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第6話
不幸の再来
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険しい坂道を登った先に華の都と謳われる《良郭》が見えてきた。
青蘭の町を出発してからもう半日が経っていた。
「悠然さんの地図が無かったらもっとかかってたかも」
私は今朝、悠然から貰った良郭への地図を開いた。私が行き先を決めかねていると、悠然は良郭を勧めてくれた。なんでもありとあらゆる店が揃っており、仕事を見つけるにはピッタリだと教えてくれた。
「とりあえず、働く所を探すのが最優先ね」
そう強く決意したものの、どこに行けば仕事を紹介してもらえるのか検討がつかない。
とはいえじっとしていても仕方がないので私は行き交う人々に道を尋ねようと足を踏み出そうとしたのだが……。
「はうっ⁉︎」
私は何かゴツゴツした頑丈なものにぶつかりその反動で転倒してしまった。
何かの障害物に衝突したというよりは、肉付きの良い男性の体に当たった感覚だ。
「大丈夫ですか?お怪我は⁉︎」
「問題ない。いちいち騒ぐな」
不意に男性3人の会話が耳に入ってくる。
私はどこかで聞き覚えのある声だと思いつつも、その時点ではまだ気に留めていなかった。
人様に危害を加えてしまったことに慌てふためく私の前に大きな手が差し伸べられた。
その手の持ち主は私が当たった男性だと認識した。
自分の不注意で迷惑をかけたにも関わらず、男性は私のことを気遣ってくれている様子だった。私は男性の厚意を素直に受け入れ彼の手を取り立ち上がった。
「俺がよそ見をしていたせいで申し訳ない。怪我はしていないか?」
ぶっきらぼうな物言いだが根は優しい人だとすぐにわかった。
「いえ、こちらこそ……⁉︎」
私も男性に謝ろうと男性の顔を見つめた。
だが、その直後私の表情は一瞬にして凍りついた。何と視界の先には私が最も会いたくない人物、取り立て屋の姿があったのだ。
「な、お前は⁉︎」
「兄貴、こいつ酒場の娘ですよ!」
向こうも気づいたらしく取り巻きの2人組も騒ぎ立て始める。
取り立て屋の頭領も私に気づいた途端に豹変した。そしていきなり私の胸ぐらを掴むや否や
「--まさか、俺達から逃げるためにわざわざ良郭にまで来ていたとは。小娘のくせに見上げた根性だな」
「……どうしてここに⁉︎」
私は誰にも気づかれず密かに村を出た。
書き置きなんてした覚えはないし、ましてやこいつらが来るのは2週間後のはずだ。
私は記憶を辿る過程でひとつの答えに行きついた。私は真っ直ぐに頭領の瞳を見つめて震える唇を開いた。
「わ、私のことをずっと監視して⁉︎」
「…………」
はい、そんなはずないですよね。ごめんなさい、私が悪かったです。だからそんな目で私を見ないで!お願いだから!
「--簡単な話しだ。俺達の拠点がこの近くにある。つい最近、お前と似た人物を見かけたと目撃情報があってな。調査がてら町を散策していたらお前の方から運良く出てきたってことだ」
頭領は頭を軽くかきながら面倒くさそうに話す。
「そうだったのか……。あれ?じゃあ、毎回うちに来るためだけにはるばるこの遠距離を⁉︎
それは、それは、……あのクソ親父のためにご苦労様です」
「あ?てめえ、馬鹿にしてんのか?」
「そんな、滅相もございません!」
あれ?これ相当ヤバイ状況なんじゃ?
私の悪気のない発言が火に油を注いでしまい、頭領の機嫌を損ねてしまった。
頭領は物凄い剣幕で私を睨みつけながらこう言った。
「よほど痛い目に遭いたいようだな?なら、お望み通りにしてやる」
「--っ⁉︎」
細身とは思えない腕力に私は抗うことができない。
自分の顔面に迫り来る拳を交わせそうになかった。ヤバイ、今度こそもう………。
諦めるしかない。そう思い目を閉じた次の瞬間
何者かの声がこの場の空気を支配した。
「そこまでにしていただこうか!」
青蘭の町を出発してからもう半日が経っていた。
「悠然さんの地図が無かったらもっとかかってたかも」
私は今朝、悠然から貰った良郭への地図を開いた。私が行き先を決めかねていると、悠然は良郭を勧めてくれた。なんでもありとあらゆる店が揃っており、仕事を見つけるにはピッタリだと教えてくれた。
「とりあえず、働く所を探すのが最優先ね」
そう強く決意したものの、どこに行けば仕事を紹介してもらえるのか検討がつかない。
とはいえじっとしていても仕方がないので私は行き交う人々に道を尋ねようと足を踏み出そうとしたのだが……。
「はうっ⁉︎」
私は何かゴツゴツした頑丈なものにぶつかりその反動で転倒してしまった。
何かの障害物に衝突したというよりは、肉付きの良い男性の体に当たった感覚だ。
「大丈夫ですか?お怪我は⁉︎」
「問題ない。いちいち騒ぐな」
不意に男性3人の会話が耳に入ってくる。
私はどこかで聞き覚えのある声だと思いつつも、その時点ではまだ気に留めていなかった。
人様に危害を加えてしまったことに慌てふためく私の前に大きな手が差し伸べられた。
その手の持ち主は私が当たった男性だと認識した。
自分の不注意で迷惑をかけたにも関わらず、男性は私のことを気遣ってくれている様子だった。私は男性の厚意を素直に受け入れ彼の手を取り立ち上がった。
「俺がよそ見をしていたせいで申し訳ない。怪我はしていないか?」
ぶっきらぼうな物言いだが根は優しい人だとすぐにわかった。
「いえ、こちらこそ……⁉︎」
私も男性に謝ろうと男性の顔を見つめた。
だが、その直後私の表情は一瞬にして凍りついた。何と視界の先には私が最も会いたくない人物、取り立て屋の姿があったのだ。
「な、お前は⁉︎」
「兄貴、こいつ酒場の娘ですよ!」
向こうも気づいたらしく取り巻きの2人組も騒ぎ立て始める。
取り立て屋の頭領も私に気づいた途端に豹変した。そしていきなり私の胸ぐらを掴むや否や
「--まさか、俺達から逃げるためにわざわざ良郭にまで来ていたとは。小娘のくせに見上げた根性だな」
「……どうしてここに⁉︎」
私は誰にも気づかれず密かに村を出た。
書き置きなんてした覚えはないし、ましてやこいつらが来るのは2週間後のはずだ。
私は記憶を辿る過程でひとつの答えに行きついた。私は真っ直ぐに頭領の瞳を見つめて震える唇を開いた。
「わ、私のことをずっと監視して⁉︎」
「…………」
はい、そんなはずないですよね。ごめんなさい、私が悪かったです。だからそんな目で私を見ないで!お願いだから!
「--簡単な話しだ。俺達の拠点がこの近くにある。つい最近、お前と似た人物を見かけたと目撃情報があってな。調査がてら町を散策していたらお前の方から運良く出てきたってことだ」
頭領は頭を軽くかきながら面倒くさそうに話す。
「そうだったのか……。あれ?じゃあ、毎回うちに来るためだけにはるばるこの遠距離を⁉︎
それは、それは、……あのクソ親父のためにご苦労様です」
「あ?てめえ、馬鹿にしてんのか?」
「そんな、滅相もございません!」
あれ?これ相当ヤバイ状況なんじゃ?
私の悪気のない発言が火に油を注いでしまい、頭領の機嫌を損ねてしまった。
頭領は物凄い剣幕で私を睨みつけながらこう言った。
「よほど痛い目に遭いたいようだな?なら、お望み通りにしてやる」
「--っ⁉︎」
細身とは思えない腕力に私は抗うことができない。
自分の顔面に迫り来る拳を交わせそうになかった。ヤバイ、今度こそもう………。
諦めるしかない。そう思い目を閉じた次の瞬間
何者かの声がこの場の空気を支配した。
「そこまでにしていただこうか!」
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