8 / 71
2章:査察へ行きたい
純情、あゝ無情
しおりを挟む
「なんだ、このガキは? ガリガリで不味そうだな!」もちろん性的な意味で、だ。
オークの一体がその戦斧を振り回しながら少年へと迫る。いけ、やったれ、そいつを殺したらおぬしには領地をくれてやろうぞ!
だが、我の淡い期待はいとも容易く砕け散る。
この幼き少年には不相応だと思っていた大仰な両手剣が、きらり、一閃と煌めく。
「な、に……?」
あの巨体が一撃のもとに崩れ落ちる。戦闘経験も少なく、魔法効果もない粗雑な初期装備でオークを倒すことなど、この少年の力だけでは到底不可能だ。ならば、あの剣、もしや本当に聖剣か。
「う、こ、こんなところに勇者だと!?」
オーク達は相手が本物の勇者だとわかるとすごすごと森の奥へと逃げて行ってしまった。なんと情けない! い、いや、しかし、こやつが真に神の加護を受けた勇者だとすればいくら幼いとはいえオーク達では到底太刀打ちできぬか。いのちだいじにだな。
「良かった、みんな無事か」
「「はい!」」
さっきまであんなに怯えきっていた人間共が勇者の活躍によって、生気を取り戻したように笑顔になる。
「キミ達も平気か、何もされてないかい」
「ええ。せっかくのお楽しみを邪魔してくれやがって本当にありがとうございます、勇者様」
「……ねえ、なんか不満そうじゃない?」
珍しくその無表情に怒りが現れているグロリア。一応助けてもらった形になった命の恩人に対してそんなことある? どんだけヤる気だったのよ。
「と、とりあえずキミ達は服を着てくれないか!?」
「いやんッ」
その恥じらうような悲鳴とは裏腹、少年勇者の初心な反応に嬉しそうなオフィーリアと、その一方で、未練がましくのろのろと服を着ながら依然としてじとりと勇者を睨んでいるグロリア。
「……ッ」
少年勇者はそんな彼女達の眩いほどの裸体に赤面しながら、それでも俯き目を逸らすことでなんとかその威厳を保とうとする。オフィーリア、その生温かい眼差しはやめてあげて。
「怪我はないかい、あ、えっと」
「我はヘラという、貴様は何者ぞ?」
「き、貴様? あ、え、えっと、僕……じゃない、俺の名前はエラン、灰色が丘村の勇者、エランだ」
我へと手を伸ばした少年は我が偉大なる口調に戸惑っているようだったが、素直に名前は教えてくれた。
エランと名乗る少年は、しかし、勇者と名乗るにはまだ幼い。女の裸も見慣れていない、ずいぶんと純朴な少年といった風情。虚勢を張ってはいるがまだまだ垢抜けてはいない。どうやら、まだ村を出たばかりで仲間もいないようだ。
「襲われていた我が護衛らを助けてくれて感謝するぞ、勇者、エランよ」
我はその小さな手を不承不承取ると、ゆっくりと立ち上がる。こやつら、どこからどうみてもノリノリで服脱いでいたけど、どう考えても不自然なのでそれっぽい状況にしておこう。
「いやいや、俺は勇者として当然のことをしただけだ」
「ぬ、む、くぅ……」
勇者が無意識に放つキラキラした爽やかなオーラは我の精神にギリッとくる。いや、わかっている、勇者とはこういうギリッとする輩ばかりなのは。し、しかし。
グロリアがそんな我の方にぽむっと手を置いてうんうんと頷く……けど、え、何? なんだ、その全てを悟りきったような表情は。その憐みの眼差しをやめろ!
ま、いいさ。ここで我らに出会ってしまったのが、こやつの命運の尽き。
こやつほどうせ――
オークの一体がその戦斧を振り回しながら少年へと迫る。いけ、やったれ、そいつを殺したらおぬしには領地をくれてやろうぞ!
だが、我の淡い期待はいとも容易く砕け散る。
この幼き少年には不相応だと思っていた大仰な両手剣が、きらり、一閃と煌めく。
「な、に……?」
あの巨体が一撃のもとに崩れ落ちる。戦闘経験も少なく、魔法効果もない粗雑な初期装備でオークを倒すことなど、この少年の力だけでは到底不可能だ。ならば、あの剣、もしや本当に聖剣か。
「う、こ、こんなところに勇者だと!?」
オーク達は相手が本物の勇者だとわかるとすごすごと森の奥へと逃げて行ってしまった。なんと情けない! い、いや、しかし、こやつが真に神の加護を受けた勇者だとすればいくら幼いとはいえオーク達では到底太刀打ちできぬか。いのちだいじにだな。
「良かった、みんな無事か」
「「はい!」」
さっきまであんなに怯えきっていた人間共が勇者の活躍によって、生気を取り戻したように笑顔になる。
「キミ達も平気か、何もされてないかい」
「ええ。せっかくのお楽しみを邪魔してくれやがって本当にありがとうございます、勇者様」
「……ねえ、なんか不満そうじゃない?」
珍しくその無表情に怒りが現れているグロリア。一応助けてもらった形になった命の恩人に対してそんなことある? どんだけヤる気だったのよ。
「と、とりあえずキミ達は服を着てくれないか!?」
「いやんッ」
その恥じらうような悲鳴とは裏腹、少年勇者の初心な反応に嬉しそうなオフィーリアと、その一方で、未練がましくのろのろと服を着ながら依然としてじとりと勇者を睨んでいるグロリア。
「……ッ」
少年勇者はそんな彼女達の眩いほどの裸体に赤面しながら、それでも俯き目を逸らすことでなんとかその威厳を保とうとする。オフィーリア、その生温かい眼差しはやめてあげて。
「怪我はないかい、あ、えっと」
「我はヘラという、貴様は何者ぞ?」
「き、貴様? あ、え、えっと、僕……じゃない、俺の名前はエラン、灰色が丘村の勇者、エランだ」
我へと手を伸ばした少年は我が偉大なる口調に戸惑っているようだったが、素直に名前は教えてくれた。
エランと名乗る少年は、しかし、勇者と名乗るにはまだ幼い。女の裸も見慣れていない、ずいぶんと純朴な少年といった風情。虚勢を張ってはいるがまだまだ垢抜けてはいない。どうやら、まだ村を出たばかりで仲間もいないようだ。
「襲われていた我が護衛らを助けてくれて感謝するぞ、勇者、エランよ」
我はその小さな手を不承不承取ると、ゆっくりと立ち上がる。こやつら、どこからどうみてもノリノリで服脱いでいたけど、どう考えても不自然なのでそれっぽい状況にしておこう。
「いやいや、俺は勇者として当然のことをしただけだ」
「ぬ、む、くぅ……」
勇者が無意識に放つキラキラした爽やかなオーラは我の精神にギリッとくる。いや、わかっている、勇者とはこういうギリッとする輩ばかりなのは。し、しかし。
グロリアがそんな我の方にぽむっと手を置いてうんうんと頷く……けど、え、何? なんだ、その全てを悟りきったような表情は。その憐みの眼差しをやめろ!
ま、いいさ。ここで我らに出会ってしまったのが、こやつの命運の尽き。
こやつほどうせ――
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
魔法のせいだからって許せるわけがない
ユウユウ
ファンタジー
私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。
すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします
暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。
いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。
子を身ごもってからでは遅いのです。
あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」
伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。
女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。
妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。
だから恥じた。
「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。
本当に恥ずかしい…
私は潔く身を引くことにしますわ………」
そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。
「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。
私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。
手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。
そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」
こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる