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本編
成就しない予言
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「ソフィーのマリエ。シンプルで綺麗だったぁ」
「もう、エリクがドレスに口出しまくり」
セシルとソフィーはフーシェ家の二人の秘密の庭園でお茶をしている。もちろん、王宮とフーシェ家を繋ぐ秘密の道を利用しての移動だった。
「薔薇園に来ると落ち着くわ」
セシルは深呼吸をする。
「この国でならセシルも好きにできるんじゃない?」
ソフィーにそう言われたセシルは小首を傾げる。
「今はこの薔薇園を好きにしてるし……。実家にいる時よりも自由だけど不自由だがら」
「アラン様?」
セシルは首を横に振る。
「アラン様は政敵がまだまだ多いから、私も油断できないの。……そうね、アラン様がローランやエドワード程度に間抜けだったらいい感じで利用されてたんでしょうけど」
二人はお互いの顔を見る。どちらからともなく呟く。
「予言、か……」
二人が薔薇園作りを始めた頃、二人は薔薇園にある小さな噴水の縁に『お姉さん』が腰かけているのに気が付いた。セシルと素フィーだけになると出てくるその女性を二人は幽霊じゃないかと、と思っていた。が、いきなり声をかけられる。
「ねぇ。あなたたち名前は?」
割合と尊大な口調の女性だった。
「私はエリカ、あなたたちは」
「ソフィー」
「セシル」
少女たちはチュニックに兄のおさがりのズボンとチュニックで作業をしてる。
「ここの家の子?」
二人は黙ったままだった。
「ま、いっか。あんたたちに予言してあげる。この国にいる公爵令嬢にセシルって子かエレーヌって子がいるでしょ。どっちがそうなるかわかんないけど、どっちかは王太子妃に選ばれるけど、王太子妃にはなれないわ。その子は酷い目にあわされて家も潰れるの」
悪意たっぷりの表情の女性を二人はじっと見ている。
「あたしと同じ名前のエリカって子がこの国のお妃様になるの」
とにんまりと笑いそのまま消えていったのだ。
「……おばけ?」
「かなぁ?」
セシルもソフィーも二度とその話はしなかったが、もう一人のエリカが現れた時、このエリカとよく似た容姿で本人かと疑ったが、年齢が合わないのと髪色が少し違ったので別人だと二人とも判断していた。ただし同じくらい悪意はあるな、と判断していた。
「あのおばけと偽聖女の間に関係はあったのかな」
ソフィーの呟きにセシルは口を尖らせた。
「わかんない、けど、お互いあの子見た時警戒はしたよね」
セシルの言葉にソフィーは頷いた。
「けど、……エリカよりローランが余りに成績悪くてそっちが気になってたから」
「わかる……。エドワード殿下もにたようなものだったし」
そんなことを言いながらセシルとソフィーは同時に嘆息した。
「エリカ、亡くなったらしいね」
「なんだか……父親の取引してた麻薬組織の見せしめだったんじゃないかって」
「男爵は早々に逃げようとして港で、って聞いてるのだけど」
セシルはソフィーの言葉に頷いて同意した。
「あっちの国はどうなるんだろうね」
「こっちに逃げてきてた人たちも帰ってうちのお父様、手伝ってるし」
セシルは肩を竦める。
「エティエンヌ陛下とお父様でなんとかするわよ。……ラミナ公爵家も手伝ってくれるし」
ソフィーとセシルは果物の香りがするお茶を新たにティーカップに注ぎ、御茶会をつづけ
た。
【完結】
読んでくれてありがとうございました。
次作は
悪役令嬢、冒険者になる
です。明日、プロローグ投稿しますが本格的更新は月曜日からとなります。
こちらもよろしくお願いします。
「もう、エリクがドレスに口出しまくり」
セシルとソフィーはフーシェ家の二人の秘密の庭園でお茶をしている。もちろん、王宮とフーシェ家を繋ぐ秘密の道を利用しての移動だった。
「薔薇園に来ると落ち着くわ」
セシルは深呼吸をする。
「この国でならセシルも好きにできるんじゃない?」
ソフィーにそう言われたセシルは小首を傾げる。
「今はこの薔薇園を好きにしてるし……。実家にいる時よりも自由だけど不自由だがら」
「アラン様?」
セシルは首を横に振る。
「アラン様は政敵がまだまだ多いから、私も油断できないの。……そうね、アラン様がローランやエドワード程度に間抜けだったらいい感じで利用されてたんでしょうけど」
二人はお互いの顔を見る。どちらからともなく呟く。
「予言、か……」
二人が薔薇園作りを始めた頃、二人は薔薇園にある小さな噴水の縁に『お姉さん』が腰かけているのに気が付いた。セシルと素フィーだけになると出てくるその女性を二人は幽霊じゃないかと、と思っていた。が、いきなり声をかけられる。
「ねぇ。あなたたち名前は?」
割合と尊大な口調の女性だった。
「私はエリカ、あなたたちは」
「ソフィー」
「セシル」
少女たちはチュニックに兄のおさがりのズボンとチュニックで作業をしてる。
「ここの家の子?」
二人は黙ったままだった。
「ま、いっか。あんたたちに予言してあげる。この国にいる公爵令嬢にセシルって子かエレーヌって子がいるでしょ。どっちがそうなるかわかんないけど、どっちかは王太子妃に選ばれるけど、王太子妃にはなれないわ。その子は酷い目にあわされて家も潰れるの」
悪意たっぷりの表情の女性を二人はじっと見ている。
「あたしと同じ名前のエリカって子がこの国のお妃様になるの」
とにんまりと笑いそのまま消えていったのだ。
「……おばけ?」
「かなぁ?」
セシルもソフィーも二度とその話はしなかったが、もう一人のエリカが現れた時、このエリカとよく似た容姿で本人かと疑ったが、年齢が合わないのと髪色が少し違ったので別人だと二人とも判断していた。ただし同じくらい悪意はあるな、と判断していた。
「あのおばけと偽聖女の間に関係はあったのかな」
ソフィーの呟きにセシルは口を尖らせた。
「わかんない、けど、お互いあの子見た時警戒はしたよね」
セシルの言葉にソフィーは頷いた。
「けど、……エリカよりローランが余りに成績悪くてそっちが気になってたから」
「わかる……。エドワード殿下もにたようなものだったし」
そんなことを言いながらセシルとソフィーは同時に嘆息した。
「エリカ、亡くなったらしいね」
「なんだか……父親の取引してた麻薬組織の見せしめだったんじゃないかって」
「男爵は早々に逃げようとして港で、って聞いてるのだけど」
セシルはソフィーの言葉に頷いて同意した。
「あっちの国はどうなるんだろうね」
「こっちに逃げてきてた人たちも帰ってうちのお父様、手伝ってるし」
セシルは肩を竦める。
「エティエンヌ陛下とお父様でなんとかするわよ。……ラミナ公爵家も手伝ってくれるし」
ソフィーとセシルは果物の香りがするお茶を新たにティーカップに注ぎ、御茶会をつづけ
た。
【完結】
読んでくれてありがとうございました。
次作は
悪役令嬢、冒険者になる
です。明日、プロローグ投稿しますが本格的更新は月曜日からとなります。
こちらもよろしくお願いします。
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