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最終章:第二次新異世界大戦

ーー新異世界でのんびり農業ライフーー①

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 見たこともない様々な農産物が育てられている広大な農園を見渡して、そして、がっくりと膝が折れてしまいそうになるのを必死に堪える。ああ、なんてことを。環境破壊による異世界侵略、そんなの想定しようがないじゃない。

 ここで育てられている農作物にこの世界に自生するものはひとつもない。まるで異世界の農場がまるっきりこの土地に転送されたような異様な光景。

「おう、俺の農場になんか用か?」

 ここに人が来るのは珍しいのかもしれない。彼は呼んでもいないのに青々と生い茂る背の高い植物の奥からがさごそと姿を現した。

 泥にまみれた分厚い農作業服の男は乱暴に額の汗を拭うと、まるで悪びれる様子もなく爽やか気味にこちらへと笑いかけてきた。

「……ここは、ここは、何……?」

 まさかの異常事態に我ながら恥ずかしいまでに声が震えている。

「お、やっぱりここの人ならわかっちまうか。そう、ここは俺の世界の農園だ」

 いや、悪びれるも何も彼の言葉の響きには罪悪感なんて微塵もなかった。はあ、こういうのが一番質が悪い。

 自分のしていることこそが世界のためになる。だから、自分は正義なんだと信じて疑わない。妄信的猛進。

「俺の名前は、トシゾウだ、トシゾウ・ヒジカタ」

「……わたしはキティ。ねえ、アナタはここで何をしているの?」

 トシゾウはずっと子どもに向けるような穏やかな笑顔なのに、どうしてか緊張してしまうのは、その隠しきれないただならぬ雰囲気、いや、殺気? そして、その分厚い服の上からでもわかる鍛え上げられた大柄な体格のせいだろうか。

 彼が元いた世界で何をしていたのかわからないけど、彼の世界の農業はそんなに身体を使うのかな?

「俺は自分が持ってる農業の知識と女神が授けてくれた異能、“開拓者、神天地へ!(ヴァルハラ・フォーミング)”でこの世界の農業を変える」

 トシゾウの眼差しは真剣そのもので、そこにはわたしには計り知れないほどの信念の光が鋭く鈍く輝いていた。その眼光だけでわたしなんか容易く射貫かれてしまう。

「剣で世界は変わらなかった。けど、農業でならこの世界は変われるはずなんだ!」

 彼が成し遂げられなかったことを、彼の無念を、転生したこの世界でこそ成さんとする。

 究極のエゴイズム。

 眼光が眩しすぎてこの世界の何も見えていないのか?

 トシゾウはこの世界の何を見てきたの? 砂漠でも見てきたの?

 もちろんこの世界は平等じゃないかもしれない。貧しい者、富む者、お腹を空かせた者、食べ物を捨ててしまう者。そんなのは当たり前で、だけど、それをどうにかしようと足掻く者もいる。

 もしかしたら、彼もこの世界の飢えを打開しようとするその一人かもしれない。

 その心意気や良し!

 だけど、彼のやり方は間違っている。

 これじゃあ、今は良くたっていずれこの世界を滅ぼしてしまう。

 わたし達はわたし達でやっていける。わずわざ異世界の知識を見せびらかさなくたって、自分達で進んでいける。

 わたし達はそんなに無理やり変わらなくてもいい。
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