第2回空色杯【500文字未満の部】

into the Sky High!

　眼下、エフェクトまみれの空。
　ここはわたしが望んだ世界じゃない。
　この街で一番高いビルの屋上から見下ろした、ただなんとなくそんな気がするだけの、そう、ただそれだけの漠然とした焦燥。
　うんざり吐息、そんなサイテーな気分を振り払うように。
　助走を付けて一気にーー
　翔ぶ！
　ひらり、盛大に翻るスカートなんて気にせず。
　お気に入りのスニーカーが空に迸らせるノイズの軌跡。
　空を駆ける。ド派手にあらわになる太ももに眩しい光を受けて。
　異常を告げる警告音を背に高らかに嘲笑う。
「ざまあみろ！」
　今この瞬間だけは、この広く狭苦しい空はわたしだけのためにある。わたしは誰よりも高い！
　ぬるり、頬を撫でるエラーコードだらけの風を掻き消して。バチバチと輝く電子の波がわたしを鬱陶しい七色に染めていく。
　足掻く。
　振り上げた右手に掴む退屈なホログラム。引きちぎってさらに上昇。
　澄んだ空がほしいんだ、こんな隙間なく合理化がされた息苦しい空なんかじゃなくて！
　ノイズ混じりの虚空に向かって手を伸ばす。
　指先から零れ落ちる光の粒子を握りしめて。
　わたしは遥か先にあるマクロの無限を見上げる。
　空に旋律が走る。
　完璧にプログラミングされたその先にあるものはきっとーー