5 / 14
悪人成仏
しおりを挟む
「怨霊の法則というものがある」
俺の言葉に太郎は首をかしげる。
「いわんや悪人をや」
そう悪人のほうが成仏する。そういう思想が日本にある。歎異抄に記された言葉だがこれを怨霊の法則に当てはめると、祟るのは善人だということだ。
日本の三大怨霊の一柱菅原道真もこのケースに当てはまる。
それを考えれば祟るイコール無辜の人ということになる。
山背大兄皇子は聖人聖徳太子の息子であり当然ながら無辜の人間ということだ。
「しかし、悪人って成仏しやすいんだろうか」
太郎は不思議そうに首をひねる。
「まあ、悪人は非業の最期を遂げても自業自得って納得してしまうってことなんだろうか。確かに善人のほうが非業の最期を遂げたとき納得しずらい気もするが」
「いや、それで納得するならそもそも悪人になると思えないんだが」
所詮古代の思想だし、現代人にとっては理解しがたいことがあっても仕方ないだろう。
「そこで、入鹿だ、入鹿は悪人であると日本書紀に記されている、だから祀られなくても仕方がない、しかし本当にそうだろうか」
「それは何で?」
「僕の説が正しいとすれば入鹿は冤罪だ。そして真犯人こそそれをよく知っているはずだ」
「まあ、そうなんだけど」
俺の山背大兄皇子殺人事件の真相を考えれば、まず入鹿の冤罪を晴らさねばならない。
「まず、山背大兄皇子の背後関係だな、まず、殺人で得をしたのは誰かじゃねえの」
「もちろんだ、殺人の動機はまず利害関係だしな」
「入鹿と山背大兄皇子の関係だな」
俺は家系図を出した。
「入鹿の父親蝦夷と山背大兄皇子の母親刀自古娘は実の兄弟だから、従弟になるな。ついでに言うと蝦夷と父親の聖徳太子厩戸皇子と蝦夷と刀自古娘とも従兄妹同士だな」
「きわめて近しい血縁関係だな」
「それで日本書紀に書かれている動機は何だ?」
「山背大兄皇子と古人大兄皇子二人の即位争いだな」
入鹿は古人大兄皇子を即位させようとしていた。とあるが。
「古人大兄皇子と入鹿の関係は?」
「これも従弟、法提郎女という蝦夷の妹が母親だ。そして刀自古娘が蝦夷と同母妹だが法提郎女は異母妹だ」
「それ、どっちが即位しても同じじゃね?」
入鹿にとってはどっちにしろ天皇の従弟という地位は手に入るのだ。
俺の言葉に太郎は首をかしげる。
「いわんや悪人をや」
そう悪人のほうが成仏する。そういう思想が日本にある。歎異抄に記された言葉だがこれを怨霊の法則に当てはめると、祟るのは善人だということだ。
日本の三大怨霊の一柱菅原道真もこのケースに当てはまる。
それを考えれば祟るイコール無辜の人ということになる。
山背大兄皇子は聖人聖徳太子の息子であり当然ながら無辜の人間ということだ。
「しかし、悪人って成仏しやすいんだろうか」
太郎は不思議そうに首をひねる。
「まあ、悪人は非業の最期を遂げても自業自得って納得してしまうってことなんだろうか。確かに善人のほうが非業の最期を遂げたとき納得しずらい気もするが」
「いや、それで納得するならそもそも悪人になると思えないんだが」
所詮古代の思想だし、現代人にとっては理解しがたいことがあっても仕方ないだろう。
「そこで、入鹿だ、入鹿は悪人であると日本書紀に記されている、だから祀られなくても仕方がない、しかし本当にそうだろうか」
「それは何で?」
「僕の説が正しいとすれば入鹿は冤罪だ。そして真犯人こそそれをよく知っているはずだ」
「まあ、そうなんだけど」
俺の山背大兄皇子殺人事件の真相を考えれば、まず入鹿の冤罪を晴らさねばならない。
「まず、山背大兄皇子の背後関係だな、まず、殺人で得をしたのは誰かじゃねえの」
「もちろんだ、殺人の動機はまず利害関係だしな」
「入鹿と山背大兄皇子の関係だな」
俺は家系図を出した。
「入鹿の父親蝦夷と山背大兄皇子の母親刀自古娘は実の兄弟だから、従弟になるな。ついでに言うと蝦夷と父親の聖徳太子厩戸皇子と蝦夷と刀自古娘とも従兄妹同士だな」
「きわめて近しい血縁関係だな」
「それで日本書紀に書かれている動機は何だ?」
「山背大兄皇子と古人大兄皇子二人の即位争いだな」
入鹿は古人大兄皇子を即位させようとしていた。とあるが。
「古人大兄皇子と入鹿の関係は?」
「これも従弟、法提郎女という蝦夷の妹が母親だ。そして刀自古娘が蝦夷と同母妹だが法提郎女は異母妹だ」
「それ、どっちが即位しても同じじゃね?」
入鹿にとってはどっちにしろ天皇の従弟という地位は手に入るのだ。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
旧式戦艦はつせ
古井論理
歴史・時代
真珠湾攻撃を行う前に機動艦隊が発見されてしまい、結果的に太平洋戦争を回避した日本であったが軍備は軍縮条約によって制限され、日本国に国名を変更し民主政治を取り入れたあとも締め付けが厳しい日々が続いている世界。東南アジアの元列強植民地が独立した大国・マカスネシア連邦と同盟を結んだ日本だが、果たして復権の日は来るのであろうか。ロマンと知略のIF戦記。

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
大東亜戦争を有利に
ゆみすけ
歴史・時代
日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を
織田信長IF… 天下統一再び!!
華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。
この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。
主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。
※この物語はフィクションです。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる