1 / 3
伯爵令嬢の困惑
しおりを挟む
これはヨーロッパのある国のちょっと昔の小さな話。
とても小さなでも本人にとってはかなり大変なお話。
本日は本日はとてもいい日和だ。おもてなし日和だ。
令嬢マーゴットはそう思った。
ここ数日の怒涛の日々を思えばこの平穏がありがたい。
そう、すべては一か月前にさかのぼる。
本日我が家に侯爵夫人がいらっしゃる。そのおもてなしが本来接待する立場である両親ではなく何故かマーゴットになったのがすべての発端だった。
まず父、いきなり国境沿いの領地の端に盗賊騒ぎ父親は急ぎそちらに向かい当日までとてもたどりつけそうになかった。
さらに母親が急病で倒れ仕事ができる状態ではなかった。
かくして侯爵夫人の接待は長女であるマーゴットにまかされることになった。
いきなりの大役にマーゴットは持っていた扇を取り落とした。
そして、全使用人を集めて知恵を借りた。
とにかく掃除を行き届かせてそして飾る花などを探した。
そして料理の手配。
野菜は新鮮なものを、肉は熟成期間があるのでそれを逆算して仕入れなければならない。
料理長はそれなりに経験を積んでいたのだが問題はお菓子。
お菓子は豪奢の象徴だった。
名のある貴婦人は優秀な菓子職人を雇い自らの名を関した菓子を発表しそれを自らのお茶会などで供している。
そして、マーゴットの家にも菓子職人はいた。
そしてマーゴットはとにかく新作菓子を作れと命じた。
侯爵夫人をもてなすための特別な菓子をと。
菓子職人は青ざめていた。しかし彼なりに試作を始めたのでマーゴットは安心していたのだ。
三日前に書置きを残して菓子職人がいなくなったのを見るまでは。
探さないでくださいという書置きと失敗作の菓子の試作だけを残して。
それを見てマーゴットは倒れてしまった。
「どうしようどうしよう」
マーゴットは栗色の巻き毛を揺らして錯乱していた。
「とにかく、こちらの郷土菓子を出したらどうでしょう」
見かねた乳母がそう提案した。
「古くからこちらに伝わる菓子も都から来た方には珍しいのかもしれませんし」
乳母の提案でそうした菓子を作れるか使用人に聞き取りをした。
そして一人のメイドがジャムタルトを作れると名乗り出た。
一番若いメイドだった。周りのメイドはなぜか奇妙な顔をしてそのメイドを見ていた。
そばかすの浮いた田舎娘というメイドはきょとんとした顔でマーゴットを見ていた。
とても小さなでも本人にとってはかなり大変なお話。
本日は本日はとてもいい日和だ。おもてなし日和だ。
令嬢マーゴットはそう思った。
ここ数日の怒涛の日々を思えばこの平穏がありがたい。
そう、すべては一か月前にさかのぼる。
本日我が家に侯爵夫人がいらっしゃる。そのおもてなしが本来接待する立場である両親ではなく何故かマーゴットになったのがすべての発端だった。
まず父、いきなり国境沿いの領地の端に盗賊騒ぎ父親は急ぎそちらに向かい当日までとてもたどりつけそうになかった。
さらに母親が急病で倒れ仕事ができる状態ではなかった。
かくして侯爵夫人の接待は長女であるマーゴットにまかされることになった。
いきなりの大役にマーゴットは持っていた扇を取り落とした。
そして、全使用人を集めて知恵を借りた。
とにかく掃除を行き届かせてそして飾る花などを探した。
そして料理の手配。
野菜は新鮮なものを、肉は熟成期間があるのでそれを逆算して仕入れなければならない。
料理長はそれなりに経験を積んでいたのだが問題はお菓子。
お菓子は豪奢の象徴だった。
名のある貴婦人は優秀な菓子職人を雇い自らの名を関した菓子を発表しそれを自らのお茶会などで供している。
そして、マーゴットの家にも菓子職人はいた。
そしてマーゴットはとにかく新作菓子を作れと命じた。
侯爵夫人をもてなすための特別な菓子をと。
菓子職人は青ざめていた。しかし彼なりに試作を始めたのでマーゴットは安心していたのだ。
三日前に書置きを残して菓子職人がいなくなったのを見るまでは。
探さないでくださいという書置きと失敗作の菓子の試作だけを残して。
それを見てマーゴットは倒れてしまった。
「どうしようどうしよう」
マーゴットは栗色の巻き毛を揺らして錯乱していた。
「とにかく、こちらの郷土菓子を出したらどうでしょう」
見かねた乳母がそう提案した。
「古くからこちらに伝わる菓子も都から来た方には珍しいのかもしれませんし」
乳母の提案でそうした菓子を作れるか使用人に聞き取りをした。
そして一人のメイドがジャムタルトを作れると名乗り出た。
一番若いメイドだった。周りのメイドはなぜか奇妙な顔をしてそのメイドを見ていた。
そばかすの浮いた田舎娘というメイドはきょとんとした顔でマーゴットを見ていた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
第一機動部隊
桑名 裕輝
歴史・時代
突如アメリカ軍陸上攻撃機によって帝都が壊滅的損害を受けた後に宣戦布告を受けた大日本帝国。
祖国のため、そして愛する者のため大日本帝国の精鋭である第一機動部隊が米国太平洋艦隊重要拠点グアムを叩く。
ライヒシュタット公の手紙
せりもも
歴史・時代
ナポレオンの息子、ライヒシュタット公フランツを巡る物語。
ハプスブルク家のプリンスでもある彼が、1歳年上の踊り子に手紙を? 付き人や親戚の少女、大公妃、果てはウィーンの町娘にいたるまで激震が走る。
カクヨムで完結済みの「ナポレオン2世 ライヒシュタット公」を元にしています
https://kakuyomu.jp/works/1177354054885142129
なんか、あれですよね。ライヒシュタット公の恋人といったら、ゾフィー大公妃だけみたいで。
そんなことないです。ハンサム・デューク(英語ですけど)と呼ばれた彼は、あらゆる階層の人から人気がありました。
悔しいんで、そこんとこ、よろしくお願い致します。
なお、登場人物は記載のない限り実在の人物です
信長の秘書
たも吉
歴史・時代
右筆(ゆうひつ)。
それは、武家の秘書役を行う文官のことである。
文章の代筆が本来の職務であったが、時代が進むにつれて公文書や記録の作成などを行い、事務官僚としての役目を担うようになった。
この物語は、とある男が武家に右筆として仕官し、無自覚に主家を動かし、戦国乱世を生き抜く物語である。
などと格好つけてしまいましたが、実際はただのゆる~いお話です。
淡々忠勇
香月しを
歴史・時代
新撰組副長である土方歳三には、斎藤一という部下がいた。
仕事を淡々とこなし、何事も素っ気ない男であるが、実際は土方を尊敬しているし、友情らしきものも感じている。そんな斎藤を、土方もまた信頼し、友情を感じていた。
完結まで、毎日更新いたします!
殺伐としたりほのぼのしたり、怪しげな雰囲気になったりしながら、二人の男が自分の道を歩いていくまでのお話。ほんのりコメディタッチ。
残酷な表現が時々ありますので(お侍さん達の話ですからね)R15をつけさせていただきます。
あッ、二人はあくまでも友情で結ばれておりますよ。友情ね。
★作品の無断転載や引用を禁じます。多言語に変えての転載や引用も許可しません。
いまは亡き公国の謳
紫藤市
歴史・時代
ロレーヌ公国公爵の庶子ジェルメーヌとステファーヌは双子の公女だ。
1723年6月。公国の嫡男だったレオポール公子が病死する。
レオポールの弟であるフランソワが嫡男となるはずだったが、フランス王家の血を引くフランソワが家督を継ぐことに反対している家臣がいた。彼らは庶子であるステファーヌが男であるという秘密をジェルメーヌたちの母親から聞き出しており、フランソワとステファーヌのすり替えを目論んでいた――。
のちにハプスブルク家の全盛期を築くマリア・テレジアの夫となるフランツ・シュテファンを巡る、歴史の裏で繰り広げられるロレーヌ公国の跡継ぎ争いと、暗躍するプロイセン王国の物語。
永艦の戦い
みたろ
歴史・時代
時に1936年。日本はロンドン海軍軍縮条約の失効を2年後を控え、対英米海軍が建造するであろう新型戦艦に対抗するために50cm砲の戦艦と45cm砲のW超巨大戦艦を作ろうとした。その設計を担当した話である。
(フィクションです。)
夢の終わり ~蜀漢の滅亡~
久保カズヤ
歴史・時代
「───────あの空の極みは、何処であろうや」
三国志と呼ばれる、戦国時代を彩った最後の英雄、諸葛亮は五丈原に沈んだ。
蜀漢の皇帝にして、英雄「劉備」の血を継ぐ「劉禅」
最後の英雄「諸葛亮」の志を継いだ「姜維」
── 天下統一
それを志すには、蜀漢はあまりに小さく、弱き国である。
国を、民を背負い、後の世で暗君と呼ばれることになる劉禅。
そして、若き天才として国の期待を一身に受ける事になった姜維。
二人は、沈みゆく祖国の中で、何を思い、何を目指し、何に生きたのか。
志は同じであっても、やがてすれ違い、二人は、離れていく。
これは、そんな、覚めゆく夢を描いた、寂しい、物語。
【 毎日更新 】
【 表紙は hidepp(@JohnnyHidepp) 様に描いていただきました 】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる