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現実逃避に内政!!

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 さてと、アメリアはちょっと現実逃避をすることにした。
 アガサ男爵領の特産品に葡萄酒とブランディがある。
 葡萄酒もブランディもすぐに金にならない。熟成期間というものがあるのだ。
 ブランディは今売れているのがアメリアの祖父の代に仕込んだ酒だという。
 一部手っ取り早く金にする方法、アメリアが思い出したのは果実酒だ。蒸留酒なら何でもいい、それに果物を沈めて果物の風味をうつす。これは大体半年から一年くらいで飲めるものができていたはずだ。
 果物の当てもある。
 木工製品用の樹木の林がある。木目が美しいが、残念ながら果物は苦みが強すぎて食べられない。
 だが実や葉の形からおそらく蜜柑の仲間だ。皮の香りはすこぶるいい。もしかしたらベルガモットに似た品種なのかもしれない、皮を酒に漬け込めば皮の香りがつくだろう。酒として飲めなくても香料としての使い道があるだろう。
 この計画のいいところはブランディだと樽に詰めなければならない。特定の木で作った樽に年単位詰めておかなければブランディ特有の香りがつかないのだ。 
 機密性の低い樽に詰めておけば漏れたり蒸発したりしてだいぶ減る。
 しかしアメリアの考えたやり方だと、最初からガラス瓶に詰めるのでそうしたロスがほとんど出ないのだ。
 つらつらとそこまでまとめたアメリアはそれを何度か読み返す。
 字の間違い、文法間違いがないのを確認し、内容も吟味する。
「これなら大丈夫、お父様に見せてあげましょう」
 オレンジリキュールになるかシトラス香料になるかはわからないが、どちらも売りようがある。
「やっぱり、贅沢はしたいのよね」
 アメリアとしても贅沢が嫌いなのではない。しかし税金を吊り上げるという発想が嫌いなだけだ。アイデアで儲けられるならそっちのほうがいい。
 こうなりゃ、ブラウン領の特産品の目録も結婚前に用意させるしかない。そして、それに何かしらアイデアを出して儲けを増やす。そしてできた奥様の称号を手にして後は悠々自適。
 アメリアは拳を握り締めた。
 王宮のごたごたなんか知るもんか、私は地方で悠々自適に暮らしてやる。
 ちょっと不安な点はスティーブンの職業が、王子の侍従だということだが、結婚したら領地に引き籠るって言ってたし、それなら大丈夫かな。
 アメリアは地味な野望を燃やしつつ脳裏にメモを一つ。
 地図を確認。
 ブラウン領の立地から推測される気候や地質を調べ、それに沿った生産物も確認する。
 実際アメリアのアイデアがうまく当たったら領地から上がる収穫で財政を回しているブラウン領のほうがうまみは大きい。
 そこまで考えてアメリアは大きなあくびをした。
「もういいや、寝よ」
 部屋着としていたガウンを脱ぎ捨ててハンガーにかけるとそのままもそもそ寝台に入った。
「うん、お父様を説得するときは樽に香りが付くなら蜜柑の香りもつくはずでいいわね」
 アメリアはそう言って目を閉じた。
 そして夢の中でプレゼンテーションのシュミレーションをやっていた。
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