ってなおほのかがこうして(ウザいくらい)平気でいられるのは。
「良かったな、ほのか。アハルギんちが高度再生医療事業も扱ってて」
ほのかは内殻出身のスパイで、色んな動物の遺伝子が混じっていて、しかも魔法を使えるように身体改造済みで、こんなのまともな病院じゃ診察すらできない。
「うむ、本当に感謝しているぞ、アハルギ。おぬしは見た目と違っていいやつだな」
「よせやい。見た目のことをいうのは外殻じゃタブーなんだぜ」
そう言いながらもまんざらでもなさそうなアハルギ。アハルギの義体はあまり表情が出ないようになってるみたいだが、なんとなくバレバレである。頬が赤らむのはその義体の仕様なのか?
「あ、そういえば、ほのかちゃんの活躍でウサギ耳とバニーガールが流行ってるみたいよ」
「何千年越しのバニーガールリバイバルだよ」
「いやー、参ったなー、我、超有名インフルエンサーになっちゃったかー」
「お前は隠れ潜まなくていいのか?」
「健気でかわいかったよな、あの時のほのかちゃん」
「完全にキャラバレしてたもんな。そりゃあ人気出るよ、オレよりも注目浴びてたもん」
「やめろ! 我は別にキャラ作ってたりしてないぞ!」
「ええー、ワタシも見てみたかったなー」
結局、この魔剣の正体はいつまでもわからないままだった。
だけど、魔剣を心臓から引き抜く度、オレ自身が人間の定義から外れていくようなそんな不気味さを感じている。
これが、魔法使いが魔力を扱えるということなのか、それとも、魔剣による副作用なのか。
全て不明。
驚異的な身体能力。
防御不可の斬撃。
異常なまでの回復能力。
そのどれもが既知のどの伝説にも由来しない。
そもそも、心臓に突き刺さった魔剣、ってなんやねん。
「それっておかしくねえか? 誰にも想像できない魔剣を創造するなんてどう考えてもあり得ねえだろ」
「……まあ、そうだよなぁ」
そう考えるとあのジャンク屋が怪しいことは間違いない。
この謎の欠片がただ単に莫大な魔力を貯蔵していただけ、なんて、今この状況からすると考えにくい。
この魔剣の欠片だけを何故か大事そうに陳列していた。そして、あの異常なまでの警備体制。あのオヤジは正体を知っているんじゃないだろうか。
この欠片自体に何か秘密がある。
今度もう一度行ってみるか。
「アウラはなんか知ってるだろうがよ、さっさと教えろよ」
(えへへ、知らぬなあ、おほほ)……怪しいのはいつものことか。
べらべら良く喋るくせに肝心なことは決して教えてくれない。
思わせぶりな態度を取ったと思ったら意味なんてまるでない。
欲しいのは結論じゃなくて同意だなんて訳がわからない。
いや、待てよ、これって。
こいつ、ただのめんどくせえ女だわ。
(主はわらわのことが嫌いか? なあ、どうなのじゃ? なあなあ)
「あ、また対戦の申請か、めんどくせえな」
心臓から脳内に響き渡る戯言を華麗にスルーする。
こいつの言葉に耳を貸すことは甘ったるい破滅と時間の無駄でしかない。
だから今はこの時を。
オレの(そう、いつの間にかみんな集まりやがっているが、オレ“だけ”のだ)拠点である図書館の扉の前でずばーんッと仁王立つは。
「いつからスパイじゃなくて守護者になったんだ。早く入れろ、ほのか」
ちっさいうさ耳少女なんかに一切の威圧感のへったくれもないけど、その自信ははたしてどこから来るのか。
「はい、これ、ワタシのお母さんの手作りクッキー」
「おぅふ、かたじけない。外殻の食べ物は我の口に合わなくてな」
「外殻じゃ食事なんてしてるやつの方が少数派だしな」
「あっさり入れてくれるんだな、ほのかちゃん」
「図書館で食事はやめて!」
いつの間にか図書館に住み……潜伏し始めたほのかは、しれっとこの学校の生徒として何食わぬ顔で学園生活を謳歌している。カグラ先生が今にも死にそうな表情でこちらを見つめている。仲間になりたいのかな?
メグリから命のクッキーを与えられ、一瞬にしてすっかり守護者としての威厳がなくなった従順なウサギはあっさりとオレ達を図書館へ招き入れる。
というか、訪れる度どんどん生活感が増していくのはさすがにまずいような気がするんだが。今日なんていつの間にか本棚の一部がほのかのコスプレ用「潜入用衣装だ!」のクローゼットになってたし。……楽しんでるなあ。
それにしても、あれだけの重傷を負ってなおほのかがこうして(ウザいくらい)平気でいられるのは。
「良かったな、ほのか。アハルギんちが高度再生医療事業も扱ってて」
ほのかは内殻出身のスパイで、色んな動物の遺伝子が混じっていて、しかも魔法を使えるように身体改造済みで、こんなのまともな病院じゃ診察すらできない。
「うむ、本当に感謝しているぞ、アハルギ。おぬしは見た目と違っていいやつだな」
「よせやい。見た目のことをいうのは外殻じゃタブーなんだぜ」
そう言いながらもまんざらでもなさそうなアハルギ。アハルギの義体はあまり表情が出ないようになってるみたいだが、なんとなくバレバレである。頬が赤らむのはその義体の仕様なのか?
「あ、そういえば、ほのかちゃんの活躍でウサギ耳とバニーガールが流行ってるみたいよ」
「何千年越しのバニーガールリバイバルだよ」
「いやー、参ったなー、我、超有名インフルエンサーになっちゃったかー」
「お前は隠れ潜まなくていいのか?」
「健気でかわいかったよな、あの時のほのかちゃん」
「完全にキャラバレしてたもんな。そりゃあ人気出るよ、オレよりも注目浴びてたもん」
「やめろ! 我は別にキャラ作ってたりしてないぞ!」
「ええー、ワタシも見てみたかったなー」
結局、この魔剣の正体はいつまでもわからないままだった。
だけど、魔剣を心臓から引き抜く度、オレ自身が人間の定義から外れていくようなそんな不気味さを感じている。
これが、魔法使いが魔力を扱えるということなのか、それとも、魔剣による副作用なのか。
全て不明。
驚異的な身体能力。
防御不可の斬撃。
異常なまでの回復能力。
そのどれもが既知のどの伝説にも由来しない。
そもそも、心臓に突き刺さった魔剣、ってなんやねん。
「それっておかしくねえか? 誰にも想像できない魔剣を創造するなんてどう考えてもあり得ねえだろ」
「……まあ、そうだよなぁ」
そう考えるとあのジャンク屋が怪しいことは間違いない。
この謎の欠片がただ単に莫大な魔力を貯蔵していただけ、なんて、今この状況からすると考えにくい。
この魔剣の欠片だけを何故か大事そうに陳列していた。そして、あの異常なまでの警備体制。あのオヤジは正体を知っているんじゃないだろうか。
この欠片自体に何か秘密がある。
今度もう一度行ってみるか。
「アウラはなんか知ってるだろうがよ、さっさと教えろよ」
(えへへ、知らぬなあ、おほほ)……怪しいのはいつものことか。
べらべら良く喋るくせに肝心なことは決して教えてくれない。
思わせぶりな態度を取ったと思ったら意味なんてまるでない。
欲しいのは結論じゃなくて同意だなんて訳がわからない。
いや、待てよ、これって。
こいつ、ただのめんどくせえ女だわ。
(主はわらわのことが嫌いか? なあ、どうなのじゃ? なあなあ)
「あ、また対戦の申請か、めんどくせえな」
心臓から脳内に響き渡る戯言を華麗にスルーする。
こいつの言葉に耳を貸すことは甘ったるい破滅と時間の無駄でしかない。
だから今はこの時を。
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