異世界に鉄道を引こう

karon

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ザワークラウト

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 エドワードは漸く地上に舞い戻ることができた。
 魔石の運搬にはまだまだ準備が必要だ、かなりの数の魔石を雪玉にして運搬したが、もう一つの難所がある。それを超えるための準備はまだできていない。
「ゴロウアキマサがワイヤーロープに加工しやすい金属を見つけてくれたんだが、加工には随分と手間暇かかるようだね」
 焦りはない、もともと時間がかかることは承知の上だ。
 そして今の彼には楽しみが待っていた。
 アンナを預けていた村に行くと、そこには香ばしい香りが立っていた。
「やあ、元気そうで何より」
 アンナはちょっとすすけた衣類を着て、作業にいそしんでいた。
「ああそういえば君、文字を書く練習をしたいから家庭教師をつけてほしいという要請があったけど、一緒に連れてきたよ」
 エドワードはドイツ語ができたが、アンナはドイツ語を読み書きすることすらできないと言われて漸くそのことに思い当たった。
 こちらも識字率はそう高くない。アンナがこちらの文字を読み書きできないのは想定内だが、ドイツ語すら無理だとは思わなかった。
 いろいろ書き残してもらわねばならないことがあるので、早急に読み書きを覚えてもらわなければならない。
「ありがとうございます、でも私にできるでしょうか」
 今まで一度も教育というものを受けてこなかったアンナは読み書きの修練に最初から苦手意識を持っている。
 ゴロウアキマサは今できることをと、文字を書けるようにに練習させていた。アルファベットとはまるで違う文字列。その文字をひたすら筆写して形を覚えるところから始めている。
 見せてもらうと、ひたすら文字を筆写してあるだけだ。
 おそらく意味も分かっておるまい。
「あのこちらは、ザワークラウトです」
 アンナは薄黄色い野菜をみっちり詰めた壺を差し出した。
 思わずエドワードは飛びのいた。
「嫌いですか?」
 アンナは首をかしげる。
 ゴロウアキマサが一つまみ取って口に入れる。
「タクアンみてえな味だな」
「タクアン?」
 怪訝そうな顔でゴロウアキマサを見る。
 ゴロウアキマサはさらさらと筆で、野菜の絵を描いて見せた。
「もしかして、ラデッシュか?」
 葉っぱの形を指でなドりつつ訊いた。
「ちょっと苦くて辛い味だった」
「ラデッシュだな」
「まず干して、塩漬けにしたやつがタクアン」
 そう説明されてちょっとエドワードは首をかしげた。
 イギリスではラデッシュは生食するものだった。まあ、そんなこともあるだろうと自分を納得させる。
「干したダイコンをいぶしたのがイブリガッコ。肉を軟化いぶしてるのを見てたら懐かしくなったなあ」
 エドワードは軽く頭痛を覚えた。時々かつてイギリスと地続きだったとは信じられないくらいゴロウアキマサの母国はこの世界より異世界だ。
「ラデッシュのスモーク」
 しぼりだすように呟いた。
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