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困惑(オスカー)
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思っていたのと大分違う。
それが聖女を見た時の正直な感想だった。
(聖女というのは性に奔放で、男に奉仕されるのが何よりも好きな生き物だと聞いていたんだが…)
目の前にいる少女からは、そういった性の匂いは全くしない。
正確にいうと、男を誑かす悪女的な要素は見当たらない、とでも言うのだろうか。
(過去の記録は、当てにならないな)
そもそも数千年前の記録である。魔障自体が数百年ぶりで、聖女の召喚ともなるともう殆ど神話や御伽噺の域である。正直なところ聖女なんてものの存在をオスカーは信じていなかったし、実際召喚の儀式が行われたと知った時でさえどうせ失敗するだろうと考えていた。
それでもオスカーの体には現時点で看過できない程の魔障が刻まれており、皇帝陛下に至っては顔の半分が穢れで覆い尽くされてしまっていた。その魔障は、目を背けたくなる程醜悪なものであった。
そのせいで、あれほど陛下に御執心だった婚約者候補たちも揃って逃げ出す始末である。
今では穢れを隠すかのように仮面をつけた状態で政務をこなしていらっしゃるが、日に日に魔障の影響は色濃く陛下を包み込み、そばに寄るだけで怖気が走る程である。
(誰の目から見ても、陛下の命は残り僅かに思えた。此度の聖女召喚は、サイラスの最後の賭けだった…)
誰もがサイラスを嘲り、陛下の凋落に陰口を叩いていた。
だが結果はこれである。聖女は異世界から無事に召喚され、実際に性行為による魔障の回復が認められたのだ。
(しかも、その聖女がこの可愛らしい少女ときた…)
見た目も話した感じも、どちらかと言えば清楚よりの子である。艶やかな黒髪に白い肌、華奢な体つき、そして近くに寄るとなんとも例えようのない、芳しい香りがした。
彼女の体臭なのか、それとも何かの香水なのか。
この香りを長く嗅いでいるのは危険だと、オスカーは思う。
(今日はただの顔見せで、彼女に何かをさせるつもりも、するつもりもなかったんだが…)
努めて平静を装ってはいるが、徐々に理性がぐらつきはじめている、というのが正直なところだった。
なる程、とオスカーは思う。彼女自身がどうであろうと、聖女のそばにいると性欲が高まるというのは事実らしい。
それが性的興奮からくるものなのか、それとも魔障に侵された部分が彼女の中の神力を欲して暴れているのか、そこのところはよくわからないが…
本能として、彼女と性行為がしたいとオスカーの心身が訴えていた。これが聖女と魔障を抱えた者の関係性なのだろうかと、オスカーは身を持って知ることとなる。
これは理屈では説明がつかない。出来そうにない。
オスカーには婚約者がいた。幼い頃から決められていた相手である。互いに好意を持っていたし、尊敬もしていた。
ユリアは理想的な伴侶である。その婚約者を裏切るような真似は、オスカーだってしたくない。
(理性では、そう思っている。だが、しかし……)
目の前で声を殺して泣いている少女の震える肩を、そっと抱く。
俯く彼女を下から覗き込み、流れるような自然な動作で唇を奪った。
「んっ、」
涙の味がした。と同時に、ビリっと体に走る衝撃を、オスカーは知覚する。
(ああ、これは…)
抗えない。そう思った。
次の瞬間、オスカーは聖女の唇を無理矢理こじ開け、己の舌をねじ込んでいた。
理性は完全に、弾け飛んでいた。
それが聖女を見た時の正直な感想だった。
(聖女というのは性に奔放で、男に奉仕されるのが何よりも好きな生き物だと聞いていたんだが…)
目の前にいる少女からは、そういった性の匂いは全くしない。
正確にいうと、男を誑かす悪女的な要素は見当たらない、とでも言うのだろうか。
(過去の記録は、当てにならないな)
そもそも数千年前の記録である。魔障自体が数百年ぶりで、聖女の召喚ともなるともう殆ど神話や御伽噺の域である。正直なところ聖女なんてものの存在をオスカーは信じていなかったし、実際召喚の儀式が行われたと知った時でさえどうせ失敗するだろうと考えていた。
それでもオスカーの体には現時点で看過できない程の魔障が刻まれており、皇帝陛下に至っては顔の半分が穢れで覆い尽くされてしまっていた。その魔障は、目を背けたくなる程醜悪なものであった。
そのせいで、あれほど陛下に御執心だった婚約者候補たちも揃って逃げ出す始末である。
今では穢れを隠すかのように仮面をつけた状態で政務をこなしていらっしゃるが、日に日に魔障の影響は色濃く陛下を包み込み、そばに寄るだけで怖気が走る程である。
(誰の目から見ても、陛下の命は残り僅かに思えた。此度の聖女召喚は、サイラスの最後の賭けだった…)
誰もがサイラスを嘲り、陛下の凋落に陰口を叩いていた。
だが結果はこれである。聖女は異世界から無事に召喚され、実際に性行為による魔障の回復が認められたのだ。
(しかも、その聖女がこの可愛らしい少女ときた…)
見た目も話した感じも、どちらかと言えば清楚よりの子である。艶やかな黒髪に白い肌、華奢な体つき、そして近くに寄るとなんとも例えようのない、芳しい香りがした。
彼女の体臭なのか、それとも何かの香水なのか。
この香りを長く嗅いでいるのは危険だと、オスカーは思う。
(今日はただの顔見せで、彼女に何かをさせるつもりも、するつもりもなかったんだが…)
努めて平静を装ってはいるが、徐々に理性がぐらつきはじめている、というのが正直なところだった。
なる程、とオスカーは思う。彼女自身がどうであろうと、聖女のそばにいると性欲が高まるというのは事実らしい。
それが性的興奮からくるものなのか、それとも魔障に侵された部分が彼女の中の神力を欲して暴れているのか、そこのところはよくわからないが…
本能として、彼女と性行為がしたいとオスカーの心身が訴えていた。これが聖女と魔障を抱えた者の関係性なのだろうかと、オスカーは身を持って知ることとなる。
これは理屈では説明がつかない。出来そうにない。
オスカーには婚約者がいた。幼い頃から決められていた相手である。互いに好意を持っていたし、尊敬もしていた。
ユリアは理想的な伴侶である。その婚約者を裏切るような真似は、オスカーだってしたくない。
(理性では、そう思っている。だが、しかし……)
目の前で声を殺して泣いている少女の震える肩を、そっと抱く。
俯く彼女を下から覗き込み、流れるような自然な動作で唇を奪った。
「んっ、」
涙の味がした。と同時に、ビリっと体に走る衝撃を、オスカーは知覚する。
(ああ、これは…)
抗えない。そう思った。
次の瞬間、オスカーは聖女の唇を無理矢理こじ開け、己の舌をねじ込んでいた。
理性は完全に、弾け飛んでいた。
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