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白紙
ーー 縺九ごろ斐m縺 ーー⑨
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「……何なんですか、さっきから」
「言ってるでしょ、世界を彩るって」
言いながらまたトリガーを引こうとすると、今度はその指先を小烏丸が掴んで止めた。
そのまま腕を引いて強引に体勢を変えさせられ、白い地面の上に馬乗りになる形で両手を押さえつけられる。
「もう十分でしょ、この物語はこれでおしまいなんです。あんまりぐだぐだ引っ張らせないでください」
わたしは動けないまま小烏丸を見上げる。小烏丸からわたしはどう映っているだろうか、動揺の色はないはず。わたしはただ興味深くこのメイド少女を見上げるだけだ。
そんなわたしの不遜たる態度にも構わず、小烏丸は静かに子どもに諭すようにそう言った。
小烏丸の身体はひんやりと冷たく、腰に感じる内ももの柔らかさもどこか無機質だった。
わたし達はしばらく無言でお互いを見つめ合うだけだった。だけど、わたしは口元だけで小さく笑うと、ゆっくりとした動作で自らの服に手をかけようと小さく身体をくねらせる。
「……何なんですか、本当に」小烏丸は馬乗りのままうんざりと手を離してくれた。
そして、どろり、漆黒のワンピースを魔剣にして右手に集束させる、どエロい下着と一緒に全てを脱ぎ捨てる。
「じゃあ教えてくれる? この世界を壊す理由を――ね?」
露わになった裸身には、傷一つなかった。
滑らかな曲線を描く肢体も、シミひとつない白磁のような肌も、まるでつい昨日生まれたばかりであるかのように瑞々しい輝きを放っている。
「チケット・ウ・ライド」
しかし一方で、ささやかな両胸に咲く色素の薄い桜色の突起だけが、熟れきった果実を思わせる艶かしい色をしていた。……自分の身体を改めて見るのはなんとなく気恥ずかしいわね。
小烏丸はこの光景から逃れるように顔を背けると、絞り出すような声で呟いた。
「……どうしてそこまでして知りたがるんですか。もう終わってしまった物語なのに」
「それはわたしの台詞。アナタだって知っているでしょう? わたしはこの世界の創造主であり、そして破壊者でもある。だからわたしは知らなければならないの。私が創ったものがどんな風に壊れていくのかを」
「……物語は、世界の全てに忘れられたら死ぬんです。だから、ワタクシは死んで、そして、異世界へと転生した」
ぽつりと、彼女は小さく呟いた。
死んだ? それなら、必要悪としての彼女の機能は役割を終えたのか? いや、それなら彼女が世界を壊す意味がない。
「この世界に転生者が現れるように、この世界から異世界に現れる転生者もいると思いませんか?」
ここは錯誤世界、ミスティカエラ。わたしが創ったんだ、何が起きても不思議じゃない。そうか、そういうことか。
「それがワタクシだった、それだけの話ですよ」
そして、死してなお、彼女の機能は健在だった。彼女は依然として必要悪だったんだ。あまりにも残酷な機能。
「すごいですよ、転生者、という存在は。ありとあらゆる異世界でそのチートっぷりを発揮し、まるで神様のように崇められ、何をしても許される。転生者が異世界に殺到するのも良くわかります」
彼女は実際、異世界ではただの転生者だったのかもしれない。それがなぜ、彼女が忌み嫌うこの錯誤世界へと再び現れたのか。
「自分の思い通りにならない世界なんてクソですもん」
「言ってるでしょ、世界を彩るって」
言いながらまたトリガーを引こうとすると、今度はその指先を小烏丸が掴んで止めた。
そのまま腕を引いて強引に体勢を変えさせられ、白い地面の上に馬乗りになる形で両手を押さえつけられる。
「もう十分でしょ、この物語はこれでおしまいなんです。あんまりぐだぐだ引っ張らせないでください」
わたしは動けないまま小烏丸を見上げる。小烏丸からわたしはどう映っているだろうか、動揺の色はないはず。わたしはただ興味深くこのメイド少女を見上げるだけだ。
そんなわたしの不遜たる態度にも構わず、小烏丸は静かに子どもに諭すようにそう言った。
小烏丸の身体はひんやりと冷たく、腰に感じる内ももの柔らかさもどこか無機質だった。
わたし達はしばらく無言でお互いを見つめ合うだけだった。だけど、わたしは口元だけで小さく笑うと、ゆっくりとした動作で自らの服に手をかけようと小さく身体をくねらせる。
「……何なんですか、本当に」小烏丸は馬乗りのままうんざりと手を離してくれた。
そして、どろり、漆黒のワンピースを魔剣にして右手に集束させる、どエロい下着と一緒に全てを脱ぎ捨てる。
「じゃあ教えてくれる? この世界を壊す理由を――ね?」
露わになった裸身には、傷一つなかった。
滑らかな曲線を描く肢体も、シミひとつない白磁のような肌も、まるでつい昨日生まれたばかりであるかのように瑞々しい輝きを放っている。
「チケット・ウ・ライド」
しかし一方で、ささやかな両胸に咲く色素の薄い桜色の突起だけが、熟れきった果実を思わせる艶かしい色をしていた。……自分の身体を改めて見るのはなんとなく気恥ずかしいわね。
小烏丸はこの光景から逃れるように顔を背けると、絞り出すような声で呟いた。
「……どうしてそこまでして知りたがるんですか。もう終わってしまった物語なのに」
「それはわたしの台詞。アナタだって知っているでしょう? わたしはこの世界の創造主であり、そして破壊者でもある。だからわたしは知らなければならないの。私が創ったものがどんな風に壊れていくのかを」
「……物語は、世界の全てに忘れられたら死ぬんです。だから、ワタクシは死んで、そして、異世界へと転生した」
ぽつりと、彼女は小さく呟いた。
死んだ? それなら、必要悪としての彼女の機能は役割を終えたのか? いや、それなら彼女が世界を壊す意味がない。
「この世界に転生者が現れるように、この世界から異世界に現れる転生者もいると思いませんか?」
ここは錯誤世界、ミスティカエラ。わたしが創ったんだ、何が起きても不思議じゃない。そうか、そういうことか。
「それがワタクシだった、それだけの話ですよ」
そして、死してなお、彼女の機能は健在だった。彼女は依然として必要悪だったんだ。あまりにも残酷な機能。
「すごいですよ、転生者、という存在は。ありとあらゆる異世界でそのチートっぷりを発揮し、まるで神様のように崇められ、何をしても許される。転生者が異世界に殺到するのも良くわかります」
彼女は実際、異世界ではただの転生者だったのかもしれない。それがなぜ、彼女が忌み嫌うこの錯誤世界へと再び現れたのか。
「自分の思い通りにならない世界なんてクソですもん」
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