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最終章:第二次新異世界大戦

新異世界に国護りの聖女として転生したけど追い出されたのでこれからは自由に生きたいと思います

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 かつてあの広大な国土の全域を守護する対魔結界を維持し続けていた無双の聖女、リウラ・シグヴェローチェの格好は、今はまるでただの町娘みたいだった。

 それでも、そんな町娘がたった一人、国と国を繋ぐ頼りない道の脇に腰掛けていれば、それはそれで違和感もある。

 徒歩で旅をするためだろうか、革靴だけは足首を守るために分厚くて、それを除いては特に目立つような服装でもなかった。大した荷物もないのは、急に旅立つことになったからかな。

「あの国を守護するはずのアナタがどうしてこんなところにいるの?」

 手入れもあまりしてこなかったのか、少し傷んでちぢれた赤い髪が、彼女の頬のそばかすにかかっている。

「もし生まれ変われるなら次は穏やかに暮らそうと思っていたの、それなのに……」

 わたしの声に、ふと顔を上げた彼女の栗色の瞳はずいぶんと疲れ切っていて、そして、なんだかとても弱々しく見えた。まるで、お腹をすかせたヘルハウンドの子どもみたい。

「無能で媚びることしかできない妹にその役目を奪われたの!」

 そのヒステリックじみた叫びこそがリウラの心の底からの叫びだった。今までの鬱憤を晴らそうとして、でも、それをどこにもぶつけられない、そんな悲痛な叫び声だった。なんかどの物語でも似たような感じだな。

「復讐してやるわ、私のことを役立たずだと蔑む無能共にね!」

 そして、この叫びはなんだか彼女の本心じゃない気がした。心が折れてしまった時に、彼女はどうしたらいいのかわからないんじゃないかな。

「世界を守るというその使命を簡単に投げ出しちゃダメ。わたしが知ってるこの世界の均衡を司っていた、【軌条空論・紙一重】――世界を守るものは、最期の最後までその使命を全うしたわ」

 わたしだって、彼を壊し、世界を壊したあの女神に復讐してやりたい。だけど。

 あんなにド派手な彼の物語がどうしてほとんど語り継がれていないのか気になっていた。だけど、なんとなくわかったような気がしたんだ。

 きっと、彼はそれを良しとした。

 ただ、誰にも知られず世界を守る。それこそが彼の、世界を守る、という機能だったんだ。

 やっぱり彼はカッコいい、誰がなんと言おうとも、彼こそがわたしにとっての一番のヒーローなんだ。

「均衡機構、トイヒーロー」

 黒革のコルセットが光り輝き、ばさり、重厚な機械の翼を広げる。一枚一枚が重量を持った羽は、一緒だけふわりと舞い上がるとすぐに地面へと突き刺さった。

 どうして、転生してまでそんな過酷な業務を、劣悪な環境で続けていたのか、なんだか少し気になってしまった。

 それでも、自分の義務は見返りもなくそれを果たせるけど、それを押し付けられるのはすごくストレスになる。自分の大切な仕事を軽く見積もられるのはムカつくもん。

「……すごい、アナタ、天使なの?」

「んーん、違うよ。これは世界の均衡を守るための翼、アナタだけが理不尽を被らないようにわたしも付いていってあげるわ」

 わたしは力なくへたり込んだリウラへと手を伸ばす。

 大っ嫌いな転生者である彼女がこの手を取ってくれるかはわからない。転生者ってヤツはどいつもこいつもひねくれ者ばっかりだから。

 だけど、きっと彼ならそうする。

 敵とか味方とか関係ない、目の前に困っている者がいれば手を差し伸べる。

 彼は世界を守るもの。

「さあ、どうしたらそんな復讐なんてしなくても周りをギャフンと言わせられるか一緒に考えましょうよ」


 ーー"Who are you?" he said.
"I am the Happy Prince."
"Why are you weeping then?" asked the Swallow.
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